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わたしはオトナになった、

作者: 七海ゆるり

わたしは久しぶりに小説を書こうと思った。

書きたくなったから、書こうと思った。

iPhoneを握りしめ、なにかアイディアが浮かぶのを待った。想像した。


でも書けなかった。


五年前まで、あんなにたくさん想像できたのに、今は全く浮かんでこない。面白い話も、ドキドキする話も、悲しい話も、全く浮かんでこないのだ。


魔法使いになって異世界を冒険する話も、男子高校生と女子高校生のラブコメディも、難病の男の子を好きになってしまった真っ直ぐな女の子の話も、なにもうかんでこない。


わたしはとても空っぽになってしまったようだ。


とても、とても、虚しい。


それが今わたしに書けるものだ。



--------



わたしは学生の頃、とても多趣味だった。

本を読むこと、絵を描くこと、小説を書くこと、ゲームをすること、ダンスをすること…と羅列すればキリがない。

その趣味の中でも特に、歌を歌うことが昔から好きだった。社会人になった今は定期的にカラオケボックスに歌を歌いに行っている。


だが裏を返せば、歌を歌うことで考えることをやめているのかもしれない。


わたしは実家暮しで、仕事に追われ遅い時間に帰宅することが多い。父親はわたしが小学六年生の頃に亡くなり、母親は仕事を掛け持ちし私より遅い時間に帰ってくる。

そして妹が2人いるが、上の妹は朝早く仕事に出て、わたしが帰ってくる頃には寝ている。下の妹は、中卒で引きこもりのニートだ。


そんな家庭で、わたしと上の妹が就職してから、家族全員で顔を合わせることがあまりない。下の妹に対しては、このままで大丈夫かという心配と、いつまでも現状に甘えている苛立ちも感じている。


そして仕事に関しては、就職してからノルマが多いことを知り、接客業特有の苦情処理等も多いことから、あまり好きではない。


時間がないことももちろんだが、仕事に対する嫌悪感、ストレス、そして家族に対する虚無感。

そんな、よくわからないもやもやとした感情が、わたしを逃げるように歌うことに没頭させているのかもしれない。

学生の頃より歌うようになったかわりに、わたしは本を読まなくなった。絵を描かなくなった。そして小説が書けなくなった。



--------



この文章を書く前に、五年前の、書きかけの小説を見つけた。

百円均一の薄っぺらいノートに、手書きで二ページ半ほどまでしか書いていない、突拍子もないファンタジー小説だった。挿絵もわたしが書いたものだった。

でも、それは今のわたしにとっては、とても面白いものだったのだ。


だから小説が書きたくなったのに。


消しゴムで何度も消して、シャープペンシルで何度も書き直した、冒頭しか書かれていないそのファンタジー小説は、とても素敵なものに思えた。

自画自賛だと思うかもしれないけれど、とても心が躍るような小説だった。


今の無機質で、なにも浮かんでこないオトナのわたしより、余程素晴らしい。



五年前のわたしに戻りたい。

そのためにはどうしたらよいか、これからは考えて毎日を過ごしたいと思った。

なんとなく過ごすのはとてももったいない、わたしの毎日を。

なにも書けなかったので、浮かんだことを書きました。思うところはたくさんあると思われますが、これも1つの思いとして、受け止めてくださればいいなと思います。

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