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クレープを食べよう

今日1日の授業を終えるチャイムが鳴ると同時に、ガララッと勢いよく教室のドアが開く。

それと同時に、聞き慣れた元気な声が聞こえてくるのはいつものこと。


「レイちゃーん!帰ろう!」

「あ、みっくん。ちょっと待って、準備するー!」


爽やかな笑顔を向けてくれる彼は、私の幼馴染の黒田未弦(くろだみつる)君。

こうして毎日一緒に帰ってるんだ。


「隣のクラスの黒田君じゃん。いいなぁ(れい)は。私も彼氏と毎日一緒に帰りたいよ〜」


そう言いながら机にビターッと伸びをするのはクラスメイトであり友達の花奈(はな)。彼氏は電車通学だから家が遠いんだっけ。


「もう…花奈、みっくんと私はそんなんじゃないってばー」

「っていうけどさぁ、実際お似合いだと思うよ?美男美女カップル!はぁ〜絵になるわぁ〜」

「あはは…じゃあ、また明日ね!」

「うん、また明日〜」


花奈はこうやってカップルだの何だのと言ってくるときがあるから、ちょっと困る時がある。有り得ない発想に苦笑いしつつ、挨拶をして花奈と別れて教室を出た。


「お待たせ!」


廊下にもたれ、スマートフォンを操作しながら待っていたみっくんに声をかける。


「ん。行こうか」


みっくんはスマートフォンを閉じ、優しい笑顔を向けて歩き出した。私も彼に並んで歩く。


「ねぇ、レイちゃん。最近駅前にクレープ屋さんが出来たらしいんだけど、行ってみない?」

「へえ、クレープかぁ。いいね!行ってみたい!」


みっくんは甘い物が好きだ。でも他の男の子は誘いにくいらしく、こうして私がみっくんのお店開拓に同行することもたまにある。逆に私が誘うことの方が多いけど…。

とにかく、クレープ大好きな私はワクワクしながら歩いた。



目的のクレープ屋は開店して日にちが経っていないようで、女子中高生を中心に行列が出来ていた。


「めっちゃ美味しい〜!」

「え、いいな一口ちょうだい〜」


クレープに舌鼓を打つ女子高生達が、わいわいとはしゃいでいる。

そんなに美味しいんだ…。今度花奈も誘って来ようっと。



「いらっしゃいませ。ご注文は何になさいますか?」

「えーっと…ストロベリースペシャルで!」


私は少し奮発してとても食べたかったクレープを注文した。


「あとダブルクリームチョコバナナ」


後ろからみっくんが注文を言った。


「はい、合計で1480円です」

「あっ、えっと、別々で…」


いつも割り勘にしてるから、焦って店員さんに声を掛けようとすると、


「はい。1500円で」


サッとみっくんが会計を済ませてしまった。その間、固まる私。


「みっくんどうしよう、私千円札しか無いから今返せないよ…!!」


財布を開きながらクレープの出来上がりを待つ列に並び直す。私の財布には今、千円札が数枚と…1円玉が…数枚。ごめんみっくん…。


「いいよ、俺が誘ったんだし。今日は奢らせて?」

「うっ…」


爽やかな笑顔を向けられ、断りづらくてゆっくり頷

く。


「…ありがとう、みっくん」


するとみっくんは満足そうに前を向いた。



「お待たせしました〜」


案外そんなに待つこともなく、クレープが渡される。


「わぁ…!」


とっても美味しそうなクレープを前に今すぐがっつきたい。でも、こういう時はみっくん、大体….


「よし、レイちゃん!いくよ〜」


こうやってツーショット撮るんだった。私より女子力ある…。

精一杯盛れるよう、クレープで顔のラインを隠したり顔の角度を変えながら写りを調整する。


「ん、いいよっ」


ベストな角度が変わらないよう短くみっくんに伝えると、


「はい、チーズ!」


みっくんはシャッターボタンを押して、写真を撮ってくれた。写真は後で送ってくれるらしい。見てみよ。


「美味しそう…!」


ストロベリースペシャル。ストロベリーアイスに、ホイップクリームにカスタードクリーム、そしてイチゴがふんだんに使われている。

一口食べると、クリームの濃厚な舌触り、そして甘さと同時にイチゴの甘酸っぱい香りが広がって…天国。


「「おいひい〜」」


私の声と少し低いみっくんの声が重なる。隣を見ると、同じく私を見つめる間の抜けた顔。

なんだかおかしくなって、2人して笑ってしまった。


「レイちゃんのクレープすごい美味しそう。俺の一口あげるから、それ一口ちょうだい」

「ん、いいよ〜」


はい、とクレープを差し出すと、みっくんはパク、とクレープをかじる。モグモグ、と何度か咀嚼(そしゃく)すると、


「ん、うま〜」


可愛いなあと思いながら緩んだ顔を笑顔で見る。食べるのも好きだけど、食べてて幸せな顔をしてる人を見るのも実は好きだったりする。


「はい」


今度はみっくんがバナナのクレープを差し出す。顔を近づけるとバナナの香りが鼻をくすぐる。ああ…食べたい。


「ありがとう」


一言言って、クレープをかじる。これはチョコと同時にバナナの風味がして、それでいてクリームの舌触りが滑らかで…これもまた、天国か。


「ん〜! こへもおいひい〜」


美味しいものを食べると、人は幸せになる。

これに尽きる。




「みっくん、今日はありがとう〜。また明日ね〜」


家の門の前で、みっくんに手を振る。


「うん、また明日〜」


手を振りつつ、みっくんは隣の家の門を開けて入って行く。私も門を開けて、家に入る。

そう、私とみっくんは家が隣同士なのだ。昔は家に着いてから夜まで遊んでたりもしたけど…お互い気を使う (使える?) ようになってきたのかな。


「はあ〜、楽しかった」


部屋に入るやいなや、ボフン、とベッドに倒れこむ。今日は苦手な数学の小テストがあったから疲れちゃった。晩ごはん出来るまで…寝よう…。

私は重くなる瞼を支えきれず、そのまま眠りに落ちた。







「レイちゃん、今日も可愛かった…」


未弦はそう呟きながら自室のドアを開ける。

デスクの横にドサ、とスクールバッグを置く。

デスク前のコルクボードには、レイと未弦、2人並んで写った写真が飾ってあった。

そして、プリンターを起動させると、スマートフォンを操作する。しばらくすると、プリンターが大量の写真を吐き出し始める。


「レイちゃんコレクション、増えてくなあ…」


それは、教室で談笑する姿、教室を移動する姿、帰り支度をしている姿、そしてクレープを手に写る玲と未弦…。

大量の玲の写真だった。


プリンターが全ての写真を印刷し終わると、未弦は写真を机に広げて一枚一枚じっくりと愛しそうに見つめる。

やがて全ての写真を見終えると、未弦は堪らないといった表情で、写真を胸に抱きしめた。


「レイちゃん…好きだよ」






みっくん、気持ち悪い。←自分で書いといておきながら

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