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 裏庭ダンジョンを攻略した次の日、早朝から裏庭に向かうとダンジョンの入口がちゃんと消えていた。 ダンジョンの消滅を確認し、ステータスを隠蔽と偽装してから自転車で隣町に出来たダンジョン都市に向かった。


 隣町のスーパーは自転車で30分ぐらいで着くが、ダンジョン都市はそこから更に30分程進んだ所に建設されている。 都市の周りを分厚い壁で囲い、複数のダンジョンを管理していた。 

 その為、都市へは四方に設けられた門からしか出入りすることが出来ない様になっている。 各門にはダンジョンで訓練し鑑定を習得した特殊部隊が警備に就いていて、門には車両用のゲートと人用のフラッパーゲートがあった。


 門の近くにある駐輪場に自転車を停め、歩いて門に向かうと警備の人間に呼び止められた。


「本日はどのようなご用件でしょうか?」


「えっと、探索者になりたくて……」


 そう言うと警備の人間は黙ってこちらを見つめると、


「ふむ……一般の方ですか、少々お待ちください」


 そう言うと警備の人間はゲート横の事務所の窓口にいる人と何かを話すとこちらに戻ってきた。


「お待たせしました。 探索者は危険が伴いますよ?」


「はい、それは理解していますので」


「分かりました。 門を通り真っ直ぐに行くと組合の事務所がありますので、まずはそこに向かうと良いですよ。 それと、こちらが仮の入門証になります。 ゲートを通る際に必要ですので失くさないようにお願いします」


「分かりました」



 入門証を受け取りフラッパーゲートを通るとゲートの透明な板に顔と名前が表示された。 どうやら、先ほど見つめられた時に鑑定されたみたいで、その情報を入門証に入力し管理しているようだ。 ちょっと時間が掛かったが、やっとダンジョン都市の中に入れた。

 真っ直ぐ歩いて行くと大使館の様な建物が見えてきた。 その建物の門には『探索者組合』と書かれていた。 建物の中に入ると、正面に総合受付と書かれたカウンターがあり、右手には食事堂と二階に上がる階段、左手には洒落たBarカウンターと渋いバーテンダーがいた。

 総合受付に向かうと二十歳くらいの見目麗しい受付嬢が声をかけてきた。


「いらっしゃいませ。 当施設のご利用は初めてですか?」


「はい、探索者になりたくて。 こちらに行ったらいいと警備の人に言われたので」


「そうですか、こちらで登録することは可能です。 まずは、これを読んで探索者の基本的なルールを覚えてください」


 受付嬢から小冊子を受け取り、


「読まれましたらもう一度、受付に来てください」


「分かりました」


 総合受付の近くにあるソファーに座り小冊子に目を通した。 そこに書かれていたのは、地上ではスキルを使わないとか、ダンジョンの中での出来事は全て自己責任だとか、そういったことが書かれていた。 ざっと目を通し再度、受付に向かい受付嬢に声を掛けた。


「読みました」


「はい、ありがとうございます。 次に、マイクロチップを埋め込むのに誓約書にサインをお願いします」


 受付嬢は1枚の誓約書を取り出した。


 マイクロチップには氏名と住所が登録され、スキルの登録は自由。 但し、スキルを登録すると指名依頼を出す場合がある。

 ダンジョン都市は探索者の衣食住を保障する代わりに、都市が管理するダンジョンの魔物を適度に間引きを行うこと。 都市の外にダンジョンが生まれた場合は自衛隊と協力し、ダンジョンを攻略すること。 ダンジョンで手にしたアイテムは自らで保有するか、組合で売る、又は匿名で競売にかけることが出来る。

 

 等々、他にも色々書かれていたが、要は生活を保障する代わりに魔物と戦ってレア物が出たら組合に売れってことみたいだ。 誓約書にサインをして受付嬢に渡した。


「はい、ありがとうございます。 では、マイクロチップを埋め込むので、右手を出してください」


「え?ここで?」


「そうですよ? さぁ、早く!」


「は、はい……」


 カウンターの上に右手を出すと、受付嬢がカウンターの下から1cm程のマイクロチップを取り出した。


「ちょっと痛いですけど、すぐに終わりますから♪」


 そう言って受付嬢の右手の人差し指が俺の右手の親指の付け根辺りに触れると痛みが走った。 受付嬢が触れた所が裂傷し血が少し出た。

 すると、受付嬢はマイクロチップをその傷の所に押し込んだ。 マイクロチップが入ったのを確認すると、今度は左手で俺の右手の傷に触れた。 すると、傷が消えて痛みが無くなった。


「お疲れ様でした♪ チップの埋め込みは無事終了です。 これでお客様は探索者になりました。 まずはここにかざしてください」


 受付嬢はカウンターにある小さなスキャナーを指した。 言われるがままに右手をスキャナーに近づけると電子音が鳴り、受付嬢が持っているタブレット端末に俺の情報が表示された。


「確認出来ましたね♪ さぁ、ダンジョンが貴方を待っていますよ! まずは初心者用のダンジョンがありますので、そちらでゴブリンを相手にスキルポイントを稼いでください。 武器はどうします? 貸し出しもありますが、あまりオススメはしません。 この建物の隣に武器防具を扱っている店がありますので、そちらで自分にあった物を探した方が良いですよ♪ あ! 初心者にオススメしてるスキルは闘気(オーラ)です! これはどんな武器にでも使える便利な自己強化スキルなんです。 これを使いこなせる様になれば貴方はもう立派な探索者!」


 興奮した受付嬢は一気に自分の言いたい事を言い切った。 受付嬢の勢いに圧され、俺は頷くことしか出来なかった。


「あ、あの~」


「なんですか? 質問ですか? 私に任せてください。 なんでも答えますよ! あ、プライベートな事はダメですからね! メッですよ!」


「は、はい……その、探索者になると寮に住めるって聞いたんですが」


「あ! その説明を忘れていましたね。 えっと、確か今空いている部屋は……」


 受付嬢は端末を操作し検索していた。


「はい、ありましたよ! 間崎さんはこの事務所から少し離れた所にある独身寮になります。 寮の入口でチップをかざせば管理人さんが教えてくれますから、最低限の家具と家電はあるので、食材は買わないとダメですからね。 後は 有料ですがここの食堂で食べることも出来ますよ♪ あそこの肉倍飯倍卵倍のトリプル倍カツ丼がオススメですよ!」


「あ、はい……ありがとうございました」





興奮した受付嬢から逃げる様に事務所を後にした。



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