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いきなりピンチ!

 ステータス画面を見て絶望したが、自分の状態を考え冷静になった。



「とりあえず帰るか……」


 広場の角に落ちていた木刀を回収し、とぼとぼと階段を上り地上に戻った。 上半身裸なので家まで走って向かい、家に帰り風呂に入ってスライムの粘液を落とし、明日の仕事に備え就寝した。


 次の日、出勤するなり部長の所に向かい、


「部長! 明日から一週間有給ください!」


「何言ってんの、君? 一週間なんて無理に決まってるだろ」


「俺、今まで有給使ったことないです! 明日から休みをください!」


「だからって、君~納期もあるんだから無理だよ」


「良いじゃないか、休ませてあげなさい」


 後ろから声がした。


「専務! ですが……」


「彼が休んでも納期には間に合うんだよね?」


「はい……それは大丈夫ですが」


「そうか。 君、明日から休んでもいいよ」


「本当ですか! ありがとうございます」



 有給の申請が通ったことに喜び、俺はその場から立ち去り自分の持ち場に戻った。





 その後、部長と専務は、


「どうして許可したんですか? 専務」


「あれで良いんだよ。 彼は頭脳派だろ? これから必要なのは武闘派だよ」


「どういうことでしょうか?」


「彼が戻ってきたらこれを渡しておいてよ」


「これは!」


「新しいプロジェクトを始める。 彼の様な者は不要だよ。 君には新しい部署で武闘派の新人をまとめて貰いたい」


「ありがとうございます!」


「彼が戻ってくるまでに今の部署の整理を頼むよ」


「わかりました。 おまかせください!」

















 持ち場に戻った俺は今日の仕事を終わらして、周りの目が冷たかったが定時で帰宅し、駅前のホームセンターに向かった。

 目的の物は大量の100円ライターとライターに着けるアタッチメントを二個、シールド付きヘルメットにヘッドライト、電池にリュックサックと水筒となかなかの出費になった。 まだまだ足らない装備があるが、最低限は揃ったと思う。

 家に帰りジャージは燃えてしまったから、タンスからスウェットを取り出し、動きやすさといざというときはまた燃やすつもりで着た。 装備を整えて木刀を持ち玄関に向かい、



「よし! もう一度ダンジョンに行くか!」



 気合いを入れアパート裏のダンジョンに向かった。



 再び、やってきたアパート裏のダンジョン。 早速ヘッドライトを点灯させ最初の広間を探索する。 スライムが降ってきた天井はかなり高く、部屋の広さもテニスコート1面分くらいあるだろう。

 前回すぐに引き返した細い通路をライトで照らすと、10mほど先で壁が見える。 おそらく左右どちらかに道があるのだろう。 通路に進む前に天井を確認し、上への警戒をしながらゆっくり通路を進んで行く。


 通路を進むと突き当たりの手間で右に進む曲がり角に差し掛かった。 耳を澄ましゆっくりと曲がり角の向こう側を確認する。 通路はまだ続いているようで先を照らしても奥を確認することが出来なかった。


 慎重に通路を暫く進んで行くと小さな灯りが見えた。 更に進んで行くと、どうやら次の部屋のようだ。 部屋の入口から中の様子を伺うと、最初の広間と同じ位の広さがあるみたいで、ヘッドライトで天井を確認する。


 スライムは確認出来なかったので安心して中に入って行く。 部屋の中央まで来ると先に繋がる通路を発見した。 ここまで一本道なので撤退時に迷うことがないのでもう少し先に進むことにした。 通路に差し掛かった処で、カサカサと音が聞こえてきた。

 だんだん音が近づいてくるが、思わず後退りしそうになった。 だが、相手が複数いる場合、部屋の中央で待ち構えると囲まれる。 だから、後退出来ない。 ただ、その一心で未知の恐怖からくる震えを抑えていた。 通路に向いていたヘッドライトが音の正体を照らし出した。


 音の正体は体長50㎝程の巨大なネズミだった。 異常に発達した前歯に鋭い爪、赤い瞳に全身の筋肉が肥大化したマッチョなネズミが現れた。 初めて見る魔物に唖然としているとマッチョネズミが突撃してきた。


「ちょっ! いきなりかよ!」


 相手との距離は3mはあったはずなのに、奴は目の前にいた。 反射的に手に持っていた木刀を振ったが、奴の爪に簡単に弾かれた。


「あ!」


 弾かれた木刀を正眼に構え、もう一度攻撃したが奴はあっさりと躱し懐に入られた。 ミシッ!という音が聞こえた気がした。 それと同時に凄まじい衝撃が体を襲い吹っ飛ばされ、床をバウンドしながら部屋の壁まで転がった。


「ガハッ!」


 一瞬、気を失ったようで自分の状況がいまいち理解出来なかったが、目を開け周囲を確認するとリュックサックの中身がその辺に散乱しており、目線を上げると奴がゆっくりと近づいてきた。

 痛む体を押して立ち上がろうとしたが、手に木刀持っていないことに気付き探すと、奴の後ろの方にあった。 奴は俺の横に立つとゆっくりと鋭い爪を振り上げた。

 その時、視界の端にアタッチメントを着けた使い捨てライターが目に入った。 対スライム用に持っていた物だが、反射的に掴みスイッチを入れ、奴の足に押し付けた。

 ジュッ!という音と肉の焼ける臭いがして奴は悲鳴を上げながら、のた打ち回っていた。


 使い捨てライターとはいえアタッチメントを着けた状態なら炎の温度は1200度近い高温になる。 だが、可視できる炎は3㎝程と射程が短くある程度密着させることが前提の武器だった。


 ゆっくりと立ち上がり床に転がっていた木刀を回収した。 まだ、立ち上がることの出来ない奴の近くに行き、木刀を振り上げ奴の腕を狙い振り下ろした。

 何度も何度も打ち付けた。 腕がダルくなっても奴の腕が動かなくなるまで打った。 片方が動かなくなったらもう片方も同じように打ち付けた。

 奴の両腕は赤く腫れ上がり動かすことが出来ない感じになるまで打った。 奴にトドメを差す為に床に転がっているアタッチメント付きのライターを2本両手に持ち、奴の腹に馬乗りになり、人間でいう心臓の辺りにライターを押し付けていった。


1秒……体毛と皮膚を焼く。

2秒……皮膚を貫き肥大化した筋肉を焼いていく。

3秒……皮膚は炭化し分厚い筋肉を貫き炎は内部に達し、更にライターを押し付けた。

4秒……奴は口からドス黒い液体を吐いた。

5秒……奴の動きが止まった。


 奴が死んだのを確認すると体から力が抜けてしまい、そのまま横に倒れる様に床に転がった。


「なんとかなったか……」


 しばらく休憩し体力を回復させて、


「そうだ! ステータスは……」







名前 間崎聖人(かんざきまさと)


称号 生還者 new


スタミナ 58/100


スキル 無し


スキルポイント    10.1P



習得可能技能 鑑定、地図、自動書記





「お、おお! ポイントが10も増えてる。 しかも、称号がついた!」


 ステータスの称号をポチッとすると



生還者

たった一人でユニークモンスターと戦い生き残った者に贈られる証。    1/100


スタミナ消費緩和 微 スタミナ回復速度上昇 微




「スタミナ系に恩恵があるのか。 しかし、ユニークモンスターか……良く生き残れたな」


 リュックサックを見ると吹き飛ばされた時の衝撃でチャックが開いただけで特に損傷は見られなかった。 立ち上がり散乱したアイテムを回収し、痛む体を押して帰路についた。

 ほとんどダンジョンを進めていないので滞在時間は1時間位だろう。 外に出ると日はまだ高いが、体力はほとんど残っていなかった。

 家に帰り風呂に入ろうと裸になった時、鏡に映る自分の体を見ると、奴の頭突きが当たった所以外にも痣になっている箇所が見えた。 痛む場所に湿布を張って今日は安静にしようと決め、明日の状態を見てダンジョンに潜ることにした。






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