愛
精霊使いにとって、愛とはなにかについて話すね。
ん? そんな恥ずかしいって?
うん。パパも恥ずかしい。まるで、はだかで抱き合っているかのようだ。
愛って言葉の使われかたが、なんて言うか、その、いろいろあるから、あらぬ誤解を招くんだ。
でもね、パパは我が子に愛とはなにかを伝えられないような親にはなりたくないんだ。
それにパパって魔法使いだろ?
魔法使いは言葉、魔法の呪文で想いを伝えなくてはならない使命があるんだ。
とにかく大切なことだから聞いてくれ。恥ずかしいけどっ。
良い物事の中には、良い心が宿っているって言ったよね?
それを存在の中から見つけ出して表現するのが愛だよ。
この精霊魔法が一番強いから、ぜひ、できるようになりなさい。
魔力ではない、精神を元とする力から来る最強の魔法だから。
魔力が人だとすれば、この力は神だね。
さて、そこで、良い心を見つけ出す方法なんだけど。
これは、精霊が精神を元に、こちらに伝えて来てくれる。
実は、その心を受け取ってからが大変なんだ。
その心を自分がどのように受け取ったのか。
存在の良いところから受け取ったのか、悪いところから受け取ったのか。
それで、どのように思い、考え、良い悪いを決めて、その上で、どのように感じたのか。
メリットはなにか、デメリットはなにか。
なにを疑い、なにを信じたのか。
自分の心の中に、どのような心が、いくつ、どのように重なりあって、どのように働き、その心が、自分に、どのような苦しみや楽しみ、喜びや悲しみ怒りをもたらしたのか。
それとも、なにも、もたらさなかったのか。
その上で、自分は、なにを欲しがったのか。
それが自分を、どのように変えたのか。
ざっと、こんなところかな?
その存在の精神が、自分をどのように生かしてくれたのかを感じ考えて意味にするんだよ。
それの力を元に、自分が、どのように、生きたのか。
生き様。
魂。
それを呪文に込めて、一度、精霊に返すんだ。
精霊は、それを存在にある精神に届けて、受け取ってもらえたら魔法が生まれる。
精霊使いは、あらゆる存在を擬人化するから、この方法は人にも応用できるよ。
あいての心を受け取って、自分の心を返す。
お互いに知り合うんだ。
そこで助言、アドバイス。
自分が大切と思うものと同じものを大切に思ってくれる人の近くに居なさい。
きっと、その人は、お前の大切を守ってくれる。
魔法の強さは知力。つまり、相手と自分の存在の中身を、どれだけ深く広く詳しく知るかってことなんだ。
もっとも、精霊魔法はそれだけじゃなくて、精霊と精神に自分のことを、存在が教えてくれたことと同じくらい知ってもらわなくちゃダメだけどね。
そうでないと、精霊は力を貸してくれないんだ。 よく知らない人に力なんか貸さないだろう?
これを対価っていうんだ。 魔術用語で『等価交換』だよ。
オモチャを買うときに、お金を渡さないと自分のものにならないのと同じだね。
だから、精霊魔法は知力に加えて精神力を使う。
精霊とのコミュニケーションが上手くいかないと、結構、疲れる。
宇宙はそれ自体が巨大な記憶装置で、存在はその端末機で、精霊が情報を集めるセンサー。
存在が脳ミソで、精霊が耳や口や鼻だね。
宇宙が肉体だとすれば、精霊はその中の神経だね。
存在は、本当に、貪欲に、知りたがるよ?
ちょっと、引くね。
そしてね、それと同じくらい、存在は自分のことを知って欲しい。
そして、正確な本当の名前を呼んで欲しい。これを真名という。 魔力の一番の元になるものだよ。
存在の正反一体の原理により、知りたいは知って欲しいだからね。
知っている物事の大きさが、愛の力の大きさならば、世界の持つ愛に勝てる人間は居ないね。
宇宙は愛したいからね。
「精神を知ろうと、存在の深淵を覗き込むとき、深淵もまた、お前の精神を覗き込んでいるのだ」
有名な魔術師の言葉だよ。
どうだい? 怖いだろう。魔を……危険を感じるだろう。
だから、魔法って呼ばれているんだよ。
ん? 結局、愛ってなにだって?
良いことをするってことだよ。
みんな、いつだってそうしてる。
ん? 悪いことをしてる人もいるよだって。
良いことをしてるよ? ただ、ひとりだけの良いことであって、みんなにとっての良いことじゃないだけさ。
みんなの心とひとりの心が違うように、みんなにとっていいことと、ひとりにとっていいことは同じじゃない。
知力の弱い人は、存在のごく一部の表面しか見えない上に、存在の浅い部分までしか理解できない。存在の仕組みが分からない。
時間という存在的にも、先まで見通すことができないから、どうしても一瞬だけのよいことに注目してしまう。こういうのを刹那的っていうんだよ。
ハルだって、怒られるの分かってて、イタズラするじゃん。
宿題しないでマンガ読むし、5時に帰ってきなさいって言っても帰ってこないし、パパの分のカニまで食べるし、それからーーー。
クドクド……。
いけないと分かってても、みんなのことじゃなく自分だけのよいことしかできない。後々になって困ることが分かっていても、今だけよいことしかできない。
自分だけよりも大きな、みんなにとってよいことをする力がない。
今だけよりも大きな、未来にとってもよいことをする力がない。
そういうのを『精神力がない』って言うんだよ。
まだまだ心の成長が未熟な子供だね。
知力と精神力の弱い人は、みんなの良いことを理解するまで力がおよばないんだ。その手前、自分ひとりだけの良いことや、その瞬間だけ良いことが分かったところで力つきてしまうんだよ。
人は、誰ひとりの例外もなく、いつも、良いことをしている。
結果的に悪いことをしちゃっている人は、存在の全体性を見損なっているだけなんだ。
精霊魔法において存在の全体を見ることの大切さが分かったかい?
もっとも、存在の全体のすべてを見れる人なんていないけどね。
宇宙のすべてや未来のすべて、人類の全員のことを見通せる者なんかいないだろう?
これを人の器っていうんだよ。
人は全知全能の神じゃない。ただのひと柱の精神なんだ。
全に代わることのできる個はない。
逆も言えるけどね。
個の微細に立ち入ることのできる全はない。
体で例えると、腕が「オレこそが体の全てだ!」なんて言ってもあきれちゃうでしょう?
逆に体全体が「オレこそが腕だ!」なんて言ってもしらけちゃうよね。
個も全も……ひとりもみんなも、自分ができることだけしかできないんだ。
個は、全のために。全は、個のために。
ひとりは、みんなのために。みんなは、ひとりのために。
人は誰だって常に自分が信じる良いことをしている。だから、精神なんだよ。
2019年4月30日 追記
2019年5月3日 追記
2019年5月16日 修正と追記
2019年5月17日 修正と追記