#8ファッションセンス
シスカに見送られて、俺とルシルは教会を目指して家を出た。のだが、
「なあ、教会ってどこにあるんだ?」
「んー、この町の真ん中位かな」
「それって、行くまでに町人とすれ違う?」
「あー、うん。そうだろうね」
マジかぁ...
思わず昨日の町での出来事が思い浮かぶ。
「それ、逃げられない?」
「ん?大丈夫大丈夫」
大丈夫?怯えられてても気にしなければ良い的な?
「はい」
ルシルが服を渡してくる。
「これを着れば良いのか?」
「うん」
こんな服着たところで変わらないと思うんだけど。まあ、大人しく着ておこう。
「この服着たところで何が変わるんだー。って思ったでしょ」
「ああ」
「この服、実はね───」
まさか魔法が編み込まれていて、他人からは違う人に見えるとか──
「オシャレなの」
じゃなかったよ。え?なに?オシャレ?
確かにカッコいい服だけどさ。
これで何が大丈夫なの?
「いや、聞いてくださいよシンヤ君。記憶がなくなる前のシンヤ君ね、壊滅的にファッションセンスなかったの。奇抜ではないんだけど、地味なのばっかり」
「は、はぁ」
だから何だって言うんだ?
「それで、私は何回もオシャンティな服を勧めてみたのでありますよ」
あ、口調が変わった。
「まあ、全て却下されたんだけどね。だけど!今のキミは違のでおじゃるよ!」
今度はおじゃる言葉。
「話は分かった。おーけー、理解した。服を着るのは良い。けど、なんで今?」
服だったら、朝に話しても良かったはずだ。
なぜこのタイミングなのだろうか?
「いやー、服が壊滅的に地味な人で、ましてやその人が怖かったらさ、ね」
ああ、町の人が怖がり易いと。けど、
「今の服、ヘンかな?」
「んーん。全然」
ルシルが首を横に振る。
え、それなら別に着なくても良かったんじゃ。
「私の趣味というかなんというか」
「はぁ、まあ良いや、行こう」
要するに着せたかっただけだと。なんか、めんどくさいからもう良いや。そう思い、俺は歩き出す。
「あ、ちょ、待ってよー」
ルシルが走って後ろから来るので、待ってから出発。
歩き始めてから数分。
「...ひっ」
...いたるところから同じような悲鳴が聞こえて来る。いや、昨日みたいに逃げ出されないだけましか。
しかし、これはちょっと真剣にイメージアップしないとまずいな。怖がられたまま過ごすのは居心地が悪い。
「はい。とーちゃーく」
ルシルの声で現実に意識が帰ってくる。
どうやら、異次元に俺の意識が飛んでいる間に教会についたようだ。
中に入ると、シスターさんが出迎えてくれる。
みたところ、俺達以外に人はいない。
良かった無駄に怯えられなくて。いや、シスターさんも怯えるのでは...!?
「ようこそいらっしゃいました。本日はどのようなご用件で」
と、そんな心配は必要なく、優しい笑顔で出迎えてくれた。ヤバい、泣きそう。
「ステータスボードの作成をしたくお伺いさせていただきました」
「ステータスボードですね。分かりました。ルシル、あなたははどうされますか?」
あれ。ルシルのこと知ってるのか?
「ヒルデさん、今日はシンヤ君についてきただけなの。あ、シンヤ君がお祈りしてくなら私も一緒に」
ルシルも普通に話しているし、知り合いだったみたいだな。
「失礼ですが、二人はどのような関係で?」
「あ、それはですね「私よくここの教会でお祈りしてて、それで仲良くなったの」」
「...はい。その通りです」
いや、そんな食い気味に答えなくても。ヒルデさんちょっと引いてたよ。
「そうなんですか」
「えっと、ではステータスボードをお作り致しますので、こちらの部屋へ。ルシル、あなたはそこで待っていてください」
「あれ、一緒だとダメなんですか?」
「いえ、ダメではありませんがステータスボードは個人情報が多いので。シンヤ様が問題ないのでしたら大丈夫です」
「そうですか。俺は別に良いけど、ルシル、どうしたい?」
1人待たせるのも何か悪いし、とりあえず聞いてみる。
「なになにー、シンヤ君、私と離れるのがそんなに嫌?」
ここぞとばかりにルシルが仕掛けてくる。
だが、ここで狼狽える俺じゃない。
「よし、ヒルデさん、行きましょう」
無視だ。よし、行こう。
「わー!待って、行く!行くからー」
ルシルが走ってこちらに来る。
素直にそう言えば良いものを。
部屋の中に入った俺達は、ヒルデさんがボードを取ってくるのを待っていた。
「お待たせしました。では、こちらのボードに手をかざして頂けますか?」
ヒルデさんが持ってきたのはボードというか、カードだった。ポイントカードやクレジットカード位のサイズの。
「はい。分かりました」
手をかざすと、ボード、もといカードが光だす。
光が一際強くなった後段々と光が弱まり、完全に消えた。
「はい。ありがとうございました。これで完成しました。私は戻りますね。ここでステータスを確認していただいても良いですし、家にお帰りになってからでも構いません」
ステータスは個人情報と言っていたのでそのための配慮だろう。
ヒルデさんが部屋から出ていく。
「どうする、ルシル。ここで見てくか?」
「キミのだから私に判断委ねられてもね...」
「それもそうか、じゃあここで見てくか」
ということでここで見ていくことにした。
まあ、ステータスがSなのは分かってるし、確認といっても魔法適性とか専用魔法とかスキルとか、そこら辺を確認するだけなんだけどね、まあ、俺の才能がここで分かると。
俺は期待を胸に、ルシルは興味津々といったい感じでステータスボード、もといステータスカードを覗きこんだ。
お読みいただきありがとうございます。作者の鈴村嵐夢です。
先日、150pvを達成致しました。
始めて1週間で150人もの方に読んでいただけてとても嬉しいです。
もっと沢山の人に読んでいただけるよう、これからも頑張っていこうと思います。
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