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なんで?なんで!なんで!



俺が家に帰り始めてからというもの、どんどん違和感が大きくなっていく。

気のせいじゃない、やっぱりいつもより煙が多い。しかも遠目でわからなかったけど近づいてきたて分かった。いつもの村じゃない、何かおかしい!


俺は、急いで村に戻る。


(早く…早く戻らないと!)

俺は焦りをぐっと抑え、駆ける。


(村が、村が見えてきた!後少し、あと少しで…!)

俺が森を抜け、見た光景は村のあちこちが焦げた後だった。


「オッチャン!一体何があったの?!」

俺はそこらにいたおっちゃんに声をかけた、この際状況がわかれば誰でもいい!

「おぉ!クロエんトコの子か!」

「そうだ、一体何があったんだ?!」


「そうだった、いや…説明は後だ。取り敢えず、村ん中央に行け!そこにお前さんの親父がいる!親父さんに聞いた方が早いだろう!」

チッ、さっさと教えてくれればいいものを!


「分かった!中央に向かうよ!」

(そうだ、母さんたちはどこだ?!父さんと一緒にいるのか?えぇい!今はそんな事はどうでもいい!早く中央に向かわないと!!)


(クソッ!時間がかかり過ぎる!こうなったら……)

「……《身体強化(ブースト)》!!」

纏う版の、簡単な《身体強化(ブースト)》だ。これで格段に早く行けるはずだ!


(早く、早く早く早く早く早く!!)

「父さん!」

「ユートか?!良かった、無事だったんだな!」

「うん、俺は無事だけどみんなは?!他のみんなはどこにいるの?」


「安心しろ、みんな安全なとこで避難してる!」

「分かった、母さんとにいちゃんもそこにいるんだね?!」


「っ…!セルは念のため守りのために一緒にいるはずだ!」

「じゃあ母さんは?!」

「それについては…後で話す!とにかくお前も早く避難所に向かえ!避難所はこっから向こうへまっすぐだ!後は行けば分かる!」

そう言いながら指を指す。


(まさか、いや、そんな事はないはずだ、絶対いるに決まってる!)

「…っ、分かった!後でちゃんと説明してくれるよね?!」

「………あぁ」

「っ…!」


俺は父さんの感情の込められてない声を聞き、考えたくないことまで考えてしまう。

(嘘だ、大丈夫、きっと怪我しちゃって俺を心配させたくないからあんな風になったに決まってる!そうだよ、何も今決まったわけじゃない!後からでも確認できる!)


俺は、これ以上父さんの話を聞きたくなくて全力で走った。


それからほどなくして、避難所に到着した。

「ユート!」

「…ッ!兄さん!」

兄さんは分かりやすい、避難所の出入り口にいた。


「取り敢えず中に入ってくれ、外は危険だ。室内なら守りやすいからね。」

「ねぇ兄さん?!一体何があったの?!父さんも教えてくれないんだ!」


「ついさっきの事だ、この俺たちの村に侵入者がやってきた。」

「侵入者?!なんでこの森と俺たちの村がわかったんだ!」


「それはまだ分からない、でもそのそいつにここの場所がわかっている事は問題だね。今は、村の大人たちでそいつの捜索をしてるよ。」

「クソッ!」


「ユート、落ち着いて。」

「母さんは、母さんはどこにいるの?!」


「ゴメン、分かんないんだ。父さんと一緒じゃなかったのかい?」

「いなかったよ!どこのも母さんがいないんだよ!」

「ユート!今は騒いでる場合じゃない!」

俺は兄さんに肩を掴まれる。

「っ…!」


俺は今までこんなに大きな声を出した兄さんを見たことがない。

「ゴメン…僕もこんな状況でよく分かってないんだ、今は落ち着いて行動しよう。」

「(クソッ…!)」


なんでこんな事に……



「ユ……君、…ート君、ユート君!!」

「っは!…なんだ、ローザか。」


「なんでじゃ無いよ!ユート君のことが心配でこうやって話してるのにそんなの無いよ!」

「仕方ないよ、なんせユート君のお母さんが大変なんでしょ?」

……え…シアンは今なんて言った?


「母さん…母さんのことを知ってるのか!?」

「ユート君怖いよ!」

「いいから早く教えろ!」

「取り得ず離してくれないかな!」


「……ゴメン…」

「いや、別に気にして無いよ、この状況じゃ仕方ないよ。」

「…それで…母さんが、どうしたんだ?」


「僕も、又聞きしただけで正確かどうかは知らないけど、侵入者の毒にやられたらしい。」

「毒!?母さんが毒に侵されてるのか?!」

「正確な情報かは分からないけど、そんな話が避難中に聞こえてきたんだ。」

「クソがっ!」


いけない、冷静にならなくては。


「……母さんは?」

「どういう事?」

「母さんはどこにいるか聞いてるんだ!!」


「ユート君のお母さんは今は、君の家にいるって聞いたよ?」

「俺の家だなッ!」

「あっ、待って!」


俺は生死の声を振り切って自分の家に向かった。


「ユート!どこに行く気だい?!」

「母さんに会いに言ってくる!」


母さん待っててくれ!今…今行くから!


(母さん、母さん、母さん母さん母さん!)

「クロエさんとこの子じゃ無い、なんでここに来たの!?」

「母さんは!?」

「ダメよ、避難所に戻りなさい!」


(クソッ!)

「退いてください!」

「あっ、コラ待ちなさい!」


そこで俺は信じられない、信じたく無い光景だった。

「………………」

「母……さん?」


それは、ベットの上で弱々しく胸が上下している、元気だった面影の一つない自分母親の姿だった。


左腕が全て紫色に変色し、全身に大量の汗をかきながら寝ていた。

それこそ今にも死んでしまいそうな状態だった。


「あぁ…あぁ、あァァァァァァァ!!」

俺は、前世の自分の記憶がフラッシュバックする。

俺が一人で、何もなかった頃に。




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