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悪夢~再来(絵里香視点)

 お兄さんとの食事?の後、私達家族はダンジョン都市から離れた場所にある自宅に戻ってきた。 自宅は都市からバスで1時間とかなり離れているが、近くには山と川があって少し歩けば海もある。 自宅の周りにはコンビニとか無いしスーパーも無いから不便だけど、山に行けば天然のアスレチックだし川には魚が沢山いて、近所のおば様達からは自分たちの農園で育てた野菜を頂くことがあるから、贅沢は出来ないけどなんとか生活は出来ていた。 家に帰ってくると早速家族会議を開いた。


「被告、茉子姉。 なにか言うことはありますか」


 ちょっと裁判官の真似をしてみた。


「いえ……何もありません」


 流石に反省したのか茉子姉は終始俯いていた。


「絵里香、もう許してあげて。 茉子ちゃんも十分反省してると思うの。ね? 茉子ちゃん?」


「はい……」


「ママは甘過ぎだよ! お兄さんがお人好しだったから良かったけど、何を要求されてもおかしくないんだよ」


「絵里香姉さん、あの人……殺る?」


「由依~あんたね、助けてくれた恩人を殺るって」


「あの人、よく分からなかった。 強いのか、弱いのか」


「あ~そうね。 由依は気絶してたから見てないし、茉子姉は組合で寝てたから知らないもんね。 あのお兄さんはチートよ、チート」


「チート?」


「そう、使い捨てライターから凄い炎を生み出してスライムを一瞬で倒していったんだから」


「使い捨てライター? スキルじゃないの?」


「お兄さんはスキルって言ってたけど、あんなのスキルじゃない」


「絵里香、ダメよ。 前にもいったけど、スキルは詮索したらいけないのよ」


「それは分かってるけど……」


「今は間崎さんのことより報酬をどうするか、でしょ?」


「はーい。 でも、実際どうするの? 私達に払える物なんてないよ?」


「そうね。 だから、この件に関してはお母さんに任せて貰えるかしら?」


「何かあるの?」


「今はまだ、何とも言えないわ」


「分かったわ、私はママに任せる。 由依は?」


「私もそれでいい」


「じゃあ、これでお話は終わりね」


「あの~私の意見は?」


 茉子姉以外の皆は席を立ってそれぞれの部屋に向かった。


「ねぇ! 私の意見は! 私の意見も聞いてよ~!」


 リビングに茉子姉の叫びが木霊していた。






 それから一週間、前回のダンジョンアタックの疲れを癒していた。 ママは何かと忙しなく動いていて家に居ないことが多かった。 多分、お兄さんの報酬の件だと思うけど。 由依は相変わらず山に行って自分を磨いていた。 茉子姉は体調を戻す為に部屋で寝てるみたいだった。 私はダンジョン都市に何度か足を運んだが、お兄さんに会えなかった。 お兄さんが普段何をしているか知らなかったから、見つけることが出来なかっただけかもしれない。

 ママから報酬の準備が出来たって聞いたからお兄さんに伝言を頼む為に、皆でダンジョン都市に来ていた。 お昼前、都市に到着し総合受付に向かうと美人の受付嬢が笑顔で立っていた。


「おはよう! 瑠美姉!」


「おはよう、絵里香ちゃん。 今日はどうしたの? 皆揃って」


「お兄さ、えっと、間崎さんに伝言をお願いしたくて」


「間崎さんに? ちょっと待ってね、ダンジョンに行ってるかも知れないから履歴を調べるね」


 そう言って端末を操作し、しばらく経つと、


「お待たせ、やっぱりダンジョンに潜っているわ。 それも複数人と」


「複数人? あのお兄さん、パーティーを組んだのかな?」


「そうね、ちょっと待ってね……」


 端末を操作していた瑠美姉の動きが止まった。


「瑠美姉? どうしたの?」


「え! あ、ああ、ごめんなさい。 間崎さんだったわね。 もうあの人の事は忘れた方が良いわ」


「ちょっと! 瑠美姉、いきなりどういう事! 忘れろってなんで!」


「もう、あの人は帰って来ないわ」


「帰って来ないって……瑠美姉、何を言っているの?」


 すると、後ろにいたママが隣に来た。


「瑠美さん、間崎さんはどこのダンジョンに行きましたか?」


「朱音さん……」


「どこに、行きました?」


「朱音さん! もうあの人の事は忘れてください! もう手遅れなんです! 今更、行っても……もう」


 瑠美姉は今にも泣きそうになっていた。


「瑠美さん、もう一度聞きます。 間崎さんはどこのダンジョンに行きましたか?」


「……青龍です」


 朱音さんは絞り出す様な声で答えた。


「青龍って!」


「しかも、複数人で潜るなんて」


「お父さんと、同じ……」


 私は思わず叫び、茉子姉は悲痛な表情で、由依は父さんの事を思い出していた。


「そうですか。 皆、行くわよ」


 そう言ってママは踵を返し、組合の出入口に向かった。


「朱音さん」


 ママは立ち止まり、


「あの時、私達は何も出来なかった。 ただ待つことしか出来なかった。 でも、今は違う。 だから……今、出来る事をします」


 そう言うと歩き出したママの後ろ姿を私達は追った。


「……」


 私達は忘れないだろう、瑠美姉の泣き顔を。


 いつもダンジョン都市に来る時は必ず最低限度の装備は持って来ていた。 消耗品類が心許ないが、一刻も早くお兄さんの所に行かないと間に合わないかもしれなかった。

 バスに乗り込みダンジョンの入口に着くまでに軽くミーティングを始めた。


「ママ、お兄さんを探すって言っても、どの階層にいるか分からないんじゃ探しようが……」


「そうね、どうしょうか?」


「大丈夫」


「由依?」


「同じ階層に行けば場所は分かる」


「……あんた、お兄さんに印をつけたわね」


「うん。 いつか、殺る時の為に」


「はぁ……ま、今回はそれのお陰でお兄さんの位置を特定出来るから許すけど」


 由依が持つスキル『ターゲットロック』は狙った相手に印をつけると、どれだけ離れても相手の方向が分かる。 相手との距離が近づくとより精度が上がる。


 上級者ダンジョン青龍に着くと、入口の警備員にお兄さんが出てきたか聞いてみたが、まだ出てきてないとの事だった。


「由依、お兄さんここにいる?」


「うん、この下に……まだ、だいぶ離れているけど」


「分かったわ。 絵里香が前で階段まで最短でよろしくね。 その後ろに茉子ちゃん、私で後ろは由依、お願い」


「はーい」


「分かった」


「うん」


 私が先頭に立ちダンジョンを進む。 青龍に出現する魔物は弱いが、かなり深い階層まで行くとなると自ずと戦闘回数は増え、時間を消費し心身に疲労が溜まっていく。

 そうして、ダンジョンに潜り始めて数時間、由依のスキルだけが頼りだった。 休憩せずに8階層の階段を降りた時だった。


「捉えた!」


「由依! お兄さんここにいるの!?」


「うん、ここから少し進んだ行き止まりの部屋から感じる。 でも……」


「でも?」


「動いている感じがしない」


「急ぎましょう!」


 由依の指示を頼りに目的の部屋まで走った。 そして、暗い通路から部屋に飛び込み、視界に映った光景に私は思わず叫んだ。


「お兄さん!」



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