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アラサー×ゲーマー+ダンジョン=主夫!?  作者: 一汁三菜
アラサー×ゲーマー+ダンジョン=主夫!?
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訓練用ダンジョン

 自警団の事務所に着くと事務所の前には仮設の救護テントが張られていた。事情を聞くために朱音さんが近くに居たスタッフに声を掛けて詳しい事情を伺える人を教えて貰った。その人物はダンジョンから脱出してきた斥候役の人で、今は救護テントで治療中だそうだ。スタッフに案内を頼みテント内に入ると、沢山のベッドに傷ついた団員達が寝かされていて、その痛みにうめき声をあげていた。軽症の人から重症の人まで様々で、腕を失った人や膝から下を失った人もいた。あまりの悲惨さに後ろからついて来ていた志保が目を背け声なき悲鳴を上げた。


「目を背けるな。これは君が潜りたいと言ったダンジョンの現実だ」


「うぅ……」


 その場でうずくまり泣き出した志保を隣に居た由依が優しく抱きしめ、ゆっくりと立たせた。

 スタッフに案内され事情を聞ける人がいる区画まで来ると、


「患者の容態は良くありません。出来るだけ短くお願いします」


 スタッフはそう言って立ち去った。仕切られた区画に入ると、目の前のベッドに寝かされていた人は生きているのが不思議な位の傷を負っていた。その人物を見た朱音さんは側に駆け寄ると、


「理沙……」


「あ、あかね。来てくれた、のね」


「ええ、間崎さんも一緒よ」


「良かった……お願い、リーダーを……奈津美をお願い、あの子は責任を感じて、ダンジョンに」


「わかってる。もう、喋らないで……間崎さん、お願いします」


「ああ、任せろ」


 俺はベッドに近づき包帯の巻かれた腕に右手で触れると、意識を集中させた。


「まずは傷を塞がないとな」


 イメージを固める。彼女の傷を塞ぐイメージを。


 以前ダンジョンで手に入れた生命の指輪。なかなか使う機会がなく効果を確かめる事が出来ずにいたが、高嵜一家と様々なダンジョンを攻略した際に使用する事があり、その効果の高さは実証済みだ。


 右手の指輪が光を帯びると彼女の身体が光に包まれた。しばらくすると光が収まり先ほどと、何も変わらない彼女がそこにいた。だが……


「あ、あれ?痛みが……」


 先ほどまで苦しそうにしていた彼女だったが、どうやら無事に傷は塞げたようだ。しかし、失った腕や太ももの大部分を失っている足は元には戻っていなかった。指輪の効果は傷を塞ぎ、血を止めるので限界だった。


「さてと、傷を塞いだので次はこいつだ。良く見ておけよ、君が踏み込む世界の奇跡を」


 入口の近くで見ていた志保に見える様にストレージから小さな試験管を取り出し、ベッドに寝かされた彼女に試験管の中身をぶちまけた。すると、眩い光が彼女に包まれた。そして、しばらくして光が収まると、失った腕や足が元通りになっていた。


「これって……」


 その姿を見た志保は驚きを隠せなかった。そして、元通りになった自分の姿を確認した理沙は、嬉しい反面その行為に理解が出来なかった。


「良かったの?私に貴重な薬を使って」


「ちゃんと対価は貰うさ、朱音さんにな。それに、この子に見せる為でもあったからな。気にするな」


「そう……」


「傷は治ったがしばらくは寝てた方がいい。で、早速で悪いが救助対象はダンジョンの何処にいる?」


「3階層に降りてすぐの部屋にいるはずです。訓練に使ってましたが、ほとんど探索が進んでいません」


「そうか、出来るだけ救助は早い方がいいだろうからな。今から向かうよ」


「お願いします」


「ついでで悪いんだが、この子にダンジョンであった事を話してやって貰えるか?探索者になりたいそうだ」


「それは構いませんが……」


「頼む。さて、君はここで待っているんだ」


 状況の変化について来れていないようで戸惑いを隠せていなかった。


「わ、わかりました」


「良し。ダンジョンに行くか」


「「「はい!」」」


「ん、行ってくる」


「気を付けてね。由依……」



 救護テントから出てダンジョンに向かった。自警団のダンジョンは事務所から少し歩いた場所にあり、ダンジョンに着くと入口の周りを数人の団員が囲んでいた。その中の1人が朱音さんに気が付くと声を掛けてきた。


「あ!朱音さん!来てくれたんですね!」


「ええ。皆、大丈夫?」


「はい。何人かは負傷しましたが、地上に溢れた魔物は全て討伐し入口まで押し込みました。でも……そこから先には進めていません」


「わかったわ。間崎さん、どうしますか?」


「そうだな……ダンジョンの入口付近に人は居ないんだな?」


「はい。魔物の層が厚くて進めなくて、こうして入口で塞き止めるので精一杯でした」


「なら、やりようはある。任せてもらおうか」


 入口に近づき中を覗くと、夥しい数の爬虫類の瞳がこちらを見ていた。空間収納から数本の使い捨てライターを取り出し爆破スキル(火と固定と遅延)を発動し投げ入れた。入口から離れると、その行動を理解できない団員達は怪訝そうな表情をしていた。次の瞬間、大地を揺らす凄まじい衝撃と爆発音が聞こえ、ダンジョンの入口から煙が上がってきた。もう一度、入口に近づき中を覗き反応を探ると動いている個体は確認出来なかった。


「良し、入口は掃除した。突入する」


「「「「はい!(ん、)」」」」


「俺が先頭、いつも通り魔物は俺が処理する。次に茉子、その後ろに朱音さんと由依。殿は絵里香だ、わかっているな?」


「うん!救出したら私が先頭になって脱出したらいいんだよね?」


「ああ、朱音さんと由依で救助者を挟む。そして、魔物が追ってきたら殿の茉子が足止めだ」


「わかりました」


「地上に救助者を運んだら再度突入し茉子と合流して撤退しろ。俺の事は気にしなくていい。行くぞ!」


「「「「はい!(ん、)」」」」



 ダンジョンに突入する俺達を見て自警団の団員達は呆気に取られていた。


「一体何者なの?間崎って人……」









 ダンジョンの1階層に踏み入れると、ライター爆弾の効果で周囲に魔物の肉片が飛び散っていた。1階層は既に地形が変わっていて2階層に繋がる階段まで一つの大きな部屋になっていた。爆発の範囲から逃れた数体のユニーク個体がゆっくりとこちらを伺う様に近づいてきていた。奴らは地を這う爬虫類のトカゲに似ていた。時間が惜しい為、指先から『ウォーターブレード』を発動し生き残りを片っ端から切り刻んだ。

 2階層も同じく1つの大きな部屋へと変化しており、この状況だと、3階層も変わっていて救助者の周りは魔物で囲まれているかもしれない。襲い来るトカゲの群れを両手から『ウォーターブレード』を発動し、部屋の端から端までを切り刻み、階層までの道を切り開いた。

 3階層に着くとやはり部屋は一つに変わっていた。だが、今までとは状況が違い、部屋の中央へと大量のトカゲが群がっていた。恐らくその中心に救助者がいるのだろう。誤って結界ごと切り刻むといけないので『ウォーターブレード』でなく『チェインボルト』に切り替えた。



 『チェインボルト』は電撃が蛇の様に次々と魔物に襲い掛かり、対象を感電させ焼き殺す。



 『チェインボルト』に焼かれたトカゲ共から肉の焦げた臭いと白煙が漂っていた。腰に差していた木刀を抜き、闘気を重ね掛けし、トカゲの死体を木刀で吹き飛ばしながら群れの中心に向かって行った。

 邪魔な死体を退かすと、薄い膜の様な結界を見つけた。結界の周りを取り囲み安全を確保すると結界が解かれた。結界の中には、脇腹から血を流している自警団のリーダーと手足を失った団員達が床に寝ていた。早速、応急処置をして撤退しようとしたが、流石に数が多すぎて群れの奥までは『チェインボルト』が届かなかった見たいで、無事な個体が仲間の死体を踏み越えながらこちらに向かってきた。


「由依!朱音さん!とりあえず邪魔な奴らを吹き飛ばす!」


「ん、わかった」「了解です」


 応急処置を茉子と絵里香に任せて、正面に俺、左右に由依と朱音さんと立ち、障害を取り除く事にした。



「穿て『流星光(シューティング・レイ)』」


 左手に立った由依は極限まで高めた闘気を圧縮し一本の矢を形作った。その矢を使い馴れた和弓につがえ解き放った。一条の光となった矢は次々と群がるトカゲを貫通し、その余波で周囲を螺旋状に切り裂いた。



「貫け『火炎砲(ボルカニック・バスター)』」


 右手の朱音さんは近接防衛用に装備している短槍を銃の様に構えると、周囲の熱を穂先に集め、空間に歪みが生じ、力が決壊する直前に集まった熱を解き放った。集まった熱は熱線(レーザー)となり、群がるトカゲと壁となっていたトカゲの死体ごと焼き払った。


 左右の敵を掃討したので残るは正面のみとなった。


「さて、応急処置が終わったのなら脱出してくれよ」


 そう言い残し、正面の敵に向かって歩いて行った。


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