エピローグ
前半は由依視点です。
聖人が庭のダンジョンに潜ってから3日が経っていた。まだ聖人の反応は地下にあった。お母さんや茉子姉さんは極力普段通りを装っていたが、頭の中は聖人の事が心配って感じがした。絵里香姉さんと私はいつもの様に学校で退屈な授業を受けて、普段通りに友達と過ごしていた。
学校から帰ってきてから晩御飯の用意をして、3回目の聖人のいない晩御飯を始めようとしていた時だった。今まで黙っていた絵里香姉さんが声をあげた。
「やっぱり、お兄さんが心配だよ!ダンジョンに行こう!」
「絵里香……」
お母さんは仕方がない子ね。と、いう感じだったが、我慢の限界に達した姉さんは椅子から立ち上がった。
「大丈夫。聖人は無事。何処も無くなっていない」
「由依……あんた、まさか!」
「ん、全身に印つけた」
「だから、あんた1人冷静だったのね。ったく、それならそうと言いなさいよね」
「ねぇ、由依。印をつけたって、スキル?」
恐る恐る茉子姉さんが聞いてきた。
「ん、聖人の各部位につけた。何処かを失う程の傷を受けたらすぐ分かる」
「由依、それってスキルを使ったストーカーじゃ……」
「大丈夫。聖人には絶対バレない」
「そう言う事じゃないんだけど」
晩御飯を食べ始めようとしたその時、今まで地下にあった反応が地上から反応がきていた。
「聖人!帰ってきた!」
「「「え!」」」
私は一目散に聖人の所に走った。スキルで酷い怪我を負っていないのはわかっていたが、小さな傷までは分からないから無事を確認したかった。
そして、庭のダンジョンの入口の前に立つ聖人を見つけた。今まで滅多に怪我を負わない聖人。でも、着ている服は傷だらけだった。それが、戦いの激しさを物語っていた。
「聖人!」
彼を見つけた時、押さえていた感情が爆発して思わず彼の胸に飛び込んでいた。
~~~~~~~~~~~
あれから無事コアを取り出しアイテムをゲットしたが、思っていた以上に消費していたみたいで、コアの所で寝てしまった。目が覚めた時にはだいぶ時間が経っていて、思わず日付と時間を2度見してしまった。急いでダンジョンを脱出したが予定より遅くなってしまい、彼女達に要らぬ心配を掛けたかも知れない。
ダンジョンの入口を出ると、僅かに夕陽が差し込む夕暮れ時だった。しばらく立ち尽くしているとこちらに向かってくる反応があり、家の方から走って来たのは由依だった。
「聖人!」
走って来た由依が目の前で止まらずに抱きついてきた。うーん、そこまで心配させたのは悪かったな。と心の中で謝罪した。
由依の後ろから朱音さん達が慌てた様子でこちらに向かって来て、俺の姿を確認すると更に加速して走ってきた。
「お兄さん!お帰り!」
そう言って絵里香もこちらに飛び込んで来たので空いている方の腕で受け止めた。手前で立ち止まった朱音さんと茉子ちゃんはやれやれといった感じで見ていた。
「お帰りなさい。間崎さん」
「ああ、ただいま」
「聖人さん。成果は?」
「うん。無事に終わったよ」
「そうですか!良かったぁ」
「間崎さん、ありがとうございます。これで安心して暮らす事が出来ます」
「そうだな。これで安心して旅に出ることが出来る」
「「「「え?」」」」
「言ったろ?大事な話があると」
「え、ええ」
俺の突然の告白にやっとの思いで返事をしたのは朱音さんだった。
「お兄さん、ここが嫌いになったの?」
「いや、むしろ前より好きになっている」
「なら、なんで!」
「前回のダンジョンマスターはなんとかなったよ。でも、今回の守護者は間一髪で撃退出来たが、初めて死を覚悟したよ」
「あれだけ強いお兄さんでも?」
「十分強くなったと思ったがまだまだ足りないみたいでな」
「だから、外に行くの?」
「ああ、もっともっとダンジョンを攻略し様々なスキルを習得し強くなって帰ってくる」
「私も一緒に行く!」
「聖人、私も」
「間崎さん、私達も一緒に」
彼女達は一様に決意を表したが、
「ダメだ」
「どうして!」
絵里香が噛みついてきた。
「皆には此処を守って欲しいんだ。此処は俺が帰ってくる場所だから。それに、周囲のダンジョンは潰したが、日々新しいダンジョンが生まれるんだ。それはどうするつもりだ?」
「そ、それは……」
「自警団だけでダンジョンを攻略出来るのか?それに、絵里香と由依には学校があるだろう?せっかく学校に行ける様になったんだ。卒業くらいはしとけ」
「聖人、帰ってくる?」
「ああ、必ず帰ってくるさ。言ったろ?此処は俺が帰ってくる場所なんだよ」
「ん、なら待ってる」
「ああ、頼む」
理解を示してくれた由依の頭を撫でた。
「毎日、連絡してくれる?」
「おいおい、毎日は勘弁してくれ。ダンジョンに潜っていたら無理だから」
「なら、出来るだけ連絡して。それなら我慢する」
「ありがとう」
そう言って絵里香の頭を撫でた。
「聖人さん……」
「茉子ちゃんには自警団の訓練を頼みたい。厳しく鍛えてくれ」
「わかりました。聖人さんが帰ってくるまでに立派な自警団にしてみせます!」
目に涙を浮かべながらもやります。と、言ってくれた茉子ちゃんを抱きしめた。
「間崎さん、どうしても行かれるのですか?」
「ああ」
「まだ、私達は貴方に恩を返せていないんです。自警団だってまだ……」
「心配するな。必ず帰ってくる。その時までに報酬を決めてくれたらいいさ」
「でも……」
「すまない。朱音さんには負担を掛けるが、自警団とこの子達を頼む」
未だに不安な表情をしていた朱音さんを抱きしめた。
「それに、旅に出るって言っても今すぐじゃないよ。とりあえずお腹すいた」
そう言うと腹の音が盛大に鳴った。
「ぷっ」
思わず吹き出したのは絵里香で、釣られる様に一家に笑いが起きた。
「もう……仕方がない人。さぁ、皆で晩御飯にしましょう」
「「「はーい」」」
朱音さんに明るい声が戻り、こうして高嵜一家との最後の晩餐を楽しんだ。
アラサー×ゲーマー+ダンジョン=主夫!?如何でしたでしょうか?これにて本編は完結となります。
一汁三菜
追記 二年間、御愛読ありがとうございます。ちょっと闘病中の為、時間が有り余り過ぎて再編集と外伝を切り離してこの作品は完結とします。別の物語を書きたいなあって思っています。




