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7DAY

7DAY



商業地区 米子デパートメント イベントフロア 8:17



 勝はデパートメントの三階で窓際に詰まれた土嚢に腰をかけ、温くなったコーヒーを喉に流し込んでいた。

 デパートメント正面に建っていた建築物は爆破解体され、ラストバタリオンの部隊だと思われる死体が地面には点々と転がっている。

 日米合同軍の被害はないという訳ではない、ここに来て物資が底を尽きた軍の防衛力は明らかに弱化していた。

 鹵獲されたラストバタリオンの旧式銃器も利用するようになったが、現状では真綿で首を絞められるように戦線が崩壊するのは目に見えていた。


「やぁ、アナーキーズ」


「すまない、お宅は?」


「あはは、マスクがないからわからなかったかい?」


 男はそう言うなり顔の上下を手の平で隠して目元だけを見せる。

 見覚えのある双眸に勝は今までに同行してきた兵士だと気付いて手の平を上げた。

 男は自らの名前を“ジョン・ドゥ”だと名乗ると、勝の対面にある土嚢へと腰をかける。

 勝は男の名前を変わった名前だと思いはしたが、結局は長い付き合いになった男に対して特に疑う事はしなかった。

 ジョンは何かを言い淀んで口を閉ざしていたが、大きく息を吸い込んでから口を開く。


「ジャクソンは余り信用しない方が良い。彼は元CIAだ」


「すまないジョン、俺は余り頭が良くないんだ。分かり易く頼む」


「第一次宇宙戦争時、米国内部には叛乱軍に加担する裏切り者が存在した。それは公になる事無く処罰されたが、幾つかは疑惑の残ったまま放置された」


「それがジャクソンだと?」


 勝の言葉にジョンは大きく頷いてみせると、手元の端末で映像を選択して勝にその動画を確認させる。

 内容は先日のイチブンビルでの様子で監視カメラの映像だ。

 施設内の資料は日米合同軍で処理を行うという話であった。

 しかし映像内に映り込む兵士達は技術資料やサンプルを持ち出し、ダンボールに詰め運び出している様子が映し出されている。

 勝はジョンに端末を返却すると両手で顔を覆った。


「何故俺みたいな一般人にこんな話を? 何が目的なんだジョン?」


「彼等は最終的にこのメガフロートを爆破する心算だ」


「なんだと?」


 地球上では第二次宇宙戦争の敗北後、アンチサイエンス運動が本格化された。

 人類の扱いきれない科学技術を規制するという建前であったが、実質的には少数による多数派支配の為に科学技術の占有を狙った物だ。

 権力が磐石となった権力者の狙う、次の目標は永遠の支配。

 イチブンビルで行われた研究は不老不死に関する研究だったのだ。

 突然話が飛んだ事に勝は怪訝な表情を浮かべるが、一文 悟の最後を思い出し、有り得ないとは言い切れずにその口を噤んだ。


「“奴”等の仲間ってことなのか?」


「派閥間抗争、宗派の解釈による行き違いって奴だね」


「ふざけやがって!!」


 勝が握っていたコーヒーのスチール缶が握り潰される。

 どんな理由があったにせよメガフロートの住人の多くが犠牲となった。

 暴徒化した者達がイチブン.copによる人体実験の結果だとしたら、勝は薬害被害者を相手に戦っていた事になる。


「本日セントラルタワーへの攻略が開始される。ジャクソンの目標は底部にある中央管理室」


 セントラルタワーにはメガフロートの管理システムを一括管理可能な中央管理室が存在した。

 幸いジャクソン達の仲間は日米合同軍の一部に過ぎない。

 彼らの行動を阻止してメガフロートの連結開放を止めなければ、メガフロートは太平洋上で解体され、それぞれのブロックは海の底へと水没する。


 僅かに残された生存者達の生存も絶望的となるだろう。



行政地区 セントラルタワー 周辺 11:43



 セントラルタワーの上空では雲の渦が逆巻き雷光が轟いている。

 頂上の天板では何が行われているのか定かではないが、勝達には時間が残されていないのは確かなようだ。

 ラストバタリオンの活動も無視は出来ない上に日米合同軍内にジャクソンの仲間がどれだけ居るのか把握できない以上は勝達のみで対応せねばならない。

 ジョンの言葉もどれだけ信用できるのか分からないが、文吾と末吉も勝の提案に賛同した。

 

「伊波さん、時間のようだ」


「最後の最後でおもろいことになったやんけ」


「巻き込んだみたいで悪いな。文吾・末吉」


「水臭いこと言うなや、パァッといこうやパァッと!」


 文吾がヘルメットを被りながら勝の肩を叩くとジョンの先導で三名は装輪車両から表へと飛び出した。

 辺りには銃声が轟き、日米合同軍とラストバタリオンの戦闘が既に始まっている。

 日米合同軍は補給の途絶による物資不足があったが、ラストバタリオン側との戦力は拮抗しているようだ。

 目前から三名のガスマスクが土煙から姿を現すと、銃爪を引き絞った。

 

<SIG SAUER P230JP>(15-3) <1D20>15・11・12・2・1

<M1911A1 MEU>(10) <1D20>2・18


<5D8>5+7+8+1+8+4=> 33

<1D8>3+1=> 4


 歩兵は文吾の放った銃弾によって地面へと引き倒される。

 既に日米合同軍の施設内の侵入は始まっているらしく、辺りには死体の数が増え始めた。

 巻き起こる粉塵に勝は小さく咳をするとセントラルタワーへと踏み込んだ。

 玄関入り口は広く取られており、案内板が掲げられている。

 一週間前に起きた地震の発生源はここだったようだ。

 アスファルトで作られた床は大きく崩れ階下へと繋がる穴を開けている。


「おあつらえむきやな」


「ジャクソンは既に降りた後のようだ。我々もザイルで降下しよう」


 ジョンはザイル降下について簡単に説明すると男達は階下へと下りていった。

 三人は問題なく地下へと降り立ち、勝はロープの送り出しに失敗して着地したが特に問題はない。

 セントラルタワー地下は非常用電源が稼動しているのか、電灯の明かりが灯されていた。

 ジョンの先導によって通路を走り出すと地下二階へと足を向ける。

 セントラルタワー地下へ繋がる非常用通路の前に研究員と思しき暴徒が一名倒れていた。

 かなりの時間が経過している為なのか遺体には腐敗が進んでいた。


「階段が瓦礫で潰れている」


「もう一方の非常用階段を利用しよう」


 地下二階への通路はセントラルタワーの振動によって破断していた。

 外部からの圧力が加わった事で構造物自体に歪みがあるようだ。

 セントラルタワーは軌道エレベーターとして建造された物だが基底部その物の設置はされておらず、中央は中空となっている。

 その為、構造物全体は円形になっており、大きく回りこむように迂回する必要がある。

 一方の非常階段を駆け降りると、二階・三階も問題なくパスした。


<運搬>(10) <1D20>8


「ここが最下層の筈だが?」


「行き過ごしたのか、だが連中の姿は見えなかったぞ」


「ジョン、ここから先へはこのリフトで降りる様だ」


 末吉が指を差す先には貨物搬送用のリフトが設置されていた。

 広さは10m2程で恐らく降りた先に見張りが待ち構えている事は間違いがない。

 勝達はリフトにコンテナを積み込み遮蔽物として利用すると、階下へとリフトを降下させた。

 リフトが下りた瞬間銃声が鳴り響くと降下するリフトに向かって、銃撃が開始される。

 ジョンは階下にいた四名の隊員に向かって威嚇射撃すると、末吉はテルミット爆弾を投下した。


<コルト AR15A4>(14-5)<1D20>5・8・18・12・12・12・2・5・15・5

(テルミット爆弾) <1D20>10


<5D8>3+4+8+5+6+6=> 32


 テルミット爆弾が爆発すると、室内に噴煙が巻き起こった。

 待ち受けていた兵士達は咳き込みながら身を低くすると、ジョンの連射する銃撃によって地面へと倒れ伏す。

 文吾はコンテナの遮蔽から身を乗り出しながら、拳銃による反応射撃を開始する。


<SIG SAUER P230JP>(15-5)<1D20>9・19・2・7・5


<4D8>8+4+2+3+4=> 21


 残存していた一名の処理を問題なく終えると勝達は遺体を確認する。

 男達の眼球は真っ赤に染まっており、勝は微かに響く耳鳴りの音を聞いた。

 ここに来て勝はジョンの話が事実である事を完全に理解する。

 だが、あのジャクソンが何故このような行動に出たのか、勝にはまるで理解は出来なかった。

 無法地帯となったメガフロートの中にあって秩序を構築しようと行動していた姿勢に偽りはなかった筈だ。

 勝達はジョンの先導によって奥へと進むと、曲がり角の先には二名の兵士が待ち構えていた。


「何やねん、あの格好?」


「近付かれる前に仕留めるぞ!」


<SIG SAUER P230JP>(15-3)<1D20>12・15・5・20


<2D8>8+3+2=> Def


 対爆スーツを身に包んだ“ジャガーノート”は文吾の放つ銃弾を物ともせずに突進する。

 文吾の拳銃に排莢詰まりが再び発生、文吾はそれを床に投げ捨て末吉の散弾銃を予備として受け取った。

 処刑人に近い膂力を持ち得たそれは、拳銃の被弾による衝撃すらも耐え切っていた。

 末吉は有機溶剤で溶かした発砲スチレンをガソリンに混ぜた火炎放射器を構えるとジャガーノートに向かって放射を始める。


<コルト AR15A4>(14-5)<1D20>14・10・13・19・2・12・15・17・13

<即席火炎放射器> <1D20>1


<1D8>2+3-2=> 3

<2D6>6+4=> 10


 火炎放射をまともに浴びたジャガーノートは視界を失い僅かに怯むと、ジョンはその間断を縫って自動小銃を撃ち鳴らす。

 発射された銃弾はセラミックプレートに阻まれ貫通はしなかった物の相手に対して効果はあったようだ。

 目前まで迫ってくるジャガーノートに対して、勝はスレッジハンマーを振り上げると、頭部に目掛けて振り下ろした。


<スレッジハンマー>(17/2) <1D20>4


<1D10>2+<1D8>2+1=> Des


VIT:17+1-5 <1D20>18


 頭部へと命中したスレッジハンマーはジャガーノートの頭蓋骨を粉々に打ち砕き男はその場で転倒すると動かなくなった。

 残った敵はガトリングガンを両腕で保持すると横方向へ向かって横射を加える。

 勝は咄嗟に頭部を破壊したジャガーノートを抱えるとその背後へと身を隠した。


<M134 ミニガン>(10-5)


 <1D20>19・19・9・16・6・16・12・14・9・17・20・11・7・13・9・15・14・10・16・15


 通路内に銃弾の雨が通過すると、破砕片が勝達の上へと降りかかった。

 制動に失敗したのかその銃弾のほとんどは的を外れ見当違いの方向へと飛んでいった。

 勝は防弾壁として利用していた敵の死体を相手に蹴り飛ばすと、ジャガーノートは仲間の死体にもたれ掛かられバランスを崩す。

 文吾は通路の角から散弾銃を向けるとジャガーノートの頭部を狙い撃った。


<ウィンチェスターM1912>(15+8/2) <1D20>7


<3D6>2+5+1=> Des


 超高分子量ポリエチレンで成型されたヘルメットは小銃弾をも抑止するが、首の骨がその加圧に耐え切れる訳ではない。

 頭部に散弾銃を撃ち込まれたジャガーノートは首の骨が折れ、両手をばたばたを虚空にさ迷わせながら、うつ伏せに倒れ込んだ。

 通路の先には電子ロックのドアが存在しており、ロックがかけられているようだった。

 ジョンが端末を操作して扉を開くと勝はその場から一歩部屋へと飛び出した。


「ジャクソン!」


「勝。一体どうしたんだい。血相を変えて?」


「ネタは割れとるんや! ドアから離れんかい!」


 ジャクソンは中央端末の個室に繋がる、エアギャップのある空間に居た。

 広さは30m2程で周囲には障害物の何も存在しない空間だ。

 ジャクソンは勝達に銃を突きつけられ観念したように腕を上げると、頬を吊り上げておどけて見せた。

 中央制御室の電子ロックを抉じ開けようとしたのだろう、足元には電子ロックに繋がれたノートPCが置いてある。

 勝は感じていた違和感を吐露すると、ジャクソンに詰め寄った。


「何故こんな事をする? お前も“奴”等の仲間なのか?」


「これは私の知り合いの話なのだが……」


「!?」


「彼の父親は正義漢だった。社会正義を信じて警察の職務に誇りを感じていた」


 ジャクソンは語るとその表情は無表情な物へと変わっていった。

 文吾は明らかに動揺した動作を見せ、勝も思わず銃口を反らす。

 対話によって解決できるのであればジャクソンを殺害せずとも捕縛するだけでよい。

 そういった甘い期待が二人の心には湧き起こった。


「彼の父親は職務遂行中に暴徒の襲撃を受け殺害された。その時彼はこう思った……」


「勝、銃を上げろ!」


「人間は動物と変わらない“家畜”は管理されなければならない」


 まず膝を崩したのはジョンであった。

 両耳を塞ぎ何かに抗うように唸っている、勝にはその理由が分かっていた。

 今までにない耳鳴りが彼の脳裏には届いていたからだ。

 そして彼はここに来てようやく気付く、この耳鳴りの音は外からではなく自らの体の内側から鳴り響いている。

 仲間達の様子に文吾は驚愕の表情を浮かべるとジョンの元へ駆け寄る。


「宇宙人は我々の身近に存在している」


「妙な動き見せんなや!」


「エンタングルメント、一方の量子を観測した瞬間、もう一方の状態も確定する。では、事象の地平面に落ちた量子ペアの一つを観測したら、もう一方の量子はどうなる?」


<ウィンチェスターM1912>(15) <1D20>15


<3D6>6+1+4=> 0


 文吾が腰だめに構えた散弾銃を発射すると、ジャクソンの後方の壁に着弾する。

 勝達は困惑の表情を浮かべ、耳を塞ぐ勝に向かってジャクソンは歩き寄った。

 接近するジャクソンに向かって文吾は何度も散弾を発射するが命中しない。

 命中はしているにも関わらず、弾丸が皮膚表面を滑っているのだ。


「時空を無視する量子の性質、君達が宇宙人の宇宙船を見ないのは、そんな玩具は最初から必要ないからさ」


「ジャクソンを止めろ!」


 次の瞬間、ジャクソンの肉体がゴムのように内側に向かって捲れ上がると黒い何かが噴き出した。

 磁界によって形作られる炭素の塊が自己組織化を行い、その姿を形作っている。

 ジャクソンであった“物”が、ジャクソンではない“物”へと変容していく。

 黒い肉の塊、炭素系有機物、しかし哺乳類猿目人科ではない“何か”が姿を現す。


「はじめましてヒューマン。私が――」


「こんなバカな……こ、こんな現象が起こり得るのか……?」


「“我々”が“宇宙人”だ」


「くたばりやがれ! 化け物!」


スレッジハンマー(17) <1D20>16


<1D10>6<1D8>5+1=> 12


ジャクソン HP:88/100


 勝はスレッジハンマーを掲げて、ジャクソンに向かってハンマーを振り回す。

 ジャクソンの表皮表面では止まる事無く、ハンマーヘッドが体へと食い込んだ。

 だが、その感触はまるで濃密なゴムに打ち込むような手応えしかない。

 黄玉のような眼光が頭部に開くと、皮膚下に蠢く白い筋が蠕動する。

 ジョンは状態が幾分回復、勝に射界から退避するよう命令すると自動小銃を連射する。


<コルト AR15A4>(14-5)<1D20>18・4・11・14・11・1・4・7・14・17


<5D8>4+5+6+7+7+6=> 0


 衣服の無い今ならはっきりと分かる、発射された銃弾はジャクソンの皮膚表面を鏡面のように滑りながら弾道が湾曲しているのだ。

 末吉は先程勝が殴りつけた皮膚の箇所を目視で確認する。

 そこは明らかにダメージを受けてへこんでおり、タールのような液体が滴っている事が確認できた。

 ジャクソンが射撃攻撃だけを選択して避けられる原理は不明だが、質量か面積の問題であると判断する。


<武術>(15) <1D20>9


<2D6>6+2=> 8


ジャクソン HP:80/100


<論理>(14) <1D20>13


 ジャクソンに接近して前蹴りを見舞うと敵はその場で転倒。

 末吉は仮説が正しかった事を確認すると、ジャクソンはその眼孔に苛立ちを窺わせた。

 他にも何らか弱点がある可能性を末吉は確信すると周囲を見渡す。

 ジャクソンが使用していた物だろうか、足元に転がっていたペンがジャクソンの方向へと転がっているのが見えた。


「伊波さん。磁界だ!」


<殴る>(15) <1D20>1


<2D20>6+4-2=> 8


回避(7) <1D20>10


椚 末吉 HP:4/12


 ジャクソンの殴りつけた拳によって末吉は上空へと打ち上げられると天井へと激突。

 地面へとそのまま叩き付けられると口から吐血し気絶してしまった。

 勝はその言葉を聞いて地磁気の方角へと向いて金属製の床板に数度ハンマーを叩きつける。

 磁気を帯びたスレッジハンマーを一回転させジャクソンの腹に目掛けてハンマーを振り上げる。


「ジャクソォォ――ンッ!!」


スレッジハンマー(17) <1D20>16


<1D10>5<1D8>4+1=> 10


ジャクソン HP:70/100


 勝の振り上げたスレッジハンマーによって殴りつけられたジャクソンは跳ね上げられると床板を横転して受身を取る。

 立ち上がろうと膝を着き腰を上げようとした瞬間、足がもつれ転倒した。

 磁界を乱されることによって、ジャクソンの機能が破綻するという末吉の推理は見事に的中。

 文吾がジャガーノートの残していたバルカンを抱え上げると、彼に向かって引き金を引いた。


「すまんな」


「かまわないさ」


<M134 ミニガン>(15-5)<1D20>16

<1D20>19・1・19・1・11・14・1・4・1・1・11・1・8・10・3・13・3・20


<10D8>5+7+5+6+2+3+1+7+7+1=> 44

<7D8>7+2+3+1+4+6+6+9=> 38


ジャクソン HP:0/100



太平洋 メガフロート上空 21:11



 澄み渡る太平洋に浮かぶメガフロート上空に報道ヘリの群れがスクープを求めて飛び回っている。

 メガフロートで起きた一連の事件は大規模の暴動であったと結論付けられ、報道規制が敷かれると公になる事はなかった。

 当局からの追求から逃れる為に生き延びた生存者の一部は名を変え、その存在を掻き消した。

 仮に彼等が本当の事を口にしたとしてもそれを信じる者も居ないだろう。


『現場上空から中継です。御覧下さい、科学の最先端都市として彩られたあのメガフロートが炎上しています』


 しかし、メガフロートによって起きた暴動によって四百万人に及ぶ死者が発生したという事実に関しては報道管制が敷かれる事は無い。

 メガフロートの建設に携わった関係者はメディアからの激しい追及を受け、多くはその姿を消した。

 地球での軌道エレベーター建設計画は白紙に戻り、翌年にはメガフロートの破棄が決定される。


『この惨状は私達人間に忘れてはいけない教訓を与えてくれます。行き過ぎた科学技術の力は人類を滅ぼす“プロメテウスの火”でもあるのです』


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