表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コンビニ・ガダルカナル  作者: ほうこうおんち
序章:1942年のガダルカナル島に繋がる道が出来た
4/81

しょっちゅう日本兵が現れるから、調査をしてみた

不思議な事なんだが、俺の前に日本兵が現れるのは、深夜から夜明け頃に限られる。

先日現れた島村曹長はスモークシールド入った車に乗せられ、どこかに連れて行かれた。

そして朝から自衛隊が藪の中で活動していた。

その間、日本兵は1人も現れなかった。

都合から自衛官が交代でバイトの形で残っていたが、

そのバイトの前に、やはり深夜に日本兵が現れた。


「店長、お客さんです」

一応俺は「副」店長だが、親父は面倒事を嫌って出て来ない。

面倒だから店長ということになったが、そこは問題ではない。

暗号で、一般の客は「お客様」、日本兵なら「お客さん」と言い分けることにしていた。

「お客さん」って事は、また来たか。


今夜来店したのは、先日物資を持って引き上げた山木二等兵だった。

敬礼をすると、

「曹長殿はどちらでしょうか?」

と聞いてきた。

俺は陸軍省の人に連れられて行ったと答えたら、安心したようだった。


次に彼が言った話が重要だった。

「実は先日いただいた物資ですが、帰営すると多くが無くなりました。

 確かに水40本、握り飯40個をいただきましたが、水13本、握り飯7個のみでした。

 自分は慌てて洞窟に戻りましたが、何もありませんでした。

 今夜、再び来てみると、洞窟の中に水と握り飯が落ちていました」

あれ? 前回調査した時、落ちていた11本のペットボトルは警察が証拠として持っていったけど、

今回はそのまま放置したのだろうか?

二等兵は話を続ける。

「自分は残った握り飯を全て持って、一度隊に戻りました。

 すると今度は、20個だけ持ち帰れていて、他はやはり無くなっていました。

 また洞窟に戻ると、握り飯13個と水が27本ありました。

 それを持って戻るのですが、今度は1個も持ち帰れません。

 水も同様です。もう1本も持ち帰れないのです」

話を聞いていたバイト君、否、自衛官がメモを取っていた。

「小隊長殿は、もう握り飯はいいから、曹長を呼び戻せと言って来ました。

 それで自分が来たのですが…」

「失礼ですが、貴方1人で来たのですか?」

質問したのはバイトに扮した自衛隊員だった。

「いえ、何人かで来たのですが、入れたのは1人だけでした」

「と言いますと?」

「我々は数人単位で歩哨をします。今夜自分たちは3人でした。

 自分が洞窟に入った後、後方を見ましたが誰もいませんでした。

 落ちていた物を拾い、持ち帰ると他の2人がおりました。

 彼等から自分がどこに消えたのかと聞かれました。

 拾った食糧を見たところ、数が減っていたのは先ほど話した通りです。

 3人でもう一度行こうとしましたが、やはり自分だけが入れたようです。

 2人は気味悪がって、洞窟に入ろうとしませんでした。

 そこで一度帰営し、曹長殿を連れ戻せと命じられ、自分だけが来ました」

「大変重要な情報ですね」

「ところで、貴方自身が残って、他の2人に洞窟入りさせるとかはしませんでしたか?」

「一度持ち帰った物を戻しに来たりはしませんでしたか?」

おいおいバイト君、段々化けの皮が剥がれて来てるよ。


とりあえず曹長を確かに帰すことを約束して、山木二等兵には帰って貰った。

バイト君は元々の自衛官として、どこかに連絡を入れていた。

夜が明け、親父にシフトを交代し、睡眠。

深夜にまた勤務に入った。

面倒事なんだが、なまじの遊びより面白いから、無理して深夜勤務を入れていた(笑)。

俺がシフトに入る時、本物のバイト君(22時で上がり)から

「お客さん10人くらい来てましたんで、あっち(元ドライブイン)に通しておきましたよ」

と報告を受けた。

彼は何も知らない、知らせてもいない。

だから「お客さん」は単純に、「お客様」と言うべきとこを軽く言ったに過ぎない。

…困ったもんだ。


仮眠場所兼イートインになっている部屋に、俺は差し入れをした。

昨日「科学特捜隊」(笑)とされた人たちと、旧軍の軍服数人と、島村曹長がいた。

島村曹長は俺を見て敬礼した。

だが、昨日の生き生きとした様子と違い、ちょっと表情に影がある。

「どうしたんですか? なんか元気が無いようですが」

「ちょっと残念な事が分かってね」

代わりに答えたのが、科学特捜隊(笑)の広瀬三佐だった。

(この人実戦部隊じゃなく、本当に科学畑の人だった)

「まず、まだ何と呼んだら良いか定まってませんが、穴が開いてる時間には限りがあるようです。

 調査した結果、深夜3時から早朝5時までの間しか開いていないようです。

 カメラでの確認の他、湿度計や温度計を使ってみましたが、

 その時間だけ南方特有の温度と湿度になったんで驚きました」

なんかいつの間にか科学的な調査をしている。

「監視カメラでの確認で、1日に持ち込める物資には限界があるようです。

 我々は彼等が出没し、物資を運ぶ様子を撮影していたのです。

 落とした物資に手を触れずそのままにしていましたが、同じ日には持ち帰る事が出来ず、

 翌日になって改めて運んでいたようですが、それにも限界がありました。

 どうも持ち込めるのは1日に20個前後のようです」

昨晩来た山木二等兵の話とも合致する。

「それと、こちらに来られる人数も限られているようです。

 1回で1人しか来られないようです」

「それ、違うんじゃないですかね?」

俺は言い返した。

「島村曹長と山木二等兵は同時に来ましたんで、一度に2人は来れますよ。

 しかし、島村曹長がこちらに残っていた時間には1人ずつ。

 なんで、こっちに滞在出来るのは最大3人じゃないですかね」

「3人…。なるほど、入院している西田軍曹を合わせて3人ですか。そうかもしれませんね」

頷いた後、広瀬三佐は続けた。

「どちらにしても、何かと制限の多い通路のようです。

 そこで今夜は、島村曹長に復命とこちらからの伝言の為帰営していただきますが、

 その時に持ち込める物の限界を、出来る限り調査しようと思います」


そういう訳で科学特捜隊(笑)勢ぞろいってわけなんだな。


深夜、無理を言って自衛官に店を頼み、俺もその洞窟に行ってみた。

俺の店の水やらお握りを補給物資にしてるんだから、多少の無理は通った。

洞窟は、確かに変な暑さだった。

「曹長、まずは君1人で洞窟に入ってもらいたい。

 移動を確認したら、その無線機で我々に通信して欲しい。

 その後、すぐにこちらに戻って来て欲しい」

「はっ」

曹長はそう言うと、洞窟の中に入って行った。

暑さと湿気で靄が掛かっていたが、人影は見えていた。

だが…

「消えた」

「居なくなった」

「あちらの世界に戻ったか」

驚く俺と変に納得している三佐。

「無線の呼び出し(コール)は?」

「ありません」

部下が答える。

「あるわけないですよ。あそこに落ちてます」

「え?」

俺が指差す先に、軍用の通信機が落ちていた。

「どうやら無線機はあちらの世界に持ち込めないのか…」

三佐は残念そうだった。

そうこうしている内に、靄の中から曹長が戻って来た。

足元の通信機を見て驚き、

「報告。洞窟を抜けたと思ったら、無電が有りませんでした。

 それで仕方なく戻ったところ、落としておりました。

 申し訳ありません。もう一度行います」

「……多分同じ結果になると思うけど、追試しよう。よろしく」

再度曹長は通信機を、しっかり縛りつけるようにして持っていったが、

ガタンと音がして曹長は居なく、通信機だけがそこに落ちていた。


三佐は、次は拳銃を曹長に渡した。

これも同様だった。

拳銃はあちらの世界に持ち込めないようだった。

「通信機に拳銃、こういうものは持ち込めないのか…」

2時間という開通している限られた時間内で、様々試そうとしていた。

部下のヘルメットや防弾着も試してみたが、やはりダメだった。

「食糧と水だけなのかな?」

それを試そうとした時、異変が起きた。


「曹長!ご無事でしたか!」

山木二等兵ではない、別な兵士がこちらの世界に現れた。

「清野一等兵か。貴様、銃と刀はどうした?」

「は? あれ、有りません。あれ?あれ? あ、申し訳ありません!!」

「いや、構わない。やはりか、と思っただけだ」

「は?」

曹長、三佐ともにガッカリしている。

武器はどうやら、あちらへもこちらにも持ち込めないようだった。


「清野、良いとこに来た。ここに補給物資がある。

 この水を15本、小隊に先に届けて欲しい。

 そして小隊長殿に、本朝島村曹長帰隊出頭いたしますと報告して欲しい」

「は!」

清野一等兵の背嚢にペットボトル15本を詰めると、先にあちらの世界に帰した。

「おそらくこれで、持ち帰る事が出来る数は残り5個だな」

「予想が合ってれば、ですね」

一同が見守る中、島村曹長の背嚢にペットボトル10本、お握り10個を詰められた。

「これで、おそらく15個がこちらの世界に残されるだろう。

 水と食糧、どちらが残るか傾向を分析したい。

 曹長はガ島に行ったら、一度戻って来て欲しい」

「了解しました」

そう言って曹長は靄の中に消えた。


「あれ?」

三佐が驚いていた。

「全部持って行けたぞ」

(続く)

皆さま、感想ありがとうございます。

先に書いておくと、「俺」含む現代人、旧日本兵、ともに今登場してる人たちは超常的な力は使えません。この先も。

じゃあそんな力無いのか?と言ったら、そこはまあ…。

(その力が無いと、そもそも過去と現代が繋がらない)


この辺はまだ序章的な話でして、ようやく設定的な話に入れました。

段々具体的なガダルカナルの話を書けるかもしれません。

途中で挫折してエターナル化しないよう、風呂敷は畳める範囲で拡げたいものです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 戦場という結構気が立っている状態で軍人がこんなのんびりした口調だろうかという違和感。 兵が下士官に対し声を掛けるとき階級のみで呼び捨てにすると罰直もんだったと思うのですが。 そして銃と…
[良い点] 謎と解き明かす感じがテンポ良く面白い [気になる点] 本文中に(笑)はちょっと…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ