53話 コルチカム
「それで相手が心を開いてくれるかはわからないけど…やってみるしかないね。」
サイネリアの言う通り、確実に相手を説得できるかどうかはわからないのだ。
ただ、一応フェードたちにとってはその機械はとても大切なものだ。
多少警戒心を解いてくれるはずだ。
とは言え、あまり期待しすぎないほうが、ダメだった時のダメージは少ないのだが……
「それで?その魔石と言うものは集まってるの?」
「いや…カルセベルを取るためには魔法道具が必要なんだが、あまりにも高額だから作るしかないんだ…。」
チェスは言いずらそうな表情になりながらも、しぶしぶ答えた。
サイネリアは少し目を細めた。
しかし、何故サイネリアが目を細めたのか、リズたちにはわからなかったし、そもそもリズたちはサイネリアが目を細めた事に気がつかなかった。
「素材は?何が必要なんだい?」
「ボライトとスピネルの卵が必要なの。だけど……。」
ソレイユが目を伏せ、少し辛そうに話した。
そんなソレイユの心情を感じ取ったのか、サイネリアは解決策を一つ提示した。
「ソレイユはマリー…スピネルの卵を取るのが嫌なんだろう?要はスピネルの卵と同じ属性で同じような成分のものがあればいいわけだ。」
サイネリアは目をつむり、ブツブツと何かを唱え始めた。
何かを唱え終わったかと思うと、今度はリズたちにもはっきりと聞こえる声で言葉を発した。
「シュテットハイト」
呪文らしき言葉を口にすると、その場に小さな風が起こり、サイネリアの目の前に風の渦ができた。
一体何をしたのだろうと、リズたちが疑問に思っていると、風の渦の中から赤く、ゴテゴテとした鉱石らしきものが出てきた。
一体これはなんだ?
リズたちは目の前に出てきたもののことを知らなかった。
それもそうだろう。
なんせ、この鉱石はローゼベルト学園2学年の魔法薬学科で出てくるものだ。
しかも、扱いが難しく、分量を間違えるとすぐに全く違う薬になってしまうため、授業で使うことも滅多にない。
「ほう……これはまた久しぶりに見たのう。」
「コルチカムなんて使うこと滅多にないパム。」
どうやらラタムとパームはこの鉱石のことを知っているらしい。
サイネリアは出てきた鉱石について説明してくれた。
「コルチカムは炎の属性がとても強い鉱石なんだ。スピネルの卵と同等か、それよりも高い品質を誇るものだよ。ただ、用途するものも少なく、どれも難しいからか、あんまり知っている人がいないんだ。成分的にもスピネルの卵と同じだよ。」
サイネリアの説明後、マリーと呼ばれたスピネルは自分の卵が取られない事にホッと息を吐き、ソレイユは気高いドラゴン母の卵を奪わずに済んで良かったと、安堵の息を漏らしていた。




