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なぜ
ウキウキと、化粧室から出た私は、愕然とした。
紅夜様の隣に女がいるということに。
紅夜様と腕を組んでいる、ということに。
紅夜様と話している、ということに。
「紅夜様、なにか食べ物をお取りしましょうか」
「あぁ、頼む」
「ふふ、取ってまいりますね」
紅夜様に笑いかけて、女は食べ物を取りに行く。
給仕から器を貰い取りに行く。
紅夜様が食べる物を、取りに行く。
なぜ。
なぜ、紅夜様の隣に女がいるの。
なぜ、ここに小雪がいないの。
小雪は、用事があって、今日ここにはいない。
なぜいないの。
なぜいないの。
小雪!
あぁ、苛立つ。
紅夜様。
その女は誰ですか。
なぜここにいるのですか。
ここにはいろいろな会社の社長がいる。
そこで男性が女性を連れてくる理由はたった一つ。
“婚約者”




