呪文
では、さっそく精霊魔法の呪文の基礎について伝えよう。
存在の真ん中、存在の核心には無がある。
つまり、分からない。
しかし、その無という核心を包み込むように存在が存在している。
さあ、その核心に限りなく迫り、無に触れる一歩手前で立ち止まるのだ!
簡単に「分からない」と言っては行けない。
その真なる呪文を唱えてはいけない。
精霊魔法を極めると精霊使いは限りなく精霊に近くなるというが、どこまで行ってもただの人だ。
人であるうちは、無の手前で踏みとどまるのだ。それが人の人である意地だ。
そして、無を包む無の起伏をたどる存在の中にあるその存在を築き上げている小さきモノ達の名前を呼ぶのだ!
それが精霊の力の源だ。精霊魔法の魔力の源だ。
ん? パパ、なに言ってるのだって?
つまり、知ってることを全部言いなさいってこと。そして、知らないことを探して見つけなさいってこと。
分からないって言葉は、つまりギブアップってことだからね。
無の向こう側は、無から有を生み出す、神様の秘密の方法。
「分からない」と言って、人のやるべきことを投げ出して、神様に押しつけていることになるんだよ。
だから、簡単にあきらめないでね。
あらゆる存在は宇宙の一部。
小さいけれど宇宙だから、見えないけれど、その中には無数の星がきらめいている。
それを見つけてあげて。
そして、その星の名前を呼んであげて。
きっと、答えてくれる。
知っているとは、無の表面を包む存在の内容を網羅することによって、無の形を浮き上がらせ、間接的に無を知るということ。
『分からない』を包み込む、網の目のような『知ってる』を言い尽くす。
それが精霊魔法の呪文だよ。
違う言い方をすると、お前の体の中には心臓があったり血液が流れていたりするよね?
それと一緒。
さまざまなモノがそれぞれの役割を果たして心をひとつにして力を合わせて、全てがひとつになって存在している。
そのひとつひとつを見つけて、それがどんな役に立っているかを知って、名前を見つけて呼びかける。
物事の中に、なにがあって、それぞれがそれぞれをどのように変えていくのか。
もっとも、これは呪文の基礎の基礎。難しい言い方をすると原初魔法って呼ばれる魔法の呪文なんだ。
現代の呪文は、もっと簡単。
たとえば『ドブネズミ』という呪文には、偉大な先人達によって『美しい』『優しい』『誰よりも温かい』という魔力が込められている。
これにより、ドブネズミの呪文を唱えられた者は、その心に『美しい』『優しい』『誰よりも温かい』という心を思い浮かべずにはいられなくなる。
ん? ドブネズミは薄汚く、不潔で病原菌をまきちらかすから美しくも優しくも温かくもないだって?
えっ
2019年4月1日 追記
2019年4月10日 修正




