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al fine─アルフィーネ─  作者: 鈴村嵐夢
一章家族の思い
6/23

#6世界の常識

「...ん」


窓から差し込む光がくすぐったくて目が覚める。


「...朝か。ふわぁあ...」


あくびと伸びを同時進行で行う。

コンコンと扉がノックされる。


「どうぞー」


「失礼致します」


ペコリと一礼してセバスさんが入ってくる。


「おはようございます。シンヤ様」


「おはようございます。セバスさん」


昨日のような印象は受けない。立ち直ったか隠すのが上手くなったのか。前者だといいな。


「朝食の準備ができています。シスカ様とルシル様もお待ちです」


「あ、はい。すぐに行きます」


シスカは予想通りというかイメージ通りだけど、ルシルが起きてるのは意外だ。

なんか負けた気分になる。


「では、お待ちしております」


セバスさんが来たとき同様ペコリと一礼して部屋から出ていく。


「行きますか」


着替えが出されていたので着替えて、寝癖を少し直してから食卓へ向かう。


「...おはようございます。お兄様。


「...あ、ぉあよ」


「ああ、おはよ。ルシル、机に突っ伏せるなー」


ルシルに注意をしつつ椅子に腰かける。

イメージ通り、しっかりと座っているシスカ。

それとは対称的にまだ寝惚けているのか、変な挨拶になるルシル。


「突っ伏せてないよー。顎で支えてるもん」


「それでも行儀悪いだろ」


「昨日の夜、シンヤ君もやってたよねー」


「ぐっ、それはほら、昨日は色々あったから。」


実際色々あったし。


「私も色々あるんだよ。色々って罪だねー」


「色々の何割が眠気か言ってみろ」


こういう奴は8割くらいが眠気だろう。


「んー、15割くらい?」


こいつめ、10割越えてきたよ。


「10割越えてるじゃないか」


ついついあきれた声になる。


「あははー。いい突っ込みだねー」


対称的に愉快そうに笑うルシル。


「大体なんでそんな眠そうなんだよ」


「抱き枕がないからねー」


「抱き枕ってそんな可愛いのいるのか」


「...ひゃう!」


顔を真っ赤にして今度は完全に突っ伏せる。

え?なんだよ。俺変なこと言ったか?


「...キミって天然だよね」


「天然って...あっ、ち、違うぞ。抱き枕が必要なルシルが可愛い訳じゃなくて、抱き枕みたいな可愛いものがいるんだなって意味で」


「私、可愛くないの?」


顔が赤いまま、上目遣いで目をうるうるさせて聞いてくる。


「い、いや、それは」


可愛くないわけないだろ!と言いたいところだが言ったら負けな気がするならグッと堪える。


「あー、照れてるー」


...言葉は我慢できていても顔は赤くなっていたようだ。


「...俺の負けだ」


「いえーい。勝利ー」


相変わらず、楽しそうに笑うルシル。ピースサインをこちらに向ける。


「んん。食事を始めませんか?」


咳払いをしてシスカが言う。


「あ、ああ。そうだな、すまん」


「あ、あははー。そうだね」


「それでは、いただきます」


それほど気にしていないのか、シスカが音頭をとって食事が始まる。


食事中は会話がなく、食後。


「お兄様、今日のご予定は」


「特にないよ。といっても何をしていいのか分からないんだけどね」


少し苦笑して伝える。


「記憶がなくなる前のお兄様なら、町周りの魔物討伐や鍛練をしていたのですが」


「そんなことしてたのか。けど、それってギルドとか、冒険者が行うようなことじゃないのか?」


俺が来る前の俺は強かったのだろうか?


「はい。ギルドで依頼を出しています。お兄様は冒険者の資格も持っていましたが、町周りの魔物討伐は自主的に行っていました。素材はギルドに売っていたそうですが」


それなりに強かったっぽいな。


「すごかったんだよー。シンヤ君、魔法を使いながらばったばった敵を倒してくの。ちぎっては投げ、ちぎっては投げ」


「グロテスクなの想像させられるからやめろ、魔法を使ってってことは魔法使いだったのか?」


「いえ、お兄様は剣がメインです。魔法を使いながら剣で斬り倒す。魔導剣士でした」


へぇ。魔導剣士、名前がカッコいい。


「そうそう。凄かったんだよー。闇の死神」


「闇の死神?」


「お兄様が町の人から呼ばれていた2つ名です」


魔導剣士、闇の死神。うん、やっぱカッコいい。


「カッコいいな」


「うわー。自分のことカッコいいって言うのはどうかと思うな」


「違う違う。2つ名がカッコいいっていう意味だよ」


「ですが、あまり自分でその2つ名を出さない方が良いですよ」


「え、なんでだ?」


カッコいいのに。


「その2つ名には2つ理由があります。1つ目は、狙った魔獣を確実に殺すからです。2つ目は、町の人から恐れられてついた、畏怖されてついたからです」


「俺ってどんな人間だったんだ?」


畏怖される程の人間性って...頑張れよ、俺。


「んー、そうだな。無表情なせいで冷たい印象が持たれやすくて、話しかけにくかったからね。まあ、話しても冷たかったんだけどね。それで滅茶苦茶強いとなると、普通の人は、ね」


ルシルの答えに納得。

確かにそれは怖いな。自分のこと(正確には自分じゃないけど)だと分かっていても怖い。


「確かに、それは怖がられるな」


「あはは。今のキミを見てると想像もできないよ」


楽しそうに笑うルシル。


「ん、シスカ?」


遠くを見ているというか、目の焦点があっていないというか、何か思い出している?


「あ、すみません。少し考え事を」


「いや、謝らないでいいよ」


過去の俺については何となくイメージできた。昨日の町での一件もそのせいだな。となると後は。


「魔法とステータス、剣について教えてくれないか?」


多分、俺はこの世界の常識が欠如している。記憶喪失ということになっているので今は良いが、常識については知っておくべきだ。


「魔法はね、こう、体の中からバーっと。ステータスはふんぬって感じで、剣はふんぬって感じだよ」


「ごめん。全くわからない」


バーとふんぬとふんぬ。真顔で言い返す。

2つも同じだ。


「ルシルさん...」


シスカが頭をこめかみに手を置いて呆れた声で言う。


「...ごめんシスカ、説明お願い出来るか?」


「はい。まず、剣についてですが、剣だけでなく、槍や弓矢等もあります。扱い方については武得物によって変わるので割愛しますが、その武器の先人に教えを乞うのが良いとされています」


武器に関しては人に教えてもらうのが良いようだ。良く考えれば分かることだ。某ゲームみたいに全ての武器を一流に扱えるはずがない。


「次にステータスについてです。まずステータスとは自身の運動能力と勘違いされがちですが、各運動能力を何倍引き上げるかの指数です。

ステータスボードは教会で発行できます。

ステータスの更新はその人の行ったことによって行われます。

魔物討伐などですね。

ステータスのランクはS、A、B、C、D、Eの6つです。

Sから順に3倍2倍1.5倍1.25倍1倍0.25倍と言われています。

CとDの違いはほぼなく、Eランクは肥満や運動不足など本人の生活に問題がある方がなります。余りEランクは見かけないですね。

冒険者をするなら最低C、熟練者になってくるとB、Aランクになってきます。

Sランクは格別した強さを誇ることになります。Sランクもかなり少ないですね」


俺流模範解答は正解だったのではないだろうか。いや、正解だろう。反語が絶好調だ。


各運動能力が3倍。つまり足の速さなら、単純計算で50M2.5秒位か?俺は7.3秒だったので大体そのくらいのはずだ。


「ここまで良いでしょうか?」


「ああ」


「では、最後に魔法です。魔法は大気中に存在する魔素に自身の魔力で干渉することで通常ではあり得ない現象を起こします。

魔法は基本的に火、水、風、土、光、闇です。

全てを扱えるには扱えるのですが、人には適性属性があり、使いやすい、使いにくいがあります。

魔法を使うにはその魔法の現象の想像と魔法名、詠唱で発動する2つがあります。

想像と魔法名の方が発動が早く、威力が高くなります。一方詠唱は成功率が高い代わりに発動が遅く、威力が低いです。

実戦で使われるのは前者の方法の方が多いですね。

専用魔法と言うのもあり、適性がとても高い属性があるとその属性の自分だけの魔法が発現することがあります。発現したとしても1人1つですね。

他にも発現の仕方があるようですが、これが一番多いようです。私も詳しくは分かりません。

因みに、そこで笑っているルシルさんも専用魔法を持っています」


「マジ?」


「マジだよ♪凄いでしょー」


「ああ、凄いな」


「まあ、キミも持ってるんだけどね」


「はあぁぁ!?」


...何故だろうデジャブを感じる。

シスカが世界観についての説明をしてくれる回でした。今後重要になってくる事が結構書いてあったりします。Twitterにて更新情報を呟いているのでフォローしておいて頂けると分かりやすいと思います。作者ページにTwitterリンクが貼ってあるのでそこから跳んでいただけると嬉しいです。感想も貰えるとうれしいです。

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