救助~命の大切さ(茉子視点)
お母さんと由依が大技を使い周囲の安全を確保している間に絵里香と手分けして救助者に応急処置を施していった。アイテムポーチから傷薬を取り出し、切り傷や出血している部分には傷薬を塗り、内臓が損傷していそうなら傷薬を飲ませた。絵里香には傷を塞いだ人が歩ける様に包帯や添え木などを施して貰った。
自警団のリーダーの所に向かうと脇腹を負傷したみたいで一応包帯を巻き止血はしているようだった。
「お久しぶりです。奈津美さん」
「あ、あんた達だったのかい」
「はい、間崎さんも一緒です」
「そうか……あいつも来ているのか」
「傷は脇腹だけですか?」
「ああ、止血はしているから大丈夫だ」
「でも、包帯を変えないと……」
「大丈夫だ。それよりも退路を……っ!」
急に立ち上がろうとして脇腹の痛みでふらついたが、それを支えたのはお母さんだった。
「大丈夫?奈津美」
「あ、朱音」
「まったく……無理をしないの」
「だ、大丈夫!ちょっとふらついただけだ。早く退路を」
「それなら大丈夫、残っている魔物はもう居ないわ」
「魔物は居ないって……あれだけ居た魔物は!?」
「全て討伐したわ」
「そんな訳が……」
奈津美さんは未だに信じられない様だったが、立ち上がって周囲を確認するとようやく理解する事が出来たみたいだった。
「ね?大丈夫でしょ?」
「あ、ああ、だけど……あいつは?」
近くに聖人さんの姿が無い事に気が付いたみたいで
「聖人さんならこのダンジョンを終わらせる為に、下に向かいました。ですので、私達は脱出します」
「あいつは1人で行ったのか!危険過ぎる!」
「大丈夫です。寧ろ、私達が一緒に行く事で聖人さんの足を引っ張ります。だから」
「そんな……」
「大丈夫だから、奈津美。帰りましょう?皆を地上に帰さないと、ね?」
お母さんが横に寄り添い脱出を促した。絵里香を先頭に2階層に上がると先ほど討伐した魔物の死体が残っていたので新たな魔物は生み出されていなかった。だが、1階層に上がると魔物の死体が消え、新たな魔物の群れが生み出されていた。
「絵里香!道を切り開いて!」
お母さんが檄を飛ばし、先頭の絵里香が魔物の群れに突貫した。絵里香が切り開いた道を由依とお母さんが広げ、一気に出口まで駆け抜けた。
「茉子ちゃん!お願い!」
私はその場に残り敵を引き付ける事に集中した。先頭にいた絵里香がダンジョンの入口で近づいてくる魔物を排除し、由依とお母さんが救助者と共にダンジョンを脱出した。しばらく絵里香は入口付近で戦い続けていたが、救助者を運んだ由依とお母さんが合流して私の所まで来てくれた。それからは周囲の魔物を掃討してダンジョンを脱出した。
ダンジョンを脱出すると、入口付近に仮設の救護テントが設置されていた。無事救出できた自警団の人達の治療にあたっているそうだ。比較的軽症だったリーダーの奈津美さんに会いに行くとテント内が緊迫した雰囲気だった。
「ダメ!傷が治らない!」
「こっちの傷薬を使って!」
「これも効かない!他の傷薬は無いの!?」
中にいたスタッフが慌ただしく動いていて、状況が掴めなかった。テント内からスタッフが出て行ったので、奈津美さんが寝かされたベッドに近づくと状態の深刻さを理解出来た。
「な、奈津美さん!ちゃんと止血したって!」
「ふふ……ごめんなさい。皆にこれ以上迷惑を掛けたくなかったの」
「奈津美……貴方」
「朱音、ありがとう。皆を助けてくれて」
「貴方も助からないと意味ないじゃない!」
奈津美さんの傷は脇腹だけだった。でも、その傷は周囲の細胞を犯し、内臓にまで細胞の壊死が広がっていた。
「茉子ちゃん、ポーチからありったけのアイテムを!」
お母さんに言われてアイテムポーチから一番強力な傷薬を取り出し、奈津美さんの傷にぶちまけたが、少し細胞の再生が始まったと思ったらすぐに紫色に変色し腐敗していった。
「これは毒!?」
「多分ね……あの魔物の中に一体に変わった奴が居たの。そいつに脇腹に食いつかれて、すぐに頭を潰したんだけどね……」
「どうしよう、お母さん!薬が効かないよ」
アイテムポーチにあった毒を中和する薬を使っても、毒の進行が少し遅くなるだけで回復の兆しは見えなかった。ダメ元で部位欠損治療薬を使うと、壊死した細胞が再生されていき腐った内臓も元に戻り綺麗な状態になった。
「奈津美!治ったわ!」
「お母さん!やったね」
だが、次の瞬間、再び脇腹が紫色に変色し始めた。
「どうして!」
「さっきから……こうなんだ。どれだけ高い薬を使っても治らないんだ」
「そんな……」
奈津美さんの脇腹には食いつかれた跡があり、そこから毒が広がっていた。
「そうだ!聖人さんなら」
「間崎さんはダンジョンを終わらせに行ったの。間に合うかどうか……」
「お母さん!諦めちゃダメだよ。まだ薬ある!聖人さんが戻るまで奈津美さんを生かさないと」
「そうね。やってみましょう」
聖人さんが戻るまでが私達の戦いだ。




