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コンビニ・ガダルカナル  作者: ほうこうおんち
序章:1942年のガダルカナル島に繋がる道が出来た
1/81

ある晩、突然日本兵が俺の働くコンビニに現れた

その男は不意に、俺の勤務するコンビニエンスストアに現れた。


ここはちょっとした山奥にあるコンビニエンスストアだ。

元は祖父さんがドライブインとして始めた店だ。

就職氷河期の前に、親父がコンビニとしてフランチャイズ契約した。

そして俺が店員として雇われた。

ドライブイン的なシャワーや仮眠部屋貸し出しも残っている。

だから山奥で、人気が無くとも24時間営業をしている。

俺と、親父と弟と、たまに入るバイト君で回している。

深夜はほぼ俺か弟の担当だ。


…迷惑な話だ。


その男は、深夜に現れた。

どう見ても旧日本軍兵士だ。

そういや、山奥のここよりちょっと行ったとこに、サバゲーの会場在ったよな。

なんとなくそれで落ち着いた。


「いっらっしゃいませ」

防犯の意味もあり、マニュアル通り声をかけた。

男は驚いてこっちを見た。

『随分動きが緩慢だなぁ』

男はヨタヨタ歩いて来て、こう言った。


「貴様、日本人か?」


不思議と「貴様」に侮蔑の響きが無かった。

次いでこう言い出した。

「ここはどこなんだ?

 あと俺の銃を知らんか?

 ここに来る時に無くなったのだ」


(なんか設定でもあるのか?) と俺も付き合ってみた。

「ここは東京からちょっと来た山奥ですよ。

 日本国内で銃は持ち込み禁止です…」

「日本だと?」


男が被せるように語を重ねた。

「どうして俺が日本に居るのだ?

 東京からちょっと来たとこだと?

 俺はさっきまで南方におったのだ」


「はあ…」

面倒な客に当たったなと思った。

つい手が、防犯スイッチに伸びてもいた。


「…帰らねば。

 小隊が待っている。

 ところで、貴様、水か食糧はあるか?」

「あちらにございます」

「そうか…」


男はガラス扉の中にある水を見つけ、


辛抱出来ずに栓を開けて飲み始めた。


「ちょ…お客様」


男は飲み終わり、鞄にペットボトルを詰めると、そのまま倒れた。

面倒臭い客だったか…、俺はそう思い警察に通報した。

夜間で、暴れたりはしてないだけに、警報灯を点けずにパトカーが来た。

その男を担いで連れて行った。

俺は心当たりを聞かれたが、あるわけない。

近くにサバゲーの会場があるから、はぐれたんじゃないか?とだけ言った。

それでこの珍事件は終わる筈だった。






2日後、警察から電話が来た。

その男について話があるから、お手数ですがご足労願います、と来た。

俺も仕事のシフトがあるので、明日ならと答えた。

そうしたら迎えに来る、いやパトカーじゃなく普通の車です、と言われた。


事件から3日後、俺は警視庁のとある部屋に居た。

なんでこうなった??

コスプレ日本兵の窃盗じゃなかったのか?

お茶を出されているから、俺が逮捕されるわけじゃないよな、そう自分に話しかけた。

すぐに、制服を着た何人かと、背広を着た2人が入って来た。

制服の1人は、通報した時のお巡りさんだ。

「ご足労いただき、ありがとうございます」

と制服の偉い感じの人が挨拶した。

「ちょっとおかしな事になりまして」

そう言い出した。

説明を聞いて、うん、確かにおかしな話と思った。


あの時現れた男は、本物の日本兵だった、ようだ。

持ち物を調べ、全て昭和17年当時のものと合致した。

倒れたのは、極度の空腹と疲労、水を飲んで気が緩んだせいだとか。

目覚めて尋問した結果、

・ガダルカナル島で戦っていた

・水と食糧を探してジャングルを彷徨った

・洞窟があり、抜けたら銃も軍刀も無くなっていた

・慌てて探していたら、建物が見えたので覗いてみた

そう供述したという。


「作り話でしょ」

俺はそう言ってみたが、背広の男がそれに答えた。

「はじめまして、私は防衛省の史料編纂部門に勤める者です」

「はあ、はじめまして」

「警察より照合の依頼がありまして、調べてみたら、あっさり分かりました」

そう言ってプリントアウトされた写真を差し出す。

あの男が写真の中に居た。


「出身地、所属部隊、上官の名前等あらゆる事を聞き取りました」

「全て一致しました」

「さらに調べてみたら、彼はガダルカナル島で戦死扱いとなっていました」

「子孫の方を探したところ、なんと自衛隊の中にいました」

「出自を伏せ、同郷の方として話をさせてみたら、家族の話まで合っていたそうです」


俺は多分、開いた口が塞がってなかったと思う。

現実離れし過ぎている。

再び警察の制服の人が話した。


「お気持ちは分かります。私たちも本心ではまだ信じきれていません」

「でしょうね。でしょうね! あっさり信じたら俺、貴方たちを疑います」

「それでですね、少々頼みたいことがありまして」

…だから呼ばれたのか。

「何でしょう? 面倒には巻き込まれたくないですよ」

「大したことではありません」

次にまた防衛省の人が話した。

「もしも本当ならば、居なくなった彼を捜索に誰かがまた来るかもしれません」

「はあ」

「その時は、こちらまで連絡願います」

「その程度でしたら」

「あと、防犯カメラの設置をお願いしたいのですが」

「当店は防犯カメラありますよ」

「いえ、それは店の中とちょっと外を写すだけですよね。

 我々はもっと外を、どこから来たのかを写すカメラを設置したいのです」

「はあ、それはまあ、かまいませんが。

 ところで防衛省さんは、その男の証言を信じているのですか?

 警察は信じてないようですが」

「実は我々も信じ切れていません。

 ですが、彼が持っていた装備は本物です。

 その彼が銃と刀を落としたと言ってますので、捜索が必要です。

 無論それは警察と自衛隊がしますが、

 それ以外で、やはり警戒すべきは同じように銃と刀を持った連中ですね」

「ああ、なるほど。飲み込めました。

 同じ『本物』を持った日本兵が来たら、どこでどうやっているのか探すんですね」

「その通りです」


ちょっと面白くなって来たので、さらに聞いてみた。

「もしも、同じような兵士が現れ、やはり水と食糧を要求したら、どうします?」

「売って下さい。売値は、そうですね、150円の水なら10本で1円50銭と言って下さい」

「大体100分の1の値段で、10個くらいですね。それがその当時の物価に近いと思います」

「…うちの損ですよ」

「損は補填します。ただ、その時の反応と、軍票でも何でも良いので受け取って欲しいのです」

「なるほど。そのまま消えた時の証拠残しですか」

「あと、変に刺激したくないのもあります。もしかして武器を携行してるかもしれませんので」

「分かりました」

「もし高いとか言われたら、何本かおまけをつけてやって下さい」


話はついた。

深夜25時とかその辺に、トラックの運転手とかが来客するくらいの店だ。

徹夜仕事にもちょっとした張りが出来て、ちょっとだけ楽しくなった。

その間の協力費も貰えるようだしな。


そして22時からのシフトに入った俺の前に、すぐに言われた通りの事が起きた。

また日本兵が現れた。

(続く)

連載ものには初チャレンジです。

上手く軌道に乗れたら、嬉しいです。

まずは2話程載せてみます。

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