5 馬車とお嬢様と護衛と私
読んで下しゃり誠にありがたうごぜーます。
拝啓 お母さん&ロコモコ(飼い犬)序でにお父さん
突然だけど、私は異世界にやってきました。
不安だけど、真白先輩と一緒なのでなんとかやっていけそうです。
異世界ボッチは回避したので、寂しくないです。
でも、帰る方法があったら必ず帰ります。
帰る方法あるの・・・かな?テンプレ的な魔王討伐しなきゃダメ?
兎に角、心配ないです。ノープロブレムです。
保存。
初馬車の乗り心地はゴトゴトお尻を刺激して、微妙です。
後ろを振り向けば、盗賊達の強制マラソン。
手を後ろに拘束されてるので、転ぶと悲惨です。
この馬車は彼らの為に止まる事はありません。
泣こうが喚こうが、町に着くまで引き摺る事になるでしょう。
彼等も必死です。顔もコワいです。
馬車の中には、女性の護衛2名とお嬢様、私の計4名。
御者席には老執事さん。
先輩は・・・・なぜか幌の上で腕組み仁王立ちしてます。
老執事さんの言葉も聞かず「心配ない」とヨジヨジとよじ登っていく様を
私は見ている事しか出来なかったです。執事さん、申し訳ない。
で、でも、貴族のお嬢様が高飛車な人でなくて良かったです。
年齢が近い事もあり、気さくに話しかけてくれます。
「コウハイ様、先ほどは私達を助けて頂き有難うございました。私はファーレン公爵家三女、ステラ・ファーレンと申します。お見知りおきを」
コウハイでは無いと言いたいが、貴族相手にツッコめない弱い私。
世界が私の名を後輩にしたがる悪意を感じる。
綺麗な金髪、豪華なドレス、そして一人称がワタクシですってよ、奥様。
実にぽわぽわっとして、これぞ貴族のお嬢様って感じだよ。
髪にドリルを装備してないところがポイント高い。
あれは駄目だ!高飛車な雰囲気しか醸し出さなくてお遊びなさいますわ。
「はい、此方こそ馬車に乗せて頂いて助かりました。ステラ様」
極力、無礼のないよう立ち振る舞おう。
先輩達とは違うのだよ、先輩達とは!
なんか、護衛のお二人は終始無言を貫いてますし、ぶっちゃけ居辛い。胃も痛い。
「いえいえ、強力な護衛が増えたと思えば、私共の方が助かる位ですわ。それでコウハイ様とマシロ様はどちらからいらしたんですか?御二人ともとても不思議な恰好をしておられるので、かなり遠方のご出身かと存じますが、例えば・・・・東のロマリエか西のシトラーゼ辺りでしょうか?」
興味深々な感じだよ、このお嬢様。
純真無垢なキラキラ視線が痛い。本当に痛いからマジデヤメテ、カンベンシテ。
なぜか私のHPがゴリゴリ減っていく。
「なんといいますか、もっと遠く・・・カナ?東の小さい島国育ちなんですよ、私達」
異世界なので、この国一周しても辿り着けないほど遠いところにあります。
私、嘘は言ってませんよ。
「ロマリエより遠くですか?凄いです。私と同い年位の女の子がお二人で、羨ましいです」
東のロマリエ。知らないけど遠そうだ。
全然、行った事ないけど。
「そ、それより、この先にあるタルタロってどんな所なんですか?私達、この国についてあまり知識が無いもので教えて頂けると助かります」
「はい。迷宮の町タルタロは文字通り、ダンジョンの近くに造られた町です。初代勇者様が踏破されてから300年未だ第二の踏破者が出てない上に貴重なアイテムが多数存在するとして有名で、冒険者の方が多く住まわれる活気のある町として知られておりますわ」
ダンジョン+冒険者=お宝&レベリング
所持金ゼロ。
お腹も空いた。
「そ、そのダンジョンには誰でも入れるのかな?」
「そうですね。詳しくは分かりませんが、冒険者ギルドにお伺いしてみた方が宜しいかと存じます」
「はい。考えておきますね」
来た!テンプレの宝庫、冒険者ギルド。
ゲームだと腕に覚えのある荒くれ共が日々、昼夜を問わず飲んだくれている場所だったハズ。
何年もランクが上がらない下っ端冒険者はオヤジ狩りならぬ新人狩りをして有能そうな奴を潰して、そんなに暇ならダンジョン籠ってろって思わせる、あの冒険者ギルドか。
待ってろ、ならず者共よ!お前らのテンプレは必ずブチ壊す!! 先輩が。
町に到着したら先輩と相談してみよう。
当座の資金を調達をしなくちゃならないから反対はしないと思う。
「ほら、見えてきましたよ」
町に到着したのは、夕日の眩しい時間帯。
さぁ、冒険の始まりだ!
そろそろ冒険者として活動したいです。
マダダ、マダヤラセハセンヨ!