親子丼~日常と新たな食材ダンジョン
寒さが和らぎ爽やかな日差しが降り注ぐ、新しい生活を始めるには良い季節。時期は春、高校に復学した絵里香と由依はもう一度同じ学年を始めていた。大学生だった茉子ちゃんは父親が亡くなった時に大学は辞め、探索者になることを決めたそうだ。
絵里香と由依が学校に行く様になったので今までのローテーションを変更して、野良ダンジョンは俺との修行で1人でもダンジョンを攻略出来る様になった茉子ちゃんとその補佐に朱音さんを付け2人に任せた。2日に一度新しく生まれるダンジョンをすぐに踏破し、地区の安全を保っていた。
俺は近隣の野良ダンジョンは潰したので、その日の午前中に朱音さんと庭のダンジョンに行ったら、次の日は茉子ちゃんと山のダンジョンに交互に潜りながら、ネットで離れたダンジョンの情報を集めていた。集めていたのは食材になりそうな魔物が出現する目撃情報だ。そろそろ在庫が心許なくなってきたオーク肉と猪肉や馬肉だけなので、料理のレパートリーを増やす為に牛や鳥等の情報を探していたのだ。なかなかそういった情報は無く、だいたいはゴブリンやコボルト、オーガ等食材にならない魔物ばかりだった。
そんな日々を過ごしていると、1件のある魔物の情報がヒットした。それは鶏より大きく、尻から蛇が生えている魔物コカトリスの目撃情報だ。
「コカトリスか……こいつの卵も欲しいな」
魔物であるコカトリスが卵を産むかは知らないが、もしあるなら是非ともゲットしたいところだ。目撃情報があったダンジョンは自宅からバスで1時間とかなり離れているが、バス停からは比較的近い距離にあるそうだ。昼食後、早速バスに乗り情報のあった町に向かい、鶏のダンジョンに潜った。
ダンジョンの最初の部屋はどこも同じみたいで、いつもの様に移動スキルと探索スキルを発動すると、次の部屋への通路から反応があった。
しばらく待っていると通路から情報にあったコカトリスが現れた。鑑定すると、名前はコカトリス(孵化直後)となっていた。孵化直後ということはこの鳥は卵から生まれたということ、これは卵に期待が持てるな。
『ショックボルト』
部屋の中に入ってきたコカトリスに向けてスキルを放った。
『雷』の派生で対象に強力な電気ショックを与え麻痺させるスキルで食材として殺す時に余計な傷をつけずに対象を無力化出来る為、重宝しているスキルだ。
麻痺で動けないコカトリスに近づくとしっぽの蛇は麻痺に抵抗したようで未だ健在だった。蛇の部分は要らないので切り落とす事にした。
『ウォーターブレード』
指先から高水圧の水を放ち蛇を断ち切った。
これは『水』の派生で称号の強化は極みに達したが、未だに氷を作ることが出来なかった。どうやら『水』だけだと発現しないようで、今は『火』の称号を鍛えている。
無事に蛇を取り除き、首を落として血抜きをして空間収納に入れた。幸先の良いスタートが出来たので、今日の所は浅い階層を探索して帰る事にした。
名前
間崎聖人
称号
生還者☆☆☆☆☆ MAX 効果 極
ファイアーマン MAX 効果 極
屠殺 MAX 効果 極
迷宮踏破 60/100 効果 大
吸血妃の祝福 MAX 効果 極
雷を操りし者 MAX 効果 極
水を生み出す者 MAX 効果 極
火を燃べる者 300/500 効果 中
スタミナ 100/100
スキル
光源 火 地図 自動書記 鑑定 固定 遅延 空間収納 水 隠蔽 偽装 ストレージ 闘気 洗浄 消臭 乾燥 瞑想 アクティブソナー 光 雷 手加減
スキルポイント 35162P
約3ヵ月の研鑽の結果、迷宮踏破が大に強化された事により自分の中心に半径5mの範囲を探索出来る様になった。属性スキル2種を極めた事で、様々なタイプの魔物に対応出来る様になり手札が増えた。
鶏のダンジョン2階層を探索している時に行き止まりの部屋でコカトリスの巣らしき物を見つけた。そこにはダチョウの卵程の大きさの卵が8つあり、周りに親鳥は居ないみたいだった。全ての卵に鑑定を行うと2つが孵化直前となっていたので、それ以外を空間収納に入れた。数体のコカトリス(孵化直後)と幼体のコカトリスを仕留める事が出来たので、今日は脱出し高嵜一家を呼んで晩御飯にする事にした。
自宅に帰ると既に帰宅していた絵里香と由依に玄関先で会った。
「あ!お兄さんも今帰り?」
「ああ、今日は新しい食材ダンジョンに行ってきたんだ」
「ん、晩御飯?」
「そうだ。今日は親子丼にする」
「親子丼!楽しみ~」
「新しい魔物?」
「うむ、コカトリスだ」
「コカトリス!毒とか大丈夫なの?」
「大丈夫だ。毒腺は取り除いている」
「なら、お母さん達呼んでくる」
「頼む。今から作るから」
2人と別れて台所に立ち晩御飯の準備に取り掛かった。孵化直後のコカトリスの肉はとても柔らかく臭みも無く、今回使うモモ肉を切り出し一口サイズにカットした。玉ねぎをスライスし、予め用意していた割下を鍋に入れ、玉ねぎとモモ肉に火をいれた。その間に空間収納からコカトリスの卵を取り出し、卵の上部を切り取り中身を取り出した。卵を溶きほぐし、完成間近の鍋に卵を回し入れ、火が入ったタイミングでもう一度卵を入れて火を消し蓋をした。器に炊けたご飯を盛り、蓋を開け卵が良い感じの半熟になりご飯の上に流し入れた。
出来上がった親子丼を囲炉裏の所に持って行くと既に高嵜一家が囲炉裏の周りに座って待っていた。
「こんばんは、間崎さん。いつもすみません、晩御飯をご馳走になって」
「大丈夫ですよ、朱音さん。1人で食べるより楽しいですから」
「そうだよ、ママ。お兄さんは寂しがりやだからいいの」
「ふふ、絵里香が聖人さんと一緒に食べたいだけでしょ?」
「最近、ずっとお兄さんと一緒にいる茉子姉に言われたくない」
「わ、私は庭のダンジョンの攻略の為に一緒にいるだけで」
「最近、茉子姉さんはダンジョン以外でも聖人と一緒にいる事が多い」
「由依まで何を言っているのよ」
「ほら、しゃべってないでせっかくの親子丼が冷めてしまうよ」
俺が手を合わせるとしゃべっていた3人も慌てて手を合わせた。
「「「「「いただきます」」」」」
一口、コカトリスの親子丼を食べると卵の濃厚な甘味と旨味が口に広がり、柔らかいモモ肉から肉汁がたっぷりと溢れ、玉ねぎとご飯とが混ぜ合わさり複数な旨味を生み出していた。
「「「美味しい~」」」
「聖人。グッジョブ」
最近、俺を呼び捨てにする様になった由依がサムズアップしていた。
「お兄さん!私、これを使っただし巻きが食べたい」
「そうだな。卵はまだあるし、だし巻きも旨そうだな」
「ん、明日のお弁当。期待してます」
「おいおい、俺が作るのか?」
「私、だし巻きと唐揚げがあれば大丈夫だから」
「私はタコさんウインナーとご飯」
「わかったよ。でも、弁当箱がないな」
「お母さん、運動会で使った重箱貸して」
「もう、仕方がない子達ね。すみません、間崎さん。私もお手伝いしますので」
「ええ、よろしくお願いします」
「やったね♪」
「姉さん、明日は2人で」
「そだね、由依のクラスに迎えに行くよ」
「ん、よろしく」
こうして2人のお弁当を作ることになった。




