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旅路

超お待たせしました

申し訳なさでいっぱいです

がんばりますのでこれからもよろしくお願いします…

 導都から西に伸びる主街道を馬車がゆっくりと進んでいく。

 かっぽかっぽという蹄の音と、車輪のがたがたいう音がのどかな気分にさせてくれる。

 私たちは、順番に御者台に乗って馬車の操作を練習しながらのんびり進んでいる。

 ちょうど今、私は雫ちゃんと並んで御者台に乗り、手綱を引いているところだった。


 元々馬車の操作ができたのは、雫ちゃんとクレアちゃん、沙彩ちゃんとリィシィちゃんの4人だ。

 私と絢佳ちゃん、セラちゃんが順番に教えてもらいながら、御者台には常にふたりが座る。

 馬車に荷物を載せると、あまり広いスペースが残らないという事情もあった。

 みんなの武装なんかもあるしね。


 導都を出発して数日、私もそろそろ操作に慣れてきた。

 私のサポートとして隣に座っている雫ちゃんも、周囲の景色を楽しんでいるようだった。

 初夏の日差しが暖かく、草原を吹く風が頬をくすぐって心地よい。

 まだ導都から近いので治安もよく、街道も整備が行き届いていて安心できた。


 宿場町も多く、これまでのところ野宿しないで済んでいる。

 当座の目的地である碧河(へきが)に面した港湾都市カイレリア市までは、あまり変わらない感じらしい。

 とは言っても、古来より魔禍の絶えない土地であるケペク平原を行く以上、最低限の注意は欠かせない。

 もちろん、野盗対策も必要だ。


 だから御者台にふたり乗っているというのもある。

 後ろは馬車の中のメンバーが気を配ることになっている。

 私の<感勁>や≪感知≫系魔法なども集中力を必要とするので、四六時中使えるわけではないし、範囲の限界もある。

 だから、古典的な視力による確認はどうしても必要なのだ。


「平和だねー、祝ちゃん」

 雫ちゃんが、あくびをかみ殺しながら言った。

「うん。そうだね」

「ボク、眠くなってきちゃったよー」

「あはは」

「えへへー」


 本当に平和だなって思う。

 私に課せられた任務、もしくは運命を鑑みれば、こんなに呑気にしていていいのかと思ったりもするけれど、今くらいはいいんじゃないかなとも思う。

 きっとそのうち、忙しくなるのだろうから。

 そんな風に、私が平和を堪能していると、馬車の中からクレアちゃんが顔を出した。

「なぁ、そろそろお昼にしようよ」

 私は街道の先を見てみた。


 ちょうど少し先に退避スペースがあった。

 そこにはすでに何台かの馬車が止まっている。

「あそこについたらお昼にしようか?」

 私の言葉に、雫ちゃんが右手を上げた。

「おー!」

「おー!」

 私もそれに唱和して、拳を上げた。



 車止めに馬車を止めて、馬を馬車から外して近くの木につないだ。

 それから水を与え、草原の草を()ませる。

 その横にみんなで車座になって、お昼のサンドイッチを食べ始めた。

 私の右隣には絢佳ちゃんが座り、その横にセラちゃん、雫ちゃんが座る。

 左隣はリィシィちゃんで、その横にクレアちゃん、沙彩ちゃんと続く。


 見ていると、雫ちゃんはセラちゃんになにかと話しかけているし、リィシィちゃんたち三人もなにやら談笑している。

 みんなが仲良くしているのは、とてもほっこりする。

 ほっこりしながらサンドイッチを頬張っていると、絢佳ちゃんが言った。

「なにかあったんです? 祝ちゃん、なんかとても楽しそうです」

 さすがは絢佳ちゃん、よく見ている。


「うん。みんなが仲良くしてるのが、嬉しいなって思って」

 私の言葉に、絢佳ちゃんがうなずいた。

「それはそのとおりです」

 そして絢佳ちゃんもみんなを見回した。

「ん? どうしたんだ?」

 クレアちゃんが、私たちのことに気づいたようだった。


 そうやってみんなをよく見ているのがクレアちゃんだ。

 そしてそれは沙彩ちゃんもおなじなのだが、とりわけなにか発言する必要がなければなにも言わないのも沙彩ちゃんらしさだろう。

「ふふっ。みんな仲良くていいねって話してたの」

 沙彩ちゃんは黙ってうなずいた。

 そして、リィシィちゃんは、

「そうですわね! わたくしもそう思いますわ!」

 と声高らかに言い放った。


 リィシィちゃんのいいところは、素直なところなんだと思う。

 真っ直ぐな気持ちをぶつけられるのは、戸惑ったり、恥ずかしかったりすることもあるが、気持ちのいいものだ。

「なになにー? どうしたのー?」

 元気溌剌な声色で話に飛び込んできたのは、雫ちゃんだ。

 雫ちゃんも真っ直ぐな女の子だと思う。

 裏表がない感じというのだろうか。

 リィシィちゃんと違うのは、敢えてなにも言わなかったり、ほのめかすようなことを言ったりすることがあることだろうか。

 なんとなくだが、雫ちゃんの方が女の子っぽい気がする。


 そして、黙って成り行きを見ている風のセラちゃん。

 セラちゃんはあまり自己表現をしない女の子だ。

 しないというより苦手というべきだろうか。

 しかし、訓練の時などは生き生きとしているし、おなじ無手格闘の戦士である絢佳ちゃんとは、ちょくちょく話をしていたりした。


 セラちゃんを迎え入れた頃よりは、表情も明るくなってきたが、まだ少し硬い気もする。

 闘奴としてのこれまでの人生を考えたら、致し方のないことなのかもしれない。

 ゆっくりとでいいから、セラちゃんの心を解きほぐして、みんなと笑い合うようになって欲しい。

「これからも、みんなで仲良く、やっていこうね」

 私がそう言うと、みんなはきょとんとした顔をした。

 唐突すぎただろうか。


「えっと、あのその」

 私が慌てて口ごもると、

「もちろんですわ! ねぇ、みなさん?」

 リィシィちゃんが笑顔を咲かせてみんなに言った。

 みんなも、それぞれの表情でうなずいてくれる。


 嬉しかった。

 私も笑顔を取り戻して、サンドイッチに口をつけた。

 みんなで昼食を終えた後、また私たちは馬車の旅を再開した。

 今度はセラちゃんとクレアちゃんが御者台に乗った。



 その日の夕方のことだった。

 私は馬車の荷台でのんびり後ろを見ていた。

 茜色に染まりはじめた街道を眺めていると、

「怪しい気配がする」

 と、セラちゃんが言った。

 セラちゃんも荷台の中にいたが、神経を研ぎ澄ませるようにして、目を閉じていた。


「殺気を感じる」

 セラちゃんの言葉に、私たちの間に緊張が走る。

 私は<感勁>を使って辺りを探った。

「私も、感じた。囲まれてる」

 私の言葉に、馬車の中にいた沙彩ちゃん、リィシィちゃんが剣を抜き、雫ちゃんが弓を構えた。

 御者台の絢佳ちゃんとクレアちゃんも周囲を警戒した。

 感知したのは人間、街道沿いに十人以上が点在している。

 茂みや木の影に隠れているようだ。


 私は、パーティ通信で位置情報をみんなに送った。

{よし、先制しよう}

 クレアちゃんの言葉と同時に、みんなが飛び出した。

 荷台から一番に飛び出していったのは、セラちゃんだ。

 雫ちゃんとリィシィちゃんがそれに続き、最後に沙彩ちゃんが出た。

 最後に私がテレポートで敵のひとりの目の前に飛ぶ。


 野盗風の薄汚れた男が、びっくりしたように硬直していた。

 私は剣で斬りかかろうとして、彼を斬殺するイメージが脳裏をよぎってしまった。

 私はまだ、人を殺すことに躊躇いがあるようだ。

 男は私の方の硬直に一瞬戸惑ったが、機を逃さず斬りかかってきた。

 私はバックステップで距離を取りつつ、魔法をぶつけた。

「≪麻痺≫」


 男は私の魔力に抗えるはずもなく、その場にくずおれた。

 これでこの男は戦力外だ。

 そう思って一息ついたところで、

{祝、突出しすぎだ!}

 クレアちゃんの叱責が飛んできた。

{ごめんなさい! 今戻る!}


 私は再びテレポートで馬車の前に戻った。

 見ると、数人の野盗が飛び出して近づいて来ていた。

 雫ちゃんが魔力の矢をつがえて弓を引く。

 撃ち出された矢は3本に分かれて、3人の野盗を射抜いた。


 ――すごい!


 その間にも、沙彩ちゃんとリィシィちゃんが草原を走り、野盗に向かっていた。

 馬車の反対側では、ちょうどセラちゃんが野盗のふたりに接敵したところだった。

 その瞬間、ふたりとも武器を持った腕の関節を極められて宙を舞い、地面に叩きつけられた。

 そこへ素早い蹴りで追撃して、ふたりを無力化した。

 そして、振り返ることもなく、別の野盗に向かう。

 セラちゃんも、すごい。


 どこからか矢が飛んできたが、魔法に阻まれて力なく落ちた。

 クレアちゃんだろう。

 クレアちゃんは御者台の上に立って、指揮官役を担って全体を見回している。

 その姿には、安心感を感じられた。

 絢佳ちゃんは荷台の上に立ち、後方を見ている。

「に、逃げろ!」

 どこからか、男の怒号が聞こえた。


 あっという間に手勢が討ち取られて、負けを認めざるを得なかったのだろう。

 こうしている間にも、沙彩ちゃんとリィシィちゃんは堅実に野盗を倒し、セラちゃんが目にもとまらぬ早業で次々と倒していっている。

 雫ちゃんの弓もまた、強力な攻撃だった。

{殲滅するです?}

 絢佳ちゃんが物騒なことを聞いていた。

{いや、それには及ぶまい。全員、撤収!}

 クレアちゃんが殲滅戦を却下し、みんなに集合を呼びかけた。


 私たちは倒した野盗を捕縛して、街道脇の木につなげた。

 死体となった野盗はその側に並べられている。

 近隣の街へはクレアちゃんが≪通信≫を飛ばしてくれて、日が落ちる前には早馬で官憲が到着した。

 引き渡しと近くにあるであろうアジトの捜索などは官憲に任せた。

 私たちは引き連れられていく野盗を見送ったあとで、夕食にありついた。



 その後は特に襲撃などもなく、街道を3週間ほどかけて西に進んだところで、碧杜(へきと)へと辿り着いた。

 黒い森がこんもりと盛り上がり、背後には中の連峰がそびえ立っている。

 碧杜は大きな森で、ここからは街道も細くなっていく。

 しかし、あと1週間も行けば、カイレリア市だ。

 カイレリア市からは碧河を船で下って、ケペク市に向かう旅程である。


 しかし、ここからが最大の難所だということだ。

 野盗はもちろん、怪魔が多く出没するのだという。

 怪魔相手なら私も主戦力になるので、逆に安心してしまうが、気を抜きすぎないように注意しなくてはならないだろう。

 ここからは、周囲への感知を優先して、ゆっくりと馬車を進めることになった。

 そのため、1週間ではなく10日ほどを見込むことになる。

 私たちは、気を引き締め直して、碧杜へと馬車を進めた。

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