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現代魔法と精霊魔法



 次に、現代魔法と精霊魔法について話すね。


 現代魔法は『無はない』を根拠に、自由に名前や意味を決める。


 究極の真実、本当はなんなのか分かんない。だけど、みんなで心をひとつにするためには、名前をひとつに決めなきゃいけなかったんだ。


 犬のことを「ドッグ」って呼んだり「フント」って呼んだりするようなものだね。


 精霊魔法は『存在が存在する』を根拠に、理由を頼りに真名と意味を見抜く。


 現代魔法は『無はない』を根拠にするから、それが本当だと信じて伝える者が居なくなると消えてなくなっちゃう。


 元がないからね~。


 逆に、精霊魔法は、存在が存在する限り、なくなることがない。


 現代魔法は、名付ける。精霊魔法は、真名を見抜く。


 現代魔法は、自由に答えを決め、『分かった』と思うことにして安心する。記憶力、信じる力を使う。


 先人……昔の人が決めたことを本当だと信じて、人が言葉に込めた意味を覚えて魔法を使う。考えなくていいから、すごく楽。


 現代魔法は、難しいというよりは、覚えることが多い。


 精霊魔法は『分からない』から、理由により理論を展開ーーー(ことわり)を先に進めて考える。思考力、疑う心で(いど)む。とても長い時間と大きな精神力、深く広い知力をかけて答えを見つけなくてはいけないから、とても苦労する。


 なにも覚えなくていいが、自分で考えて答えに気付く必要がある。


 これにより、精霊魔法は一般的ではない。


 疑って考えて疲れ果ててたら仕事にならないでしょう? 生活が成り立たないよ。


 昔の人は言った。


 「考えは休むに似たり」


 つまり仕事にならないのだ。


 昔、「疑うな考えるな疲れ果てて仕事が出来なくなるぞ。時間は有限なんだ! 人間社会でーーー人の世界で生きるなら、人の言葉を信じろ!」って言って精神ではなく、えらい人を神様に仕立て上げて、精霊を信じる精霊使いを根絶やしにした時代があったんだよ。それで、我が家のご先祖様は東の果てに逃げたんだ。


 それに精霊魔法は、道に落ちてる石どころか、鼻をかんだ後のティッシュまで神にしちゃうから、『一番大切』以外を神と認めない現代魔法にとって都合が悪いんだよね。


 現代魔法は一番が大切。精霊魔法は全てが大切。


 現代魔法は『本当の神』と言い、精霊魔法は『全てが神』と言う。



 『無がない』が自由を()んで、決められた自由が時間とともに『昔の人が決めた』という理由になって、人を神にする。


 信じる。それは、神の言葉じゃなく、実は人の言葉なんだ。



 ひとりで決めるなら自由だ。みんなで決めるなら理由だ。(えら)い人の自由が、みんなの理由になる。


 定められた自由は理由になり、理由が存在化すると、転じて無となる。


 こうして、人の決めた言葉は、様々な意味に転じて行く。


 存在から精霊によってもたらされる精神という歯止めがないからだ。


 現代魔法は、本当かどうか確認できないものを受け持っているから。


 実は、現代魔法は精霊が生まれる前に存在するものなんだ。



 祈りーーー。



 同じ言葉でも、その時代で意味が変わったりするのは、そういうことだ。


 その時代の人が、その言葉をどのように使い、どんな想いを込めたのか。


 その言葉を聞いた人が、その言葉に、どんなイメージを持ったのか、なにを想像したのか。


 それによって、言葉が変化するのだ。


 そして弱い言葉は急激な変化に耐えられず、自分を維持できなくなって、伝えるべき人から忘れ去られ、命を保てなくなって死ぬ。


 これを『死語』と言う。


 人神は人の信じる心が無くなってしまうと、()くなってしまうんだ。


 忘れてはいけない。人は信じる心を(ささ)げて、人神の力を利用しているに過ぎないことを。


 正反同一の原理により、『利用する』は『利用される』だけどね。





 現代魔法は外見、入れ物。精霊魔法は内面、内容物。


 現代魔法は答えという型に当てはめて、それに合っているかいないかで判断する。判る。精霊魔法は中身を調べ、種類別に分けて、仲間同士で集めて判断する。分かる。



 0と1の間に無限の数字があるように、宇宙は隙間(すきま)だらけだ。


 人も宇宙の一部だから、当然、隙間だらけなのさ。もちろん、人の世界ーーー言葉もね。


 その隙間ーーー0と1の間にある数字を全て言おうとするのが精霊魔法。0と1の間を飛び越えようとするのが現代魔法。


 0の次が1であるのが当たり前なのが、現代魔法。0.1、0.2……と、数えて行くのが精霊魔法。(つな)がりこそが精霊で、その軌跡(きせき)辿(たど)るのが精霊魔法だからだ。


 絶対という断絶の壁を穿(うが)ち、精神と精神を接続させる力を持つのは、精霊しかいない。


 精神にも出来ないことを、精霊がやってのける。


 まぁ、パパは『それ』と自分の間にあるものを、精霊と呼んでいるだけだけどね。




 神の奇跡(精霊魔法)悪魔の奇跡(現代魔法)の違いは「百聞は一見にしかず」。


 現代魔法が百の呪文を(とな)えても、目の前に現象している精神には(かな)わない。


 元が『無がない』が現代魔法で、元が『存在が存在する』が精霊魔法だからだ。


 あるものをあると証明するにはそのものを目の前に出せばいい。しかし、ないものをあると証明するには、それが出来ない。


 ないものを「ある」と信じるしかない。


 こうして見れば、精霊魔法のほうが良いように思うかもしれない。


 けどね?


 精霊魔法って時間がかかるし、無茶苦茶疲れるし、大変なんだよ?


 真実……本当のところで話すのなんかやめて、耳触りのいい作り話で()ませれたら、どれだけ楽か。


 現代魔法は早い、楽。精霊魔法は遅い、疲れる。


 現代魔法が常識で、精霊魔法は専門の学術くらいの違いがある。


 なにより、精霊魔法では、タイムリミットに間に合わないことが多い。


 夕食が出来上がるのが、次の日の朝になったらイヤだろう?


 真実は時間を味方につけて後からやってくるのだから。


 後じゃダメ、今すぐやらなきゃ! ってことのほうが多いんだよね。


 行動に先立つ結果はないんだ。


 「休んで(考えて)んじゃねぇよ!」って怒られちゃう。


 魂は思考よりも、実行を(たっと)ぶ。


 行動しないと、神様に見てもらえないんだよ。


 愛は良い心の現象(げんしょう)なのだから。




 現代魔法は思考力ではなく、記憶力を使う。


 すでに答えが決まりきっていて、すでに分かっているものを分かることは出来ない。それは『努力して分かる』ではなく『約束事を知っている』になるからだ。だから、思考力ではなく記憶力。


 精霊魔法は、(ことわり)が自分で話しの筋道を決めて行くので、まったく自由意思がない。


 好きとか嫌いとか、やりたいとかやりたくないとか、思ったとか思ってないとか、そんなの関係ない。


 自由じゃなくて理由なんだから。


 『分からない』を『分かりたい』は思考力。『分かった』は記憶力。答えを見つけたーーーと信じた者は、決して答えを探さない。そこで思考は停止する。


 


 理由と自由。その根っこは『分かっている』と『分かっていない』


 魔法という奇跡を間に(はさ)んで(ねじ)れてひとつになる『分かる』と『分からない』


 正反同一の定理。




 自由は言う。


 「どうせ誰にも、最後まで突き詰めれば本当のことなんて分からないんだから、勝手にやっていいよね。でも、お前が決めるな。自分の精神(オレ)が決める。だって精神(かみ)だからな。うん? お前も精神(かみ)だって? じゃあ、どっちが(えら)いか決めようか」


 理由が言う。


 「これが、このような仕組みであるのか。じゃあ、次はこうなるよね」


 『無はない』を根拠にするのが現代魔法。『存在が存在する』を根拠にするのが精霊魔法だからね。


 こうして、現代魔法は競争し、精霊魔法は進化する。


 進化ってね、「欠点を(おぎな)う」って言うんだよ。



 現代魔法は、誰かの経験を利用する。精霊魔法は、自分で体験する。


 現代魔法は祖先が残してくれた遺産だよ。とても、ありがたいものなんだ。


 精霊魔法は、遺産の受け取りを拒否しているんだよね。


 自分の力で、財産を(きず)きたいんだ。



 ん? 結局、現代魔法と精霊魔法の、どっちが良いのだって?



 親の残してくれた財産も、自分で得た財産も、どっちも宝物に変わりはないさ。


 くれるものは、ありがたく(いただ)くし、自分でも(かせ)ぐ。


 誰もが、そうしているよ。

 

 良質な(ことわり)は、先に進む。


 自由から理由化した(ことわり)も、時間とともに、良質なものしか残らないのだから。




 以上。なにか質問は?



 ん? 実はパパもよく分かっていないよねだって?



 ばれたか。



 「分かるとは分からないである。分からないとは分かるである」っていうことを1から10まで説明すると、こうなる。


 どう? 分かったとも分からないとも言えなくなったんじゃないかな?


 だったらパパの勝ちだ。


 正反一体の定理を(つか)んだ(あかし)だからね。


 精神が現象し存在化して、存在が無に転じ、さらに無が転じて新たな存在になる。


 現象(現代魔法)進化(精霊魔法)



 ここから先は、また今度の機会に説明するよ。


 理解が先に進んだら、ね。


 お前の方がパパより先に行っちゃうかもだけど。


 (ことわり)とは先に進むものだから。



 ん? 理解が先に進んでから話せばいいのにだって?



 発言して存在化しないと転じて無にできない。


 そして無にできないと転じて新たな存在に転生させることができないのさ。


 完全無欠の理論を期待してたのか?


 パパは全知全能の神様じゃないぞ。


 ただのひと柱の精神に過ぎないんだ。


 理が常に先に進む限り、どこまで行っても欠けたままだしね。


 ちょっとよくなったところで発言して存在化するくらいが、人らしくてちょうどいいと思わないかい?


 まぁ、今回のお話しは、無意味な現代魔法と精霊魔法という言葉に、パパが勝手に、意味を込めているだけだけどね。




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