外伝1 地竜と天災の襲来
今回は外伝にしてみたザマスよ
「チ、地竜様ッ。人間ガコちらニムカッて進軍シテクル。デアリまス」
また、忌々しいヒト種どもが攻めてくるというのなら返り討ちにすればよい。
下らん報告をしてくる配下のゴブリンにアースドラゴンはウンザリしていた。
知能が足りん奴は、自分で考える事をしないから嫌になる。
なんでも報告すれば良いと思っていやがる。
「敵の数は?」
「ハッ、ソノ・・・」
言い難そうにするゴブリンを威圧しながら、考える。
我も少し前に勇者と名乗る少しばかり強いヒト種を屠ったばかりだ。
自慢の鱗に傷を付けられたぐらいで大した事はなかったが、それが原因と思われる。
その報復となると、余程の大群が予想される。
だが、蠅がいくら集ろうが所詮は烏合の衆。最強の竜種に戦いを挑もうなど千年早いわ。
「なんだ。早く答えろ!」
「ヒト種、1デアリまス。敵は1名・・・デスガ、既二先行しタ〈バトルウルフ突撃部隊〉及ビ〈ハイ・ゴブリン第一小隊〉ガ瞬時にカ、壊滅シマしタ」
不格好な敬礼をするゴブリン。
「たった一匹だと」
ピクッ
なんたる無様。なんたる屈辱。
もしもこんな事が他の竜に知られれば、特に我が竜種であるのに飛べないと馬鹿にしてくる空竜に笑いのネタを提供してやるようなものだ。それはならん。
あの弱輩の若造に上から目線で笑われるのは我慢がならん。
竜種の存在意義は強さであって、決して飛べる事ではない。
「まぁ良い。全軍出撃!たかが一匹と侮るな。敵の正体は大方、勇者と名乗る者に類する奴だ。全力を持って即時殲滅せよ!正面からでなく、側面、後方の全方位遠距離攻撃のちに接近、跡形も残すな!!」
「ゼ、全軍デ・・スカ。リョ、了解シマしタ。ソく時殲滅イタしマス」
ドタバタと品のない走りをして去っていくゴブリン。
これでいいだろう。獅子でさえ兎に全力を出すのだ。
だが、我は誇り高き竜種の中でも特にエリートの地竜なのだ。
オーガだけでも過剰戦力であったかもしれんが、我が歴史に一片の汚点も許されるものではない。
さぁ、奴らが帰ってくるまでに一眠りしておくとしよう。
足音が聞こえる。
ヒト種一匹とはいえ随分と早かったものだ。
先ほどのゴブリンとはまた別の奴らしい。
「ゼ、全軍・・・・壊滅・・シ・・・・」
「な、なんだと」
報告を終えると、そのゴブリンは動かなくなった。
有り得ん。
また、足音。今度はヒト種の物で間違いないだろう。
現れたヒト種の姿を見て、我は一瞬、ほんの一瞬だが思考が停止した。
「有り得ん」
目の前にいる此奴は本当にヒト種なのだろうか?
思っていたイメージと全然違う弱そうな此奴が?
ヒト種が我と相対する時、大抵の者はその身に鎧を纏い、手には対ドラゴン用の大剣。
表情が分からないほど防御に徹した兜がセオリーであった。
だが、目の前の奴は猫の着ぐるみに手には武器すら所持しておらん。
しかも子供だ。全く馬鹿にしているとしか思えん。
こんな奴に我が軍は敗れたというのか?笑い話にもならんぞ。
だが、油断はしない。我自ら奴の息の根を止めてやる!
光栄に思うがよい。まずはそのか細い腕を頂く。
ぐっ か、硬い。噛み付いた我の牙のほうが折れそうだ。
『ほら、怖くないでござるよ。《ガブッ》こわ・・・く』
バシッドカッ
なんだ、この重い攻撃は?
あと一撃でも喰らえば、我の命は尽きるやもしれん。
『怯えていただけなんだよね? ね?』
コクコクッ
『よし、お前はワタシの言葉が理解できてるようだな。森から出たいから道案内を頼むぞ、トカゲ』
この者は、我に道案内をさせる為だけに、魔物を殲滅させたのか?
そんなバカな・・・。
その後、この者の仲間と思われるヒト種も途中、背に乗せて森の外まで案内をした。
竜種の肉体と血はヒト種にとって大層価値が高いものだと聞いていた為、殺されるのを覚悟していたが案内の感謝をされてそのまま開放された。
短いようで長かった最悪の一日が終わったのだ。
そして思った。
もう戦うのは止めようと。
ヒト種コワイ。
今度は誰も訪れない森でひっそりと暮らそう。
地竜の軍団は全滅したけど真白先輩は魔物を一匹もキルしてないです。
むしろ何もしてないです。歩いてただけです。
伝令役のゴブリンも気を失っただけです。