現実
今日は現実について話そう。
心して聞いててくれ。
実は、現実は真実ではないんだ。
ん? じゃあ、現実ってウソなのだって?
そう言う人もいるね。
現実は現実なんだ。真実ではない。
実は、現実が現実であることが真実なんだよ。
もちろん、真実が真実であることも真実だ。
現実が現実であれば、それはウソではなく本当だ。
ん? わけが分からないって?
そうだね、同語反復は卑怯だよね。
うん、じゃあ、体で例えて言おうか。
体で言えば、顔が現実で、真実が心臓なんだ。
表に出てて、誰にでも分かるのが現実だからね。
だから中身にこもってるものは現実ではないんだ。
顔を見れば、その人が誰かが分かるだろう?
顔がなくても心臓があれば、生きていけるけど、心臓だけ見ても、それが誰だか分からない。
もしパパがハルに「この心臓が真実のパパだ!」って言って取り出して見せたら、お前はどう思う?
ん? すごく怖いって?
うん、そうだね。
真実ってショッキングなものなんだ。突然、出されたらビックリしちゃう。
だから、心臓を体で包んで、顔を見せているように、真実も現実で包んで、びっくりさせないようにしているんだよ。
社会で生きていく上でのマナー、礼儀だね。相手を嫌な気持ちにさせない、大切な振る舞い、行動だよ。
現実は時に優しい。
そうそう、正直に本当のところで話しをしようってことを「腹を割って話す」って言うんだよ。
表に出ているものの中に、ちゃんと、それにふさわしい中身、心がありますよって、見せなきゃならない時の例え話しだね。
水の入っていない水筒がウソ。水の入っている水筒が本当。
ちゃんと中身がある。
これこそが真実かもね。
もっとも、前もって「この水筒には水が入ってない」って言っておくと、ウソにはならないけどね。
空の水筒は、空であることが真実なのだから。
 




