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前奏曲『闘争』

 人体錬成薬の存在が世間の知る所となり一週間。 好き放題やっていたスキル保持者達はまだ活動していたが、その数は激減していた。 政府はチャンスとばかりにスキル保持者に関する法案を可決した。 内容はスキル保持者達に対してマイクロチップを埋め込み管理し、その行動を制限するといった物だった。 崩壊しかけた世界は落ち着きを取り戻し、仮初めの平和が地上に戻った。




 あの日、ダンジョンの攻略報酬があんな奇跡を起こせるアイテムだと知った時、アパートの裏庭ダンジョンを攻略しようかと本気で考えた。 だが、人知れず自らを鍛える事が出来るダンジョンを失う事のほうがデメリットが大きい、自分を無理矢理、納得させコツコツとダンジョンに潜っていた。

 二階層の魔物の全てがユニーク個体に変わってから時々、一階層でも巨大蟻のユニーク個体を見掛ける様になりダンジョンのマップが変化していた。 今まで一階層には宝箱がなかったが、罠付きの宝箱が一つ出現する様になった。 二階層では宝箱が複数見つけることもあり、様々なアイテムを得る事が出来た。 その中には部位欠損を治すアイテムをゲットしたが、ちょっとした制限がある様で同じアイテムでは無さそうだった。

 




名前 間崎聖人(かんざきまさと)


称号

生還者☆☆☆ 964/1000   効果 大

ファイアーマン 39812/50000 効果 大


スタミナ  100/100


スキル

光源 火 地図 自動書記 鑑定 固定 遅延 空間収納 水


スキルポイント   21990P



 ユニーク個体を乱獲し、罠付き宝箱を大量に撃破したことで一気にポイントは増えた。 今日の日課を終えた夜、ダンジョンから地上に戻り自宅に帰ろうと裏庭から玄関に向かって歩いていると、アパートの塀を超える巨大な人影を発見した。 アパートのコンクリート塀は2m程で、それを超える人影など普通じゃない。

 両手に使い捨てライターを持ち、警戒しながらアパートの外に出た。すると、そこには顔が豚に似て、肉はたっぷりと脂が乗っていそうな腹をしていた。 そう、絵物語に出てくるオークにそっくりだった。

 オークは俺を見つけると叫びながら突進してきた。 2mを超える巨体の突進、そんな物を真面に受けると痛いので全力で横に飛んだ。 転がった衝撃で左手のライターを手放してしまったが、オークから目を離さずに落ち着いて右手のライターのスイッチを入れた。


 称号の効果が大になり小太刀程の長さにまで強化された使い捨てライターの炎はアニメ等に出てくる光る剣に似てきた。

 

 炎の小太刀を発現するが、オークはそんな物は関係が無い、とばかりに再度突進してきた。 一度目は奴の巨体に慌てたが、二度目ともなると慣れてきた。 その巨体を生かした突進は破壊力はあれど、スピードはマッチョネズミ程では無かった。

 二度目の突進は冷静に回避し、すれ違い様に奴の右足を炎の小太刀で斬りつけると、何の抵抗も無く奴の片足を斬り飛ばした。 片足を失ったオークは派手に転び、痛みに叫びながらもがいていた。 ゆっくりとオークに近づきもう片方の足を切り落とし、絶叫し動きを止めた右腕を斬り飛ばすと、反対側へ歩いていき残った左腕も切り落として最後に首を落とした。


「ふぅ……まさか、街中で魔物と戦うことになると思わなかったな。 あ! せっかく鑑定が有るのに見るのを忘れてた。 通常のオークがあんな巨体か知らないけど、きっとレア物に違いない」


 そう思いステータスを確認しようと視線を下に向けると、


「あれ? オークが消えない……地上だから?」


 バラバラにしたオークの足に鑑定を使った。




名称 オークのモモ肉


状態 生(食肉)



「お、食えるのか。 オークと言えば豚肉か。 そうとわかれば!」


 切り落としたオークの腕と足と胴体を空間収納に入れると、アパートの裏庭に戻った。 空間収納からホームセンターで購入したキャンプ道具を取り出し、手際よく準備して薪に火をつけた。

 テーブルと椅子も用意し、オークのモモ肉を取り出してテーブルに置くと、出刃包丁で焦げている部分を切り落とし、大腿と下腿に分けて下腿は空間収納に戻した。 残った大腿の皮を剥ぎ取り、焚き火台を挟む様にY字の棒を二本地面に差して、そこオークのモモ肉を引っ掛けた。

 くるくると肉を回転させながら焼いていく。 時折、薪を足して火力を調整し、強火の遠火でゆっくりと火を入れていくと香ばしい匂いが食欲を刺激した。 テーブルに缶ビールとタレを入れた皿と以前にコンビニで買っていたおにぎりを空間収納から取り出した。



 マンガ肉……それは、一度でいいから食べたいと思うファンタジー食材。 それが目の前にある。 肉から脂が滴り落ち、いい感じに焼けてきた。


「では、いただきます」


 しっかりと焼き目のついたオークのモモ肉にかぶりついた。 肉から溢れる肉汁が口一杯に広がり、濃厚な肉の旨味が口の中で爆発した。


「うまいな……」


 缶ビールを喉に流し込む。 苦味と炭酸が身体の緊張をほぐしていく。 ナイフで一口分を切り取り、タレにつけおにぎりと共に食べた。


 食事を終えて一服し、地上で魔物と遭遇した件について考えた。 恐らく駅前のダンジョンが溢れたのだろう、人がいなくなってから約2ヶ月が経っている。

 魔物を間引きに行かないとこの辺りが魔物で一杯になるが、自衛隊は……無理だろうな。 まだ地上の混乱は続いているし、各地で国民を鑑定しスキル保持者にマイクロチップを埋め込むのに忙しいみたいだ。 と、なると俺が行くしかないか。

 だが、外に行くなら自衛隊に気を付けないと、スキル保持者だとバレるとまずい。 何か手立てを考えないと……





 自宅に戻りニュースを見ると、各地で魔物がダンジョンから溢れ地上に出てきているらしい。 スキル保持者と自衛隊が協力し対処しているが、広範囲に被害が出ていて対応が後手に回り被害が拡大していた。



 ダンジョンは攻略しなければならない。 それは人々の共通認識となった。




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