57話 再度説得
「まだこの街におったのか!」
老人は大声を出した。
しわがれた声の大きな声は、無理やり振り縛ったような声だった。
ほらな…
チェスは1人で納得した。
何もしていないのに街にいるだけで理不尽に怒る奴のどこが神様なのだろうか。
もはやおかしくて、笑ってしまいそうだ。
「さっさと出ていくがいい!」
「そうだそうだ…!」
「早く出て行け…!」
「さっさといなくなれ…!」
野次馬が騒ぎ出した。
しかし、ここで負けるわけにもいかない。
「俺たちは街を救いにきただけだ。」
「何?」
キキョウが声を張り上げた。
老人は眉を上げ、疑わしそうな顔をこちらに向けてきた。
キキョウは周りの視線を機にすることもなく説明した。
「霧を発生させる機械のためのカルセベルを持ってきた。」
「なんだと!?」
「あの機械が壊れている…?」
「でも町長はそんなこと言ってなかった…。」
「嘘じゃないか?」
どうやら街の者たちは機械が壊れかけていることを知らないらしい。
しかし、町長は慌てて口を出した。
「壊れてなどおらん!嘘をつくでない!」
「壊れてるだなんて一言でも言ったか?」
チェスが口を挟むと、町長はチェスに向かって『口を出すな』とでも言いたい顔を向けてきた。
チェスは少し皮肉に言葉を続けた。
「一言も言ってないのにそんなに慌てるんだな。もしかして機械に何かあったんじゃないか?」
「黙れ!人間など嘘つきじゃ!」
町長は必死に言い返していたが、先ほどから野次馬の声は小さくなっていき、町長を疑わしそうな目で見始めた。
その視線を感じたのか、町長は焦ったように言い訳を並べ始めた。
町長の目はキョロキョロと泳いでいて、全く落ち着いてるようには見えない。
「皆、人間を信じるでない!儂が嘘をつくと思うか!?儂は町長だぞ!?」
最後の方に関しては理由にすらなっていない。
まぁ、最初から最後まで説得の理由になっていないが特にだ。
「お母さん…あのおじいちゃん怖いよ?」
「そんな…町長が嘘をつくはずが…。」
「あれはふつうじゃない……。」
町長をまだ信じたい者たちの声の中に子供の声も混じっている。
子供が言ったように、今の町長の姿は見るに耐えない。
目は剥き出しで、唾を飛ばしながらしわがれた声を張っており、目の中には憎悪や焦りや恐怖など、様々なものが入り混じっている。
場は混沌と化していた。
「とにかく機械を見せてくれ。」
しかし、混沌とした場でもチェスは怯えることなく対応していた。
町長が惨めな姿をさらけ出している中、1人の若い女性のフェードがリズたちの前に出てきた。
「機械はこちらにあります。」
とにかく目の前の女性についていくことにした。




