(序章・一章)
━序章━ BREAKING・CREATE
二〇〇五年、神が誕生した。
「……」
「早く、早く起きて下さい。早く、しないと……」
「君は……誰なの?」
「私は……ら。」
「……えっ?」
「さ……らです。」
「は……やく、逃げて。」
「紗……良?」
「逃げる?……って、一体どこに?」
「この、国から。」
「この国……ってどういう━。」
僕の目は、ここで醒めた。最近、こんな夢をよく見るようになった僕は、あるものに目がいくようになった。僕の住んでいる日本で、あちこちに貼られている〝聖条約〟に。
◇
━ 聖 条 約 ━
【 曰はく、たった一人の人間が世界を創造した。
曰はく、ある神がその世界を破壊に導いた。
曰はく、その両者がある契約を結んだ。 】
この三文が記された時は、まだ戦争が続いていた……らしい。
だけどそれは僕たちの住んでいる現代から、約四〇年前のことらしい。
ただ、〝戦争をした〟という形跡は残っていた。何故かは分からないが、その形跡は消すことができないそうだ。国家はそこから、日本は何らかの戦争をしたのではないかと、推測したのだ。そして調査をしていて発見されたのが、聖条約らしい。
━と、こういう事を考えていると、またあの少女が夢に出てくる。
〝沙良〟という名の少女が……。
━ 一章 ━ FIRST・ABILITY
二千五十年、僕たち人類は、新しい人間の可能性に行き着いた。政府が公表した新しい遺伝子情報(DNA)〝NEO〟である。この〝NEO〟は人の感情や欲望、意志に反応して、あらゆる物質に影響を及ぼすことが出来るものである。発見したのは日本の科学者で、〝NEO〟が発見された体をもつ人は、ごく一部である。その中でも〝NEO〟が発見された子供たちは、政府が管理する学校に通っているという噂が流れているが……、
━誰一人、その学校について知らない。存在するのかすらも……。
そして五十年前に起きたと思われる戦争のせいで大きな被害を受けた日本にとって〝NEO〟は、重大な発見だった。
しかし、〝NEO〟は日本人特有のもので、外国との貿易材料には使えなかったらしい。
どちらにしても、一年置きに記憶を無くす僕にとっては、あまり関係のない事だ。三年前の事故で受けた怪我のせいで、一年置きに記憶を無くすようになってしまった僕には。
カタッ、カタカタ。
「ふぁあ、眠いよぉ。」
ピロン。レベルアップ。
「やった。やっとレベル上がった。でもやっぱりゲームって難しいなぁ。」
「何言ってんだよ。簡単じぇねぇか、こんなもん。」
「僕がこういうものに免疫無いの、知ってるよね?」
「うんまあ、一応知ってはいるけどそれってあんまり関係ねえと思うぞ?」
「え、なんで?」
「だってお前、何に関しても腰引けてんじゃん!」
「うっ!」
隆河はこうやっていつも僕の痛いところを突いてくる。
「で、その腰が引けるのを治すにはどうすればいいの?」
「そんなもん、俺が何とかしてやるよ。」
「へぇ~。随分自信満々に言うね。で?治る日はいつ来るの?」
「さあ?」
「はあ……だよね。」
僕は〝桐島 祐〟晃明高等学校一年生。特技は何もなく、趣味もない。勉強は中の上、スポーツは平均より少し出来るくらいのもので、よくいる平凡人だ。
そして、そんな僕とは真逆の〝高木 隆河〟。僕の幼馴染で、成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗、おまけに、入学早々クラスの人気者。ほぼ完璧と言っていい人間だ。
「やっぱり僕にゲームは無理だよ。」
「そう言うなって、俺が鍛えてやるからよ。」
「う、うん……。」
「なんだよ、なんか言いたげだな。」
「いや別に。」
実はあんまり期待してない、なんて言えない。
「ふーん。じゃあ、続きやるぞ。」
◇
そして、隆河に散々しごかれた僕は、くたくたになって家に帰ってきた。
「今日は本当に疲れたなあ。」
やっとゲームから解放された僕は、今にもベッドに倒れこみそうになっているところだった。
すると……
ピロン!
「ん?何だろう。こんな時間に。」
『君はそんなところに居る人間ではないはずだよ?』
「何このメール。なんか……変だなぁ。」
こんなメールが、普段はあまり使う事のない僕のパソコンに来た。
ピロン!
「あ、また来た。」
『このメッセージが何か気になるかね?』
僕の思ってる事が当たっている……。なんか凄いけど、やっぱり変だな……。
この時僕は、この謎のメールに対して変だと思ってはいたが、少しも警戒していなかった。もしこの時に少しでも警戒できていれば、僕の未来は大いに変わっていただろう。
ピロン!
『私が誰だか気になるかね?』
「本当に変なメールだなぁ。でもちょっと気になるし、返してみよう『カタカタ、ピロン!』。」
ピロン!
『いいだろう、教えてあげよう。だがまず次のメッセージを読んでもらいたい。それを踏まえて、どうするのか決めて貰いたい。決まればその後で教えてあげよう。』
「次のメール?」
ピロン!
『君にはやるべきことがある。それが何なのかは私にも分からない。だが、それを知りたいのなら、このメールアドレスに返信してみるといい。』
「何、これ。一体何が言いたいんだろう。」
この時僕は、何故か分からないけれど、いつの間にか返信してしまっていた。
ピロン!
『案外早く返してくれたね。少し驚いたよ。では早速話に入らせてもらうよ。話は二つだ。先ずは君の過去についての話から。』
「僕の、過去?もしかして三年より更に過去の事、知ってるの?」
三年前の事故で、僕は記憶を無くした。そして、その時にある体質を持ってしまった。もちろんその事は、僕以外誰一人知らないはずなのだ。なのに、何故……。
ピロン!
『ああ、知っているとも。そして、誰にも言っていないという事もね。』
「えっ!」
この人、なんで僕の独り言に返せたんだろう。それに、何でそのことを……。
ピロン!
『ん?どうしたんだい?……。ああ、驚かせてしまったね。こうなると、話がややこしくなるから。二つ目から話すとするよ。』
「う、うん。」
ピロン!
『私が君の心の声を聴けたのは、私に備わっている能力、【無制限聴力】のおかげだよ。』
「おーる、いあー?能力?何の話してるの?」
ピロン!
『ああ、すまない。君は何も知らなかったね。』
「う、うん。」
僕は何も知らないって、じゃあこの人は、何を知っているんだろう。
そんな事を思っていたけれど、これもあの人聞こえているのだろうか。
ピロン!
『ではまず能力についてから話そう。この能力はごく一部の人間に発生したある遺伝子、〝NEO〟によって生まれているのだよ。今では〝NEO〟そのものが、能力とも言われている。そして国家は、その〝NEO〟を自由に扱え、尚且つその力が強大な人間を集めて何度も、何度も、実験を繰り返している。〝神殺し〟という実験を。』
「ちょっと待って、能力については分かったけど、実験って何なの?〝神殺し〟って……何?」
ピロン!
『そのままさ。神を殺す為の実験だよ。君も過去に関わっているのだけど、やはり記憶が無いのだね。まあそうか、三年前の記憶を消されたのだから。』
「……え?何を言ってるの?僕は記憶喪失なんだよ?なのに消されたって、どういう事なの?」
ピロン!
『疑問の多い少年だね。君の事故は偶然ではない、必然だ。』
「……え?そんなの誰が。」
ピロン!
『本当に鈍いね。あの事故を起こしたのは政府だよ。それに、君はその政府に、三年前殺されている。』
「……。」
ピロン!
『まあそうなるだろうね。だが最後にもう一つ、これが一番大事だ。』
「……大事?」
ピロン!
『ああ。君にはあと一年以内に、やってもらわなければならないことがある。』
「やる?何を?」
「祐ー。ご飯よー。」
ピロン!
『もう時間がない。その答えは自分で探してくれ。そして、もう会話することは不可能だ。だが、これだけは覚えておいてくれ。この世界の人間は誰一人信じるな。このことも誰にも言うな。』
「それって……。」
どうやら僕は、たった数年ですごく沢山の事を経験していたらしい。だけどその事を全く覚えておらず、その上死んでいるなんて、めちゃくちゃだ。それに、こんな僕に何が出来るというのだろう。何もない、こんな僕に。
「あ、あの。僕は一体どうすれば……。」
ピロン!
『すまないが、時間切れだ。では、幸運を祈る。』
「時間切れって……何が?」
それから少し待ったが、メールは来なかった。
━と、変なメールを待っている間に、〝世界の崩壊〟と僕の〝人生の崩壊〟は始まっていた。だけど僕は、この時のことも次の日には忘れていた……。
━そう、僕の体質とは一日置きに記憶を失ってしまうこと。
そして驚くべきことに、この時僕の中に〝NEO〟という能力、【絶対無能力】が誕生していた。この能力は僕を過去に導いていく、重要な鍵となる。
今回この作品を読んで頂きありがとうございました。これからも少しずつ投稿していきますので応援よろしくお願い致します。




