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コンビニ・ガダルカナル  作者: ほうこうおんち
序章:1942年のガダルカナル島に繋がる道が出来た
3/81

今度は日本兵が2人でやって来た

俺の前にまた日本兵が現れた。

忘れかけてもいない、前日に続き連続で、

1人ではなく、2人でだった。



「いらっしゃ…」

「邪魔をする」

昨日来た兵隊だった。

「夕べは世話になった」

「いえ、どうも…」

今日は兵隊さんの方が余裕がある感じだった。

もう1人、部下のような兵隊さんはなんか脅えていたが。


「今暁0430(まるよんさんまる)時にここを出た。

 俺は元来た洞窟を見つけ、そこに入った。

 そうしたら、落としたと思った銃と軍刀を見つけた。

 俺は喜んで、待っている仲間の元に戻った。

 だが、無かったんだ」

「水が、ですか?」

「ああ。確かに31本買った。貴様も見ていたよな」

「はい」

「20本しか無かったんだ。

 調べてみたが、背嚢に穴は開いていなかった。

 探しに洞窟に戻ったのだが、今度はここに来る事も出来なかった」

「はあ…」

「20本も水があれば、我々には十分ではあったよ。

 ありがたかった、礼を言う。

 あの水は綺麗で、傷口を洗ったり色々出来た」

「はあ…」

「そうなるとな、やはり落とした11本が惜しい。

 それでこいつを連れて、もう一回洞窟に入った。

 そうしたら、今度はここに来られたってわけだ」

「はあ………」

「だが俺たちは5人で歩哨を組んで来たのだ。

 なのにここに来られたのは俺とこいつの2人だけだった」

「はああ………」

「貴様はこの事を説明、出来ないって言ってたな。

 出来れば説明可能な者に会いたいが、それを言っても意味は無い。

 それで貴様に頼みがあるのだが、良いだろうか」

「何でしょう?」

(俺って、あっち(警察)からもこっち(兵士)からも頼まれてるなあ)

「陸軍省に電話したい。

 確かに日本とガダルカナルは繋がっている。

 ならば、あの洞窟を使って物資を送って貰えれば、我々は勝てる」


いい機会かもしれないな。

この人が頼んでいるのだから、防衛省の人に会って貰っても良いだろう。

お互いがお互いを知りたがった以上、邪魔する気も無い。

面倒事もこれで終わるかもしれない、ちょっと寂しいが。


「分かりました。連絡を入れます」

「頼む」

兵隊は頭を下げた。


そして

「山木一等兵」

もう一人の兵を呼んだ。

おどおどしていた兵は、直ちに直立不動の姿勢になった。

「山木一等兵に命じる。

 これよりこの店で水と食糧を調達…購入する。

 貴様はそれを持って原隊に戻り、物資を届けよ」

「は!」

山木一等兵と呼ばれた兵士は短く答えた。


俺は今度は堂々と電話をかけ、事情を説明した。

昨晩会った兵隊は、島村曹長と名乗った。

島村曹長からまた軍票を受け取り、

3人で大きな袋、念の入った事に袋の中にもう1枚袋を入れた二重になっていた、

これにお握りと水を詰めた。


「山木一等兵、これより帰隊いたします」

「うん。俺はもう少しここに残るが、必ず帰る。小隊長殿によろしくな」

「は!」

「帰路、敵に撃たれたりするなよ」

「は!」

「では行け!」

「は!」

そして島村曹長が一人残った。


俺は島村曹長に風呂を薦めた。

彼は少し考えた後

「そうだな、陸軍省のエリートさん(なんか皮肉な響きがあった)たちに会うのに、

 臭いとか言われたらたまったもんじゃないからな」

そう言って受け入れてくれた。

彼がシャワーを浴びている間に、黒塗りの車に乗って制服を着た人たちがやって来た。




シャワーから出て来た島村曹長は、軍服姿を見てすぐに直立不動で敬礼をした。

俺には分からなかったが、所属部隊名や現状を報告していた。

自衛隊の制服の人たちだが、運転手を残し全部で3人。

2人は今の制服だったが、もう1人は旧日本軍の制服を着ていた。

島村曹長は、現代の制服には目もくれず、旧軍の制服の方に向けて状況を説明していた。

「以上であります。ガ島では多くの兵が飢えに苦しんでおります。

 少佐殿におかれましては、この件を取り上げ、ただちにあの洞窟より

 物資を届けていただきたいと思います」

「承知した」

(承知していいのかい!と俺は心の中で突っ込んだ)

「ところで少佐殿、あちらの見慣れない軍服は何者でありますか?」

「う…うむ、実は特殊な事象について調査する、科学特捜隊という部隊が陸海軍共同で出来たのだ」

(ウル〇ラマンかい!)

「は?」

「曹長の言う戦場に繋がる洞窟だが、少し前から同様の報告が上がっていた。

 それで、これはどうした事なのか、調べる特務が立ち上がったのだ」

「同じような洞窟!? 失礼しました!無礼でありました」

「いや構わない。あるものは鍾乳洞の奥にあり、そこは中立国スイスの氷洞に繋がっていた。

 またあるものは、形としては神社の祠だったのだが、そこは南鳥島に繋がっていたのだ」

(いや、俺もそんな話初めて聞いたぞ)

「この離れた場所を繋げる穴について調べる特務機関が立ち上がったばかりだから、

 貴官の話を聞いてピンと来てね、一緒に来て貰った」

「そうでありましたか! 知らぬ事とはいえ、大変失礼いたしました!」

島村曹長は残り2人に敬礼をした。


「曹長、この件で貴官には調査の協力を頼みたい。

 事はガ島作戦全体に関わるゆえ、よろしく頼む」

「島村曹長、拝命いたします! ただ…」

「ただ?」

「一度原隊に戻り、復命いたしませんと」

「もっともだ。可能ならば私自体が着いて行きたい。案内してくれんか」

「喜んで!」

島村曹長の顔が生き生きとしている。

そりゃあ嬉しいだろうなあ。

仲間を助けられるだけでなく、戦局を一気にひっくり返せるのだから。

その穴から、水や食糧だけでない、医薬品、現代の兵器なんかを送れば、

補給を止められ干上がっている筈の日本軍が復活し、反撃出来る。


…って、そんな事していいのか!?

歴史が変わってしまうぞ。


幸いにも、現代の制服組の1人は先日警察署で顔を合わせていた。

名前は確か広瀬三等陸佐とか言ってた。

『広瀬さん、広瀬さん』

俺はひそひそ話を始めた。

『何でしょう?』

『いいんですか? あんな約束して』

『本当の事も言えませんよ。絶対に死ぬ島だなんて言って、そこに帰すんですか?』

『そりゃそうですけどね。でも知りませんでした。同じような穴って他にも有ったんですね』

『その事なんだが…』

『はい』

『無論、嘘です。彼には決して教えないで下さい』

俺は心の中で相当ズッコケていた。

よくもまあ、凄い設定を作ったものだ。

だが、これで島村曹長は軍の命令として協力をして貰えるってわけだ。


疑問はまだあった俺は、次いで尋ねてみた。

『ところで、うちの店はどうなります?』

『もう少し協力をお願いしたいと思っております。

 対価につきましては、金銭面ではかなり色をつけますので、協力して下さい』

俺と日本兵の日々はまだ続くらしい…。

(続く)

感想をお書きいただきありがとうございます。

3話目投下できました。

まだまだ序章的な部分なので、ここを書き終えたいとこです。

お付き合い願います。

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