3 先輩と盗賊達の災難
異世界とテンプレは切っても切れない関係なのですよ。
やっと森を抜け、街道に出る事が出来た。それにしてもお尻が割れたように痛む。
「トカゲ、ご苦労だった。もー帰っていーぞ」
「トカゲさん。ありがとうございました」
アースドラゴンが手を擦り、頭をペコペコ下げて森の中に消えてゆく。
何度も後ろを振り返りペコペコ。
なんかドラゴンのイメージが私の中で急降下してる↘
「さて、右と左どちらに進むかだが、こんな時こそ奴の出番なのだが居ないものは仕方がない。時間もないしアレでいくよ」
「?」
先輩に手渡された一本の棒っきれ。森の中で見つけたであろう木の枝は持ちやすく且つ丁度いい長さで、中々良いものだ。疲れた時の杖代わりには丁度良い。
だが、なぜ今これを手渡されたのかがイマイチ理解出来ない私。
「地面に付けて倒すのだ」
はいはい、言われた通りにしますよっと。
コテッ
「右に倒れましたよ、先輩」
「よし、左に決定!出発するぞ後輩」
杖は右に行けと思し召しなのに、敢えて逆を行く真白先輩のそこに痺れないし、憧れない。
そこまで私の運が信じられないのかと遺憾の意を露わにします。
まったく失礼しちゃうわ、ぷんすか。
「置いてくぞ、後輩」
「ちょ、待ってくださいよ~」
本当に真白先輩は自分勝手で困る。やれやれですよ。
少しは私を見習って欲しいものです。
『じゃあ、後輩は右に行くのか、じゃあな』とか平気で言う人なので、口にはしませんが社会に出たら苦労しますよ・・・・・周りの人が。
「・・・女・・・・生け捕り・・・・他は殺せ・・・・」
「・・・・・セバス・・・・・・」
「くっ、お嬢様には・・・・・」
なんか前方で物騒な物音や争うような声がする。
嫌な予感がします。今こそ回れ右です、先輩。
「前方、700。ヒャッハー6」
どんな時でも慌てない。幼い、描けない、シャベルない。
ヒャッハーはあの汚らしいモヒカン族の事だろう。
先輩はどうするつもりか知らないが、私は逃げを推奨します。
状況からいうと、馬車を盗賊らしき人達が襲ってるテンプレな展開になってる。
人数と実力から護衛の人達が押されてる。あ、一人倒された。
「先輩、もしかしたら助けに行く気ですか?ヤバいですよ、ここは逃げの一手です。ワタシたちだって近づいたら殺されちゃいますよ」
「あいつら、どっちが悪者なんだろうな?」
「?・・・どう見ても襲ってる方が悪者じゃないですか」
「まあ飛び交う火の粉は振り払っておくか」
先輩はそう言うと、徐に何かを取り出す仕草をした。
どこに締まってあったのか、そもそもなんでそんな物があるのか疑問は尽きないが考えないのが一番である事を私はよく知っている。
なんだかんだで、敵はもう目の前なのだ。既に盗賊達に気付かれる距離にビビる私。
「・・・点火」
先輩が手に持っているのは、ロケット花火。
しかも、大量。見た感じ1000本はある。
ロケット花火ってこんな大きさだったかな?記憶の物より随分大きい気がする。
それを次々とライターで火を付け始めた。あかん、これやったら絶対アカン奴だ。
次々、前方に放たれる悪魔の火矢。
「狙い撃つ」
いや、もう撃っちゃってるし。
とてもお見せできない阿鼻叫喚が繰り広げられております。
未知の脅威に慌てる盗賊。
全弾、撃ち終わった頃には目の前に立っている人の姿はなかった。
千本ノック終了。
本気で洒落にならないので、良い子は真似しないでね。
花火は人に向けてはいけません。
先輩の持つロケット花火に着火作業を手伝っていたのは内緒である。
お姉さんとの約束だ!
【ロケット花火】通常の3倍の火力にきっと君は涙する。
従来品 ヒューン・・・・・パンッ
本製品 シュン・・ボンッ
※注意事項 決して人に向けないでください。