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性善説と性悪説

 会社を退職してから1ヶ月が経ち、退職金はちゃんと入金されていた。 あれから毎日ダンジョンに潜り、収納スキル獲得に向けて日課をこなしていた。

 そんな中、昼間のNEWSで自衛隊のダンジョン攻略が追い付かないくらいダンジョンが増え、手付かずのダンジョンから魔物が外に溢れ出てきたらしいという情報があった。 ダンジョンの周囲に住んでいた住人に被害が出てしまい、ダンジョンの危険性が認識され、各地で都心部に引っ越しをする人々が増加したそうだ。

 その流れは都心から少し離れたこのアパートにもやってきた。 町内放送で最寄り駅の近くにダンジョンが発見されたが、自衛隊の派遣はしばらく無理とのことで、周辺住民に避難勧告が出されたと発表があった。 それを聞いた住民達は次々と引っ越していき、今日最後の住人が引っ越していった。

 これでゆっくりダンジョンに引きこもれると思っていたが、そう事は上手く行くものではなかった。 最後の住人を見送った大家から話があると言われた。


「忙しい所をすまんの。 間崎さん」


「いえ……それで、話とは?」


「そうじゃな……今日で間崎さん以外の住人が引っ越したの」


「はい」


「ワシとしても家賃収入が無くなるのは痛いのでな、色々と募集はしたんじゃ。じゃが、不動産屋からはダンジョンが近くにある物件は人気が無いと言われ借り手がつかんのじゃよ」


「そうですか……」


「それでのぉ先日、国からこのアパートを土地ごと買い取ってもいいと連絡があったのじゃ」


「そうなると、私は出て行かないとダメなんですか?」


「すまんの……ワシとしては家賃収入さえあればこのまま居てくれて構わんのじゃが」


「国はいくらで買い取ると?」


「200万じゃ」


「え、安すぎません?」


「そうなんじゃよ、残念なことにこの周辺はもう価値が無いんじゃ。 事故物件。 いや、事故地区じゃな」


「事故地区……」


 まずい、ここを追い出されると裏庭のダンジョンの存在がバレるな。 なんとか、大家を説得しなければならない。


「あ、あの大家さん! アパートの部屋を全部借りるので国に売るのを待って頂けませんか!」


「全部って、間崎さん……うちとしては家賃収入があるなら構わないが、それなら間崎さんがこのアパートを買うかね?」


「私がですか?」


「ああ、このアパートの価値はほとんど無くての。それどころかアパートの解体費用をこっちが払う事になっておるから安いのじゃよ」


「では、いくらで譲って頂けるのですか?」


「そうじゃな、税金等の費用も掛かるからの。 400万でどうじゃ?」


「400万……」


 退職金が出たとは言え400万は痛い出費になるし、税金や維持費等にいくら掛かるかわからない。 だが、このアパートが自分の物になるならダンジョンを隠しやすくなるな。


「分かりました。 400万で買わせて頂きます」


「そうかそうか、ありがとう。 後日、必要書類等用意してまた来るよ」


「はい」


 大家はニコニコして帰って行った。 収入が無いが一年くらいはダンジョンに引きこもれるくらいの金は残る。 ダンジョン産のアイテムの公式の買い取りはまだしてないが、そのうち始まるらしいのでそれまでひたすら潜ってアイテムを集め売ればいい。 目標を定めたので、早速ダンジョンに潜り日課をこなした。






 その日の日課を終えて、ネットサーフィンを楽しんでいると気になる動画を見つけた。 タイトルは『スキルについて』だったが、いつものように中身のペラペラな動画だと思いスルーしかけた。 だが、その再生回数に手が止まった。


「再生回数、1000万超え……」


 恐る恐るその動画を再生すると、そこに映っていたのは高校生くらいの男女30人ほどだった。 中央にいた少年が徐にスキルについて話を始めた。

 内容は地上でもダンジョンと同じように使用できますよってことだった。 動画の後半で二人の少年が前に出てくると、お互いに距離を取りスキルを実演始めた。

 1人の少年が炎や氷、雷を立て続けに放ち、もう1人の少年はその手に黒い剣を生み出し迫り来る炎や氷、雷を切り払った。

 動画を最後まで見ると、深いため息がでた。 少年達がどう言うつもりで動画を上げたのか理解することが出来ない。 ただ、この動画が世界に与える影響を考慮していないことは明白だった。 無数にあるスキルが地上でも使えるのだ、その恩恵は計り知れない。

 徐に立ち上がりベランダに出てタバコに火をつけ、一服し今後の展開を考える。 だが、既に賽は投げられた。 動画は世界に拡散し、地上でスキルが使えるのが周知の事実となった今、この瞬間にも混乱は起き始めているかも知れないのだ。

 今までの世界でも強盗や強姦、殺人や万引き等の犯罪が起きていた。 そういった事を平気で出来る者達がスキルを会得した場合、犯罪に利用するだろう事は想像に難くない。 そういった事を考えた事もない人でも、スキルを得た時に今まで抑圧されていた物が暴走してしまう事もあるだろう。




 部屋に戻りステータスを確認する。 二階層で巨大蟻は全てユニーク個体になっていて、ポイントと撃破数を稼ぎたい放題になっている。 恐らくユニーク個体を生み出しているユニーク個体の女王蟻がいるのだろう。 だが、二階層をくまなく探したが女王蟻が見つからなかった。 一定間隔で二階層に兵隊蟻のユニーク個体を送ってくるみたいで、称号の強化が終わるまで三階層のことは考え無いことにした。

 



名前 間崎聖人(かんざきまさと)


称号

生還者☆      157/200 効果 小

ファイアーマン 18755/20000 効果 中


スタミナ  100/100


スキル 光源 火 地図 自動書記 鑑定 固定 遅延


スキルポイント    8000P






 今は力をつける事を優先し、情報を集め事態の推移を見守るしかない。 俺にはまだ力が無いのだから……


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