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コンビニ・ガダルカナル  作者: ほうこうおんち
第10章:閉ざされる「門」
62/81

迫るタイムリミット

20XY年1月30日 3時40分 東京某所:

「報告! 『門』未だ開通せず。遅延の記録を更新中」

自衛官や研究員から多数の連絡が飛んでいた。

3時41分になり

「反応あり! 開通する」

その後、1943年側も中々「門」が開かず、「今日は開かないか?」と思ってたようで、

20XY年からの通信があってから、やっと兵士たちが食事に現れた。

「随分待たせてくれたな? こっちは空腹なんだ」

「すみません。前も言いましたが、こいつは制御不能な代物でしてね。

 何か戦況に変化がありましたか?」

「さあなぁ。俺たちのとこは問題無しだ」

「はっ! ありがとうございます」

確かに一介の兵士や下士官に、全体で何が起きているのか知る由は無い。

それでも、こんなに開門が遅くなったというのは、聞かされている

「現代世界で言うところの史実と、『門』のあちら側の世界の歴史が乖離」

したのではないか、という事になる。


科学者は「極端に我々の歴史と違う結果になった時に起こる現象なんて、分かる訳がない」

と言うので、結局SF小説とか漫画やアニメの創作物で想像してみる。

歴史の揺り戻しとやらで、全滅させられた自衛隊の物語もあった。

その物語の歴史は史実とズレていて、自衛隊はそのズレを元に戻す為に呼ばれたものだったが。

貧乏な子孫が歴史を変えようと、ダメ先祖をまともにすべくロボットを送った漫画もある。

その先祖の結婚相手を変えるという決定的な個人史の改変があったが、子孫は変わらなかった。

もっとも経済状態は良くなったのか、歴史改変による現代改変は部分的に成功した。

同じように過去を変えようと戦闘ロボを送り、敵のリーダーを誕生前に抹殺しようとした映画もある。

その目論見は失敗したものの、だがそのロボットを送った事が、過去に未来のプロセスチップを教え、

それが結局歴史を変えて、いや元に戻した。

積極的に歴史を変えようとした自衛官の話もある。

過去を変え続けた結果、現代が消滅しかかった為、過去に行って修正した物語もある。

この時は、元に戻すよりも、変え過ぎる事による歴史の復元力を利用した。

特撮番組では、歴史改変による影響を受けない特異点という存在を利用し、改変も修正もしていた。

様々な話はあるが、実証は一度も無い。

分かっているのは、「門」使用による現代世界への影響は全く出ていない事だけだ。




「門」は結局4時40分に閉じた。

開通時間59分は最短記録を一気に15分以上縮めた。

「会議」でもこの件が取り上げられた。

「59分…1時間を切ったか…」

「今後、短くなる事はあっても、長くなる事は…どうでしょう?」

「『門』を開けた何者かが調整するという可能性はありますよね?」

「あるいは何かが起きて、史実通りに歴史が戻って、乖離が修復される」

「それは、先月辻政信がやった攻勢で、本来死ぬべき人がやっぱり死んだって事とかか…」

しばし雑談の後、方向性を決めるよう議事進行する。

「この『ガ島門』は、我々の史実の2月7日のケ号作戦完了を持って爆破、閉鎖。

 それに異議はありますか?」

「異議なし」

「では、残り8日ですが、予想よりも早期に『門』が閉じる可能性が出て来ました。

 その場合、『門』が閉じるに任せる、で良いですね」

「異議なし」

「今日のペースならば、15分ずつ短くなるとして、4日後には閉じますか」

「ペースについては分からない。明日閉じてもおかしくない」

「もう期日は無いから、二の次としたが科学班には頑張って貰いましょう」

「1時間も無い開通時間なので、救援は治療と食事供給のみにしましょう」

「買い出しはどうなってた?」

「今でも例えば栄養剤とかスポーツ飲料の需要があり、リストを貰って自衛官が買い出しに行き、

 翌日の開門時間に担当に渡して対応しています。

 リストさえ貰えれば、こちらでは時間はいくらでもありますからね」

「ところで、その買い出しの金額制限は相変わらず2000円かね?」

「そのようですが?」

「いや、『門』を開けた何者かが(へそ)を曲げて、金額低く変えたとか無いかなって」

「設定を変えずとも、開通時間と同じで自然に減少するという可能性も…」

「毎日レシートチェックは欠かしてませんが、金額設定にズレはありません。

 しかし、コンビニで売っている物以外は『門』を通れなくなりました」

「ははは(苦笑)、やはり何者かは(へそ)を曲げたようだ」

「そりゃガバガバ設定の隙をついて、機関砲まで運び込んだとかだと、

 『歴史を変えたくない』連中からしたら許し難いだろうからね」

一同が笑う。

「最初からそういう設定ならば、我々も色々やる必要は無かったろうね」

「いや、そういう設定になったっていうのは、色々やったから分かることだ。

 分かっていなかったら、今でもまだ抜け道探そうとしてたかもしれない」

「しかし、設定が緩かったのは、結局我々に何かをさせようとしていたのかな」

「どうでしょうね? わざとだったのか、そうではないのか…」

私語に対し広瀬三佐が咳払いし、

「もう、何者かの目を誤魔化したり、引っ掛けたりする必要は無い。

 本来何者かが期待していた、食糧や水、医薬品の支援だけで良い。

 それ以上をやってる時間も無い。

 皆さん、あと8日頑張りましょう!」

そう告げて、本日の会議は散会した。




「という事で、僕もお役御免なんだ」

賀名生さんが俺の勤めるコンビニに来た。

俺は深夜枠固定シフトという、ある意味拷問から解放され、適当に休め、昼も入るようになった。

賀名生さんは電話をかけて、わざわざ俺のいる時間を聞いてから来た。

「…って事は、俺は勤務中だって事分かってますよね…」

「分かってますよ~。昼間は暇な職場だって事もね。お客さんいないし」

確かに昼間は、たまにドライブ客が寄る程度。

年に何回かのかき入れ時、深夜のトラック通過帯が売り上げの9割以上。

昔は「いっそ深夜だけ開ける店にしようか」とか考えたりもしたが…

深夜のみの10連勤とかやって、人間の生活サイクルと合ってないと実感して、そんな考え捨てた。


賀名生さんは、しばらくは以前設置した暗号化装置や、盗聴監視器を残すと言っていた。

「しばらくって、どれくらいですか?」

「1年くらい」

「…それ、しばらくじゃないっす」

「言ったでしょ、セキュリティは…」

「ローテクなとこから破綻する、でしたよね」

「そうそう! だから、変なとこから足がつくかもしれない。

 例えば、クリスマスチキンとかくじ引きの通信を見ていた人が…」

「見られないように暗号化してますよね?」

「そこがローテクの穴。暗号化して飛ばしても、結局はコンビニ本部のデータセンターには

 売上データとかが届くわけだ。そこの管理者が、何も知らずに見ていて

 去年のデータと今年のデータが余りにも違い過ぎておかしい、とかなったら?

 そしてその人が、変な正義感を持った人だったら?

 辻政信でも思い知ったけど、人間こっちの思惑通りには動かないからね」

「まあ、実害無いなら、それでいいです」

「ついでに、警視庁の方でも長距離トラックの監視に丁度いいから、置かせてね、と」

「それ、あの人たちのプライバシーの侵害になりませんか?」

「盗聴じゃないよ。物流の監視。雪降ったりした時、どう迂回させて緊急物資輸送するか、とか。

 あと以前有ったようだけど、犯人にジャックされた時のコース追跡とか。

 まあ、ここだけじゃなくトラック会社の方とも話をつけるようだけど、

 君は決定されてから物事を押し付けられるの嫌いみたいなんで、動く前に言ってみた」

「はあーーー」

ため息をついて、思った。この人、全然お役御免になってない。

「僕がお役御免になったのは、『門』のハッキングについてだよ。

 前田さんはまだお役御免にならず、『門』を開けた何者かの思考解読をしてるよ」

「へー。まだ続けるんですか。でも、もうそろそろタイムオーバーじゃないんですか?」

「1943年2月7日でガダルカナル島から日本軍完全撤退。そこまで。

 なんだけど、前田さんのはそれとは違う」

「と言いますと?」

「今回の『ガ島門』は3回目って事だったよね。

 4回目があるかもしれない、そう思わない?」

「思いたくない…」

「(笑) まあ、思いたくないその気持ちは置いといて、だ。

 今回散々に僕らにおちょくられ、穴を開けられた奴らが、次も同じ事をするかどうか」

「しないんじゃないですか」

「前田さんは『する』と見ている。諦めるようなら、3回も開けないし、

 うちらのハッキング作戦が分かった時点で危険と判断し強制閉鎖する。

 今に至ってもそれをしないから、次はもっと手を変えてやって来るのでは?と」

「うーーん、嫌だなあ」

「それで、一体いつ、どこに、どの時期と繋げるかを思考解読している。

 太平洋戦争中のどこか、先人が窮乏していて、送る側の人間は物資が溢れてる時代、

 そこまでは分かる。だけど、送る側の時期が読めない。

 この先何年先か、あるいは警戒をして何十年先かもしれない。

 自分の技術を解読されそうな、何者かの生きてる時代と近い時期は無いと見てるけど…」

「まあ、うちに面倒が降りかからなければ、何十年先でも問題無いです」




同じ頃、防衛省、警察等でちょっとした打ち合わせが行われていた。

「史実では、逃げ切れなかった兵は味方に銃殺されたり、手榴弾を抱えて自爆して

 足手まといにならないよう自らを死を選んでいます。

 今回の世界でも同じ事は起こり得ます。だから!」

「と言っても、麻薬、劇薬に類するものを横流ししろなんて。

 警察はそれには絶対協力出来ません」

「時間が無いんです。あと一週間、もしかしたら明日閉じるかもしれない。

 現在の入院患者が走って逃げられる、救援部隊に辿り着ける薬を」

「そして薬物中毒者を日本に放つのかね?」

「そこはあちらの世界の責任で」

「確かに『可能な限り救おう』で一致しました。

 あちらの世界の事はあちらの人物に責任負って貰おうとも。

 けど、警察にも退いてはいけない線ってのがあります。

 いくら乖離しつつある世界と言っても、麻薬を蔓延らせるなど、警察は出来ません」

「防衛省の方では、そういう気つけ薬みたいなのありますか?」

「防衛医大にいけば劇物はそりゃありますよ。でも、医師の監視の下で、

 用法を守って、その用途以外には使わないようしてます。

 流石にそれを供与は出来ません」

「武器を渡しておいて、気つけ薬はダメだとか、おかしいじゃないですか」

「麻薬は武器よりもっとダメなものですよ。そこの順番は譲れない」

「話を最初に戻すと。逃げ切れない入院している兵士たち、彼等を見捨てるんですか?

 どうにか薬で、治らなくても良いから、無理やり動かすように出来ませんかね」

「『門』はそれを通すかな?」

「やってみる価値はあると思いますが」

「警察は反対です。決して横流しもしませんし、もしもどこかから調達して

 渡そうとしたならば、これまでの経緯を無視してでも逮捕します」

「防衛省も出来ない、としか言えません」

「………」

「………」

「………、ではこの件、もうよろしいですか?」

「では、昨年我々の意向であの時代の覚醒剤を使用しないように頼みました。

 命令に近い脅しでもありましたよね?

 あれの解除をしていただけませんか?

 こちらから麻薬を持ち込まない以上、そこがギリギリの線だと思いますが」

「………」

「………」

「…警察は今の話を聞かなかった事にします。

 聞いてしまったならば、反対という事になります。そこは意思表明です。

 ですが、私は何も聞かなかった」

「そうですね、それが落としどころですね」

「ありがとうございます」

「…警察としては何も聞いてないのですが、独り言を言いますね。

 絶対許してはいけない線ですが、もしかしたらもう現場では解禁した可能性があります。

 貴方と同じような事を考える軍医もいるかもしれません。

 だから、……結局は追認という形になります」

「そうですね。我々は過去の人間を現代の知識でもって制御なんか出来ない、

 それを学びました。追認という形になるでしょう」

「……でも、ありがとうございます。

 この話は、誰も聞かなかったことにし、私の責任で話します」

タイムリミットを前に、「門」のこちら側も揺れていた。

(続く)

感想ありがとうございます。

現在まで、過去改変が現代世界に全く影響与えてないので、その辺が色々ヒントです。

シャーマンの件見ても、過去の方が予想を超えて変わると、現代側も得られる情報が少なく、どうしたら良いか分かりませんしね。

同じように、さらに未来側も現代がどう考え、過去をどう変化させてるのか分かりません。

なんせ、影響が全くないって事は、過去の変化について把握しづらいって事です。


そのインターフェースである「門」です。

放っておけば2月7日まで毎日2時間「門」は開いていた。

頑張って支援すればする程、開通時間は短くなり、「門」も早く消滅しそう。

致命的に歴史改変する何かをもたらすと、一発で「門」消滅もあり得ます。

頑張れば頑張る程に遠くなるって話でした。

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