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上級者ダンジョン~青龍

 あれから一週間が経ち、約束の日となった。 ちゃんと管理人さんにダンジョンに行くから昼飯はいらないことを伝えてから寮を出た。

 バスに乗り込み、東門の近くにある上級者ダンジョン青龍に向かった。 早朝ということもありバスを利用する探索者は少なかった。

 バスに揺られること40分。 青龍に到着し男の姿を探すと、ダンジョンの入口から少し離れた場所で数人の探索者と集まっていた。


「悪い。 待たせてしまった」


「いや、時間通りだぜ。 聖人、今は先に来た奴らにお前の事を話していたんだ」


「ん? 俺の事を?」


「ああ、この前にも話したが、お前さんは高嵜一家を助けた事もあり非常に目立っている。 (わだかま)りも当然あるからな。 だが、聖人はこの間から一度も朱音さん達と接触していないし、その姿を見られていないからな。 ちゃんと話をしたら皆分かってくれたよ」


「そうか、なら安心かな」


「良し! メンバーも揃った事だし、この8人でアイテムの獲得を狙う! 道中は俺と相方で魔物は対処する。 今回、集まったメンバーは俺と相方以外は全員初顔合わせだからな、ろくに連携が取れないだろう。 道中の罠は出来るだけ回避して、最短で目的の階層を目指す。 行くぞ!」


 男が号令を掛け、ダンジョンに向かっていき入口の警備員に声を掛けて、スキャナーに右手をかざしてダンジョンに入っていった。

 ダンジョンに入ると周りに気付かれない様に自身に鑑定を使い、異常が無いことを確認した。 次に探索スキルを使いマッピングをしながら進めて行く。 


 上級者ダンジョン青龍も玄武と同様にダンジョンの内部に変わった所は無く、出現する魔物の違いでダンジョンの名前を決めているのだろう。


 1階層で遭遇したのは、裏庭ダンジョンで戦った巨大蟻の小型版みたいな奴が数匹だけだった。 臨時パーティーは迷う事無く階段を目指し進んで行った。

 5階層まで特に問題無く来た。 玄武と同じなら5階層はユニーク個体が出るはずと、少し緊張していたのだが今までの階層と変わらず出現する魔物は通常種ばかりで、その驚異度も低かった。

 何故、ここが上級者ダンジョンになっているのか疑問を持ち始めていた。 そんな俺の様子に気付いたのか、前を進んでいた他メンバーの1人が話しかけてきた。


「どうした、間崎? 出会う魔物が弱すぎて拍子抜けしているのか?」


「ああ、ここは上級者ダンジョンなんだろ? なのに、さっきから出会う魔物は1階層の魔物と変わらないじゃないか」


「そうだな。 俺が聞いた話だと、ここは非常に深いダンジョンらしい」


「そんなに深いのか?」


「ああ、20階層まで降りた記録があるそうだが、未だにコアは発見されていない」


「なるほど」


「だから、魔物は弱いが探索が困難な為、上級認定されているそうだ」


「ありがとう。 よく分かったよ」


「なに、気にするな」


 そう言って男は列に戻っていった。 その後は順調に進み休憩を数回挟んだが、早朝から4時間程で目的の8階層に到着した。 本格的な探索の前に昼飯を食べるのに丁度いい時間となっていた。 だが、パーティーのリーダーは休憩を取らずに先を目指すと指示を出した。

 何をそんなに急いでいるのか分からなかったが、ここから先は警戒しながら進むべきだと思った。 そんなリーダーの後を追っていると大きな部屋に着いた。 そこには、大量の赤い花が咲いていた。

 その花は彼岸花に似ていて、人の血を連想させる独特の雰囲気を放っていた。 リーダーとその相方の動きが止まっている事を不審に思ったメンバーの1人が声を掛けた。


「笹崎さん、これは一体?」


「すまない。 ちょっと考え事をしていた。 あれを見てくれ」


 そう言ってリーダーは赤い花の根元を指差した。 すると、花の根元にコアの一部が見えていた。


「どうやら間に合ったようだ」


「間に合った?」


「ああ、奴ら草人は一定期間が経つと開花し、花が枯れると分蘖し数を増やすんだ。 だが、見たらわかるが開花している時はコアが露出し無防備となる」


「なら、狩りたい放題じゃないか! なんでそんな大事なこと黙ってたんだよ」


「仕方がないんだ、開花の予想は出来る。 だが、相手は魔物だ。 そんな不確定な情報は話せないよ」


「まあ、言いたいことはわかるけどよ……今なら安全なんだな?」


「ああ、大丈夫なはずだ」


「良し! 皆、稼ぎ時だ!」


 男の言葉に見守っていた他のメンバーも呼応して目の前の花畑に向かって行った。 その様子を俺は冷静に見ていた。 ここはダンジョンだ、そんな都合が良い事があるのだろうかと疑念を抱いていた。 動かない俺を見かねたリーダーが近く来た。


「行かないのか、聖人?」


「ああ、ここはダンジョンだからなちょっと警戒していたんだが大丈夫みたいだな。 あんたはどうするんだ?」


「俺達はちょっと休憩させて貰うよ」


 そう言ってその場から離れていった。 その行動に若干の違和感を感じたので、警戒レベルを上げた。 他のメンバー達が次々と花の根元から結晶体を摘出し残りが僅かになってきた。

 俺は端にある花に近づき、アクティブソナーを使用した。 だが、変な反応はなかった。 とりあえず闘気を纏い根元のコアから結晶体を摘出した。 結晶体の管理は予め打ち合わせしていたので、メンバーの1人に結晶体を渡した。

 次の花に行こうとしたその時、足下から突然植物の蔓が現れ足に絡み付いた。


「これは一体!?」


「なんだこれ!」


 他のメンバー達の足下からも蔓が現れていた。 花畑の中心付近にいたメンバー達は足だけでなく、全身に絡み付いていた。


「ふぅ、結晶の採取ご苦労だったな」


 その場を離れていた男達が戻ってきた。


「笹崎さん!? これはどういうことだ!」


「ん? ああ、その蔓は新しい苗床を見つけたから生えてきたんだよ」


「苗床だと!」


「そうだ、この結晶はな、草人の蔓を人に寄生させて作るんだよ。 あんたらが採取していたのは前に寄生されていた人から出来た物なんだよ。 ほら、早速新しい結晶が出来た」


 そう言ってメンバーの所に近づくと、その足下に新しい結晶が出来ていた。


「やっぱり生きた人間を苗床にすると生成が早いな」


 足下の結晶を採取し、結晶を預かっていたメンバーの袋を奪い俺の所に来た。 身動きの取れない俺を見て、


「なぁ聖人。 お前の事は嫌いじゃなかったが、やっぱり朱音さんに近づいたのは許せないな」


「あんた……最初っからそのつもりで」


「ああ、やっと邪魔だった旦那を嵌めたのによ。 朱音がなかなか靡かないのがいけないんだ。 金に困ってたから援助してやるって言ってんのによ。 自分たちでなんとかしやがって」


「嵌めたって……まさか!」


「ああ、そうさ。 朱音の旦那ならその辺に転がっているんじゃないかな? じっくりと料理していくつもりだったのにお前が近づくから予定が狂ったんだよ。 どうだ聖人? そろそろ立っているのも辛くなってきただろう? あいつらを見てみろよ」


 全身を蔓に絡み付かれたメンバー達は地面に倒れていた。 何度か蔓を引きちぎろうとしたがダメだった。


「もうあいつらはダメだな、生命力が残っていない。 後はゆっくりと肉体を分解し次の結晶に生るのを待つだけだな」


「笹崎!」


「言ったろ? ダンジョンは魔物より探索者の方が厄介なんだよ。 じゃあな、聖人」


 

 大量の結晶体を入れた袋を担いでその場から立ち去った。





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