表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コンビニ・ガダルカナル  作者: ほうこうおんち
序章:1942年のガダルカナル島に繋がる道が出来た
5/81

日本兵に色々手伝ってもらい、何となく分かって来た

慣れたとは言え、日本兵が現れるのは不自然な事だ。

だが、今は彼が現れるのを待っている。

島村曹長がガダルカナルから平成の日本に戻って来る事を。


彼は戻って来た、不思議そうな表情で。


「報告。水、食糧、全て運べました」

「うむ…」

広瀬三佐が頭を抱えている。

「1日に20個が限度という事でしたよね」

「私はそう確信していたのだが…」

「では、今度は30個になるよう試してみましょう」

「そうだな」

結果は10個の脱落が出た。


30個、40個と試してみたが、やはり持ち込めたのは合計20個だった。

曹長も、荷物を持って行ったり来たり大変だろう。

こっちの世界に残る物だが、ある時は水が多く、ある時は握り飯が多い。

「要するにランダムって事だな」

三佐が結論を出した。

そして思い当たった事があるらしく、

「曹長、一度部隊に戻り、先ほどの何とか一等兵をもう一度連れて来て欲しい」

そう言った。

時間が限られている為か、曹長は無言で敬礼を返すと、駆け足で洞窟の中に消えた。

待つ時間が長く感じられた。

4時10分頃、島村曹長、清野一等兵がこちらの世界に戻って来た。


「清野、貴官はさらにこの水20本を持って行って欲しい。

 向こうに着いたら、全部揃っているか数えろ」

「はっ」

敬礼を返し、清野一等兵が靄の中に消えた。

そして戻って来た。

「失礼しました。水を落としたようです」

そういって落とした15本を拾うと、また靄の中に消えた。

そして…

「…また落としたようです。失礼いたしました!」

戻って来て、また15本を拾った。

ここで島村曹長が口を開いた。

「どうやら1日につき、一人20本が限度のようだ。清野、ご苦労だった。

 その5本だけ持って帰営せよ」

「はあ…?、はっ!」

釈然としない表情だったが、水は何より貴重品、5本と言えど持ち帰って仲間に与えないと。

清野はそのまま帰って行った。


つまり今日は

清野:15本+5本

島村:20本

とこれしか持ち込めないようだった。

(まだ入院中の西田軍曹はこちらにいるから、暫定的な数字である)


次の実験が始まった。

「では曹長、頼む」

「はっ!」

「では行って来ます」

曹長の腰に縄をつけ、野戦服姿の自衛隊員と繋げていた。

「つまり、こちらからあちらに行けるか?って事ですか?」

俺が聞いたら、三佐は黙って頷いた。

(最初はハーネスにするつもりだったが、高価な装備は持ち込めないだろうと変更したそうで)

そして結果は…

「ダメです。曹長は行けましたが、自分は残っています」

島村曹長の腰で結んでいた筈の縄は、結び目が解けた様子もなく、そのまま残っていた。

「やはりダメか…」

三佐は何となく予測がついていた。

実は既に、機械計測から繋がったであろう時間にドローンを突入させてみたそうだ。

だがドローンは洞窟の壁に当たるだけ。

試しにと、人や犬を入れてみたが、それも失敗した。

そこで、もしかしたら来た者と一緒ならば?という賭けに出たそうだった。


タイムリミットの朝5時に近くなって来た。

朝5時ピッタリがタイムリミットではなく、大体その辺だった為、余裕こいてられない。

「次なる実験は…」

と曹長に医薬品を持たせた。

絆創膏にオキシドール、包帯、ガーゼ、いわゆる「赤チン」。

これは持ち込みに成功した。

今まで表情が暗かった三佐と曹長の表情が明るくなった。

様々な薬品を試し、大丈夫な物とダメな物とが出た。

何よりも一番大事と言っていた、抗マラリア薬が持ち込めなかった。

2人とも残念な表情になっていた。

分析をしていた三佐の部下(井上医官)が呟いた。

「どうも、高い薬がダメですね」

皆が顔を見合わせた。


「すみませんが、何か丁度千円くらいのありませんか? 高い弁当とか?」

三佐が言ったのは、空腹だからではないと俺でも分かった。

「合計で何円くらいにしたらいいっすかね?」

「井上君、行ける薬と行けない薬の大体の閾値はいくら?」

「1500円から3000円ですかね。3000円超えると確実にダメです」

俺はそれを聞いて、店に戻ってとっておきを出した。

”期間限定!ぴったり1000円弁当”(税込み)。

チェーン店で「売れない癖に変に高級な弁当を売らせる」と不評ものだったが、

計るには丁度良かった。

それと何個か500円(税抜)や700円(税抜)のも持って来た。

そして試した結果、

「大体2000円だ!! 微妙にこの前後だ」


どうも、1人あたり2000円を大きく超える物は持ち込み不可能なようだった。

となると、武器だから持ち込めないのではなく、2000円を超えてるからダメかもしれない。

水は実際には98円とかそんな値段だったが、約20本でリミット。

お握りは105円から110円だったので、これも約20個でリミット。

試してみたら、1000円弁当1個と水5個、お握り5個で大丈夫だった。

端数的に2000円をオーバーはしているが、2100円にならない限りはいけるようだった。

「何とも人間臭いワープゾーンがあったものだ…」

広瀬三佐はため息をついた。

「誰かが作ったっぽいですよね」

ふと俺は思って事を口に出した。

「作った?」

「だって、金額なんてものが行ける行けないの境界になるなんて、自然ではあり得ないことでしょ。

 どっかの高次元人か何かが、お遊びでそういう設定にして口を開けたのかもしれないっすね」

「うーーーーーん…」

三佐は考え込んだ。

俺はどっかのSFで読んだ知識からテキトーな事言っただけなんだが…。


「失礼します。そろそろ帰営したいのでありますが」

島村曹長が敬礼しながら訴えた。

時間は4時53分。

下手をしたら本日の通路は閉じてしまう。

「ご苦労様でした。では報告後にまた」

「命があったなら、その時に会いましょう」

20世紀と21世紀の軍人同士が敬礼を交わす。

曹長は俺の方に来て、言った。

「やはりここは未来の世界なんだな」

「へ?あ、いや、どうしてそう思ったんです?」

「貴様たちは普通に千円、二千円なんて言っていた。

 貴様たちには普通の金額かもしれないが、二千円と言えば自動二輪が買える程の金額だぞ。

 俺は度々心臓が止まりそうになったよ。

 それに貴様らは、俺に慣れて来たせいかしばしば英語を使ってるな。

 それも日本語の中に自然に取り込んだ形で。

 英語禁止令がどうとか言ってたのに、おかしいではないか。

 だから俺は、もう戦争が終わった後、英語が普通に使える時代だと思ったよ」

この人、本当に鋭い、キレ者過ぎる。

「曹長、今後の戦局とかは…」

「聞く気は無い。いや、最初は聞こうかと思ったが、聞いて俺だけ逃げるわけにもいかん。

 死ぬなら戦友と命運を共にするさ。

 だから聞かん。ガ島に戻っても教える気もない。

 だが、物資を支援してくれるならありがたく頂戴する。

 仲間が飢え死にするとこなんて、見るに耐えん。

 死ぬなら米軍と戦って戦死するさ」

言えないなあ、今の日本はそのアメリカと同盟関係にあるなんて…。

言ってもこのキレ者曹長は「そうか」で済むかもしれないが、それでも何故か言えない…。


「ではお世話になりました」

そう言って、防虫剤1缶と、水と食糧で合計2000円相当を持って曹長は靄の中に消えた。

防虫剤を持っていけと行ったのは広瀬三佐で、マラリアを媒介する蚊を近づけないのが、

一番のマラリア対策だと説明していた。

…日本の蚊用のがどこまで効くかは分からないが、無いよりずっと良いだろう。

時計は5時前だった。


「では我々も撤収しよう」

自衛隊が引き上げ始めた。

「あれ? 観測機材は残していくんですか?」

「まだあの穴は開いているからね」

「今後は自衛隊の管轄になりますね。うちはそろそろ解放って事ですね」

「それなんだがね、まだまだ解放ってわけにもいかないよ」

「え?まだこれ以上何かあるんですか?」

「君が口に出した、最初にこちらに来た西田軍曹、彼がまだこちらに居るじゃないか」

「あ。でも、それとうちに何の関係が?」

「彼は君の店を見ているのだよ。口でも封じるかい?」

「うわ、人聞き悪い。

 …つまり、うちの店を知ってる日本兵が居なくなるまで、無関係になれない、と?」

「もっとぶっちゃけて言っちゃうとね、

 あの穴から出て来た人たちが真っ先に見つけるのがあなたのコンビニ。

 他に行かれて、1942年のガダルカナルへの穴とか、日本兵出現とか、色々都合が悪いんです。

 だから、そういう情報を堰き止める為にも、あそこのコンビニが必要でしてね」

「…勝手な話っすね」

「まあまあ。使用料とか迷惑料とか、ちゃんと対価を支払いますから」

それで承知した俺も俺だ(苦笑)。


というわけで、我がコンビニとガダルカナル島との縁は切れない…。

(続く)

感想ありがとうございます。

自分は「なろう」サイト使ってるだけあって、チート系主人公の話は好きなんですが、自分では書けないんです。

今書いてる設定的な部分も、そもそも未来に通じる通路だけで十分チートなんで、それをどう「近代兵器大量に運び込み、補給万全にして敵に叩きつける」とシンプルなやり方から捻くれさせるか考えての事です。

まだ残る謎みたいなのも、おいおい答えを書いていきますので、よろしくお付き合い願います。


序章的な部分もあとちょっと。

頑張れ、自分!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ