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装甲響姫―鎧閃―ZERO  作者: 窓井来足
第0話(邪慟編)
7/12

あたしたちがアイドルよ! その1

さて、鎬たち欅ヶ森高校のダンス部が誕生したあたりに時間を戻し。

別の高校での出来事を――

「お前、俺にこれに参加しろというのか?」

「クックックッ……あなた意外に私の相手が務まるものなどないと思うのだけれど……どうかしらね?」

「ハッ! どうだろうもないだろう」


 突然。

 一年生の頃にクラスメイトだった、しかしあまり接点のない生徒の御月(みつき)(あや)に。

 訳の分からないものに誘われて戸惑う夜街(やまち)(はやて)

 あまりに理解しがたい展開に。

 颯は今日、ここになぜ自分がいるのかを振り返る。


 ☆ ☆ ☆


 始業式が終わり、ホームルームも終了した後。

 颯は学校に特に親しい友人もおらず、また今日は部活の予定もなかったので。

 さっさと帰ろうと思いつつ、何気なくスマホを見た。

 すると。

 SNSに新着メッセージが一つあった。

 学外で自分が行っているイベント関連の内容かもしれない。

 そう思った颯が、すぐにそれを確認すると。

 それは「体育館の地下倉庫前に来なさい。話があるわ」という。

 一年時のクラスメイト、妖からの呼び出しだった。

 この突然の呼び出しに。

 何故、特に親しい友人でもない妖が、急に自分を呼び出したのか。

 と、戸惑う颯。

 颯は、確かヤツとは、昨年の文化祭で俺が何故かクラスの舞台演劇で照明係のまとめ役を押し付けられた際に、同じ係だから何かのためにと連絡先を交換していた。

 だから、俺の連絡先を知っていること自体は不思議ではない。

 だが結局、大したやり取りもせず放置していたのに、今更何のつもりだ?

 ――が、まあ良い。

 行ってやるとしよう。

 と、思ったので。

 体育館の備品が置いている地下倉庫に続く階段のを降りて、普段ほぼ生徒が近づくことがない薄暗い踊り場に向かい。

 そしてそこで。

 何故か額に右手の人差し指と中指を当て、左腕を手の甲が腰に当たる形で曲げた状態で、不敵な笑みを浮かべたまま止まっている妖と出会った。

 その、呼吸さえしていないのではないかというような、全く動きを感じない様子に。

 颯は「こいつ、学校創立当初からここある魔除けの石像か何かではあるまいな?」と思い。

 近寄りがたい空気(オーラ)を感じたのだが。

 呼び出してきたのがその魔除けの石像みたいな女である以上、無視(しかと)するわけにもいかない。

 とも考えて。

 話しかけるために妖に近づく。

 すると。

 妖の間合いに、颯が入った、その時。

 颯に対して妖が、組んでいた腕のうち右手に持っていた紙を。

 急に力強く、突き出すようにして見せてきた。

 ――一瞬。

 あまりの迫力に。

 颯は魔導書の頁でも見せられて術をかけられるのかと思った。

 が……よく見るとそれは。

 とある地元のイベントの参加者募集のチラシだった。

 しかし。

 そのイベントの内容が。

 自分と。

 そして目の前にいる妖とはまるで似合わないものだったので――


 ☆ ☆ ☆


「御月お前、俺をこれに参加させようというのか?」


 と、颯は妖に訊ねたのである。

 そして、それに対しての返答は冒頭の通り。

 どうやら、御月妖は、夜街颯と、そのイベントに一緒に参加したいらしい。

 のだが。

 颯は何故、自分が彼女から誘われているのか。

 まるで理解できない。

 何せ。

 颯は妖の事を、一年の頃同じクラスだったのと。

 妖っていうやや珍しい名前だった事。

 それに加えて、クラスの中では孤立気味な生徒で。

 休み時間には何故か百年は前に書かれた欧米のポエムを読んだり、タロットカードで占いのような事を一人で行っていて。

 体育祭や文化祭のような行事においては練習や準備はさぼり、当日は欠席するようなヤツ。

 つまり、学校において人付き合いがあまり好きではないという点では自分と同じタイプ……ではあるが。

 あくまでそれ以上は知らず。

 いきなり呼び出されて君意外に私の相手が務まるものなどないだの言われても全く理解できないのであった。

 というか、まず。

 一緒に組んで出場しようというのが。


「そもそも……だ。お前、俺と共に、地域活性化のための女子高生アイドルの大会に出場しようなどと企てるとは……正気だろうな?」


 というところである。

 妖は先に言ったようにクラスで孤立するような、あまり人前に出たり、目立ったりするイメージのない生徒で。

 一方、颯は一人称に俺を使用し、普段から中性的というか、場合によっては男装に見られるような服装をしている事もあって。

 度々男子に間違われたりもするタイプ。

 正直。

 それぞれ別の意味ではあるが、アイドルみたいな可愛いものに向いているとは思えない。

 そう思っている颯は、率直に、


「何だ? お前と俺で、ひらひらフリフリの衣装とか着て、似合うとでも思うのか? ……いや待て、俺は兎も角。貴様はそのあれだ、ゴスロリ系のドレスとかそういうのなら」


 似合う気もする……というか普段から着ている気さえするがな。

 と口にした。

 が、これに対して、妖は、


「誰もあなたにそのような衣装を着てくれとは言っていないわ」


 と返答。更に、


「無論私は着るけど……ね」


 と付け加えた。

 颯としては「それは無論なのか?」と気になるところだったが。

 本題からずれそうなので、そちらは置いておくとして。


「いや、だがアイドルの大会なのだろう?」


 と、再確認する。

 颯の頭の中のイメージでは、アイドル、特に女性アイドルとは。

 ひらひらしたスカートや、何のためについているのかよくわからないアクセサリーとか。

 そういうのを纏ってステージ上で可愛い曲に合わせてダンスをしたりするもので。

 そういう可愛い衣装を、少なくとも俺は着ないとなると、何故相棒として俺を選んだのだ?

 というところである。

 が、当然。

 颯がアイドルにそういうイメージを持っていることは、妖も理解していた。

 だがしかし。

 彼女が颯を呼び出した理由は、颯が可愛い系アイドルに相応しいと思ったからではない。

 妖が颯を選んだ理由、それは、


「我らが目指すのは暗黒偶像(ダークアイドル)よ。可愛い系ではないわ」


 という事だ。


暗黒偶像(ダークアイドル)だと……」


 一応、妖が目指している方向性は理解したものの。

 今度は「何故そんなものを」とか「どうして俺が」辺りが理解できない颯である。

 果たしてどちらから聞くべきか……

 彼女がそう迷っていると、妖の方から、


「まず暗黒偶像(ダークアイドル)を目指す理由。これは私が様々なアイドルを分析した結果、闇の勢力に属するアイドルは人気が高いという結論に至ったからよ」


 と自論を展開。

 ちなみに、この結論は彼女が最初から人気のある中二びょ……いや、闇の勢力に属するアイドルばかりを対象に調べた、思いっきりバイアスのかかったものの上に。

 現実(リアル)ではなく二次元(フィクション)を基準に調べたものなので。

 全くあてにならないものなのだが。

 そんなことは兎も角。

 妖は更に、颯が質問をする間も与えず、


「次にあなたを呼び出した理由だけれど……」


 と言いながら、制服のポケットから写真を一枚取り出し、颯に見せた。

 そして、それを見た颯は。


「な……それを寄越せ!!」


 と、咄嗟に発言し、手を伸ばす。

 何故ならそこには。

 その手の男子が着たいという意味で憧れるような、ファッション――具体的にはコートにブーツ、ネクタイ、白い手袋、シルクハットなど――を身に着けて。

 顔の前に手をかざし、その指の間に目元だけ隠すタイプの仮面を挟んで、更に身体は妙に捻っているという、いかにもそれっぽいポーズを撮っている颯が。

 颯が指の間に挟んでいたマスクと似たようなものを顔に着けた、黒いドレスのようなものを着た少女と一緒に写っていたからだ。

 さて、颯の発言を受けた妖は。

 案外あっさり写真を颯に渡したが、同時に。


莫迦(ばか)ね。当然、データとして我がパソコンの中に保存されているわ。仮にこういう趣味が他の生徒に知られたら……フフッ」


 と口にした。

 さて、これを受けて。

「こいつ俺を脅すつもりか、悪魔め」と思った颯だったが、悪魔呼ばわりしても喜ぶような気もしたので、それを口にするのはやめ、代わりに、


「貴様ァ……何故、俺のこの写真を持っている!?」


 と、やや怒りを込めて尋ねる。


「何故って、私が撮ったからよ」

「な!?」


 撮っただと!?

 と颯は疑問に持つ。

 何故ならば、颯はこういった衣装を着て行うコスプレや、その服装でのダンスなどの趣味は同じ高校の生徒には知られないようにしているからだ。

 なのに何故か、自分と特に接点のなかった妖が俺の趣味を知っている。

 いったいどこから情報が漏れた?

 そう思った颯は妖にその件について、訊ねようとした。

 が、その前に。


「まさかイベントでマスクドシャドウにコスプレしていたのがあなただったなんて……運命に違いないわ」


 と言い出した妖である。


「なるほど……貴様も『マスクドシャドウ』のファンという事か……」


 妖が名前を挙げたキャラクターの登場する作品名を口にして、状況を確認する颯。

 ちなみに、マスクドシャドウとは同名の深夜特撮作品の主人公で、ヒーローにも変身するのだが、颯がコスプレしていたのは変身前の怪盗として活動する際のコスチュームである。

 が、それは兎も角。

 どうやら、妖は別に颯の趣味を知っていて写真を撮ったのではなく、偶然自分の好きな特撮のコスプレをしているレイヤーさんだと思って近づいたら颯だったという事のようだ。

 だが、そうだとしたら。


「おい」

「何よ?」

「貴様、人様がコスプレしているのを勝手に撮るのはマナー違反ではないか?」


 という事になる。

 いや、人様を脅迫をしている段階でマナーも何もないかもしれないが。

 イベントに来ているという事は、こいつだって熱心なファンのはず。

 そういうマナーはちゃんと守ってもらわないとならないだろう。

 そう思ったので、颯は妖にそこを指摘したのだが。妖は、


「何を言っているの? 撮影許可はもらったわよ?」


 と、普通に返した。


「何!?」

「ああ、そうね。その写真を見ての通り、私もコスプレしていたからあの場では気がつかなかったのかもね」

「む? その写真の通り……だと……」


 意外な事を言われた颯は再び自分の持つ写真を見直す。

 そして、自分と一緒に写っているマスクをつけた女子の、唇の形や、艶ぼくろの位置、マスクの穴から見える目の形、更に自分との体格差などを観察し。

 それから再び目の前の妖を見て……。


「この女、お前だったのか!?」


 と、思わず声を上げた。


「フフッ!! どう? 驚いたでしょう?」


 颯の様子を見て笑みを浮かべた妖。

 それに対して、颯は「『フフッ!!』ってお前……」と、あきれて呟いてから。


「お前自身が写った写真では脅迫に使えないのではないか?」


 と指摘する。


「何を言っているの? あなただって、それが私だと気がつかなかったじゃない」

「気がつかなかったのは、あくまで会場ではだろう? お前自身、現地では気がつかなかっただろうが、写真を見ればわかると先の発言で認めていたはずだが?」


 颯は妖がさっき「見ての通り」と言っていたことを踏まえてそう口にする。

 勿論、第三者に見せた場合、実際にはわからない可能性もあるが、ここは妖が見ればわかると思っているならば、それでこの写真を他人に見せる可能性は潰せる。

 そう思ったため、颯はそこを指摘したのだが、それだけでは足りないかもと思い、


「その上、俺を脅迫した時の言葉からして、お前もこういう趣味が同じ学校の生徒に知られては困るのではないか?」


 と念を押し、更に、


「仮に貴様が、俺一人しか写っていない写真を持っていたとしてもだ。俺の手の中にこの写真がある以上、俺の趣味がばれたら貴様も知られることとなるが?」


 と釘を刺す。

 さて、颯の話を聞いている最中は「うう……」とか「そ、それは……」などとうつむいて呟いていた妖だったが。

 颯の話を聞き終えた後、しばらくしてから。


「…………ともよ」


 と口にした。


「何? 友よ?」


 震えながら、何かを呟いた妖に対して、颯は聞き取れた部分から「友? 俺が同じ趣味の仲間という意味か?」と、推測。

 しかし、そんな推測を彼女がした直後。

 顔を挙げた妖は、カッと目を見開いて、ビシッと右手人差し指で颯を指しながら。


「もしもの時は諸共よ!!」


 と宣言した。


「なッ!!」


 何を考えているんだ? こいつは?

 そう、颯が思ったことは言うまでもない。

 颯からしたら「いくら俺をメンバーに加えたいといっても、いくらなんでも必死過ぎないか」というところである。

 ――というか、そもそも。


「落ち着け。そもそも俺はアイドルに加わらないとは言っていない」


 というところである。

 そう。

 妖が颯のコスプレ写真を出し、そのまますぐに脅しにもとれる発言をしたため、写真を使って脅迫したらどうなるかという話題になっていたが。

 そもそも、まだ颯は参加したくないとは言っていないのである。


「――貴様の話、俺は面白いと思っていた……乗ってやってもいい」

「な……なんですって!? それを早く言いなさいよ!!」


 いや、お前が言い出すタイミングを与えなかったのだろうが。

 そう颯は思ったが、それは口にすると厄介なことになりそうなので、やめておき。

 先のアイドル大会のチラシを指さしながら、


「乗ってやってもいい……が、どうやらこの大会は三人以上のグループでの参加が必要なようだが?」


 と指摘。

 これに妖は「え……嘘……」と呟いたが、すぐに、


「し、知っているわよ!! 何とかするわ」


 と返した。

 当然、その様子から颯は「いや、知らなかっただろ、こいつ」と推測し。

 それと同時に「こいつも俺も、一般人にオタバレをしたくないとしたら、何とかして同じような趣味のヤツをもう一人は探さなければな」とも考え。

 更に「だが、こいつに任せておいたら何をしでかすかわからない」とも思ったので。

 結局、しばらく思考した後。


「ふん、残り一人の件は兎も角……だ。我と契約したければ、我がダンス部に入るがよい」


 と提案。

 ここには「自分が話の主導権を取れば、妖も妙な事はしまい」という思惑があるのだが、そんな事には気がつかない妖は、


「ダンス部……あなた、そんなのに入っていたの? っていうか、うちの学校にダンス部なんてあったかしら?」


 と、普通に尋ねた。


「何、まあこんなこともあろうかと……だ」


 妖の質問に曖昧な返事をする颯。

 だが、実のところ。

 この学校では二年連続で部員が三人を下回ると同好会に格下げされ、部費がもらえない。

 その関係で昨年、幽霊部員でよいという形で知り合いの三年生の先輩達に誘われて、颯が入部したのがダンス部であった。

 だが、その三年生二人が卒業した現在、部員は颯一人だがダンス部は存続している形になっているのである。

 ちなみに。

 昨年のダンス部先輩達は趣味の衣装を作るために部費を手に入れようとしていたが、別段部として真面目に活動する気はなく。

 文化祭も「校外でのイベントで使った衣装の展示」という地味なものに留まっていた。

 結果として、昨年の学校の様子ぐらいしか知らない上に、文化祭はさぼっていた妖はダンス部の存在自体に気がついていなかったのである。

 が、それは兎も角。


「まあ、いいわ。その部室ってやつに行ってあげようじゃない」


 と妖が案外あっさり約束したので。

 特に問題なく、颯の計画は進むこととなったのであった。

 

 さて、こうして。

 東京都M市緋衣ヶ原(ひごろもがはら)高校にダンス部という名目で女子高生アイドルグループが結成された。

 ――のだが。

 彼女たちはまだ、この瞬間に戦いの運命を選んでしまった事を。

 この時はまだ、知らなかったのであった。


(続く)

こうしてこちらの緋衣ヶ原高校ダンス部もアイドル大会に向けて活動し始めたのですが。

果たして、彼女たちはどうなっていくのか……。

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