11 先輩と冒険者ギルド
毎度お読み頂き有難うございます。
この宿も食事以外は言う事ない。
温泉のお陰で、昨晩はゆっくりと眠れたよ。
見知らぬ天井だ、とか言うつもりはないよ。
昨日も見たよ、この天井!
って先輩がいない!?
もしかして捨てられた・・・? いや、まさか・・だよね?
大丈夫!きっと朝の散歩とか朝食を作ってくれてるとかだよ、ははは。
今、何時?
バタン ドタタタタッ
勢いよく開けられるドア。そして廊下から階段へ。
「看板さん。先輩、先輩を見ませんでしたかあぁぁぁぁ」
肩をガシッと掴み前後に揺らされる看板娘さん。
慌てていたので、呼ぶ時に娘を付け忘れたけど、どうでも良かった。
「お、落ち着いて、落ち着いて下さい。お客さん」
やっぱり置いて行かれたんだ。ワタシ、イラナイコナンダ。
そう思ったら、涙が溢れてきた。
「お、騒がしいと思ったら後輩か。髪、ボサボサだぞ。顔洗ったらメシにするぞ」
「しぇ、しぇんぱ~い」
ポロポロ涙が止まりません。
ついでに鼻からも綺麗な粘液が出ろ~んしてます。
「な、なんだ。わっバッチイ。鼻水付けようとすんな」
私のハグを先輩が躱す。追い縋る私。
躱す。追い掛ける。躱す。追い掛ける。躱す。追い掛ける。
「嫌ですぅぅ。なんでぇぇ逃げるんですかぁぁ」
「当たり前だ!!!!!」 ゴンッ
殴られました。酷いです。でも嬉しいです。
あと、台詞の使い所が違います。
仕方がないので、言われた通りに顔を洗い、水で髪を撫で付ける。
朝食はパンでした。
日本人だから米が食べたいものだが、我慢する。
あの硬いパンじゃなくて柔らかトーストのそれにベーコンエッグがオンしてました。
サクとろです。はむはむっ
今日は他の宿泊客の方もいるみたいで、少し視線を感じる。
なんか変だろうか?この宿に鏡が設置されていない為、身嗜みに自信ナシ。
そしてコーヒー・・・苦いです。
砂糖とミルクをマシマシでお願いします。
お子様舌と罵られましたが、構いません。
ブラック珈琲なんか飲んでる奴は舌がオカシイのです。
苦味が美味しいとか有り得ません。
甘いは正義!美味しいとは甘い事。意義は認めません。
部屋で一休憩を挟んでから、冒険者ギルドへ向かう事になった。
そして到着しました冒険者ギルド。
あの宿から目と鼻の先ぐらいの近さだった。
なんという灯台元クラシック。
大きさは、冒険者が迷宮に集う事もあってか他の建物と比べると大き目。
入り口は西部劇とかで見られる酒場だかバーなんかに見られる如何にもウエスタンな感じのドアだ。
両開きになっててバーンッ!!って入っていくタイプのアレだ。
テンプレ野郎が居ませんように、受付嬢は美人で優しい人でありますように。
両手を合わせて、神に祈る。
頼むよ、神様!
「何してんだ、さっさと行くぞ」
「ちょっと待って下さいよ~」
いざ往かん、冒険の扉へ
「たのもー!!!」
勢いよく開かれるウエスタンなドア。
「先輩、恥ずかしいから止めてください」
でも分かる。アレを見ると、やりたくなりますよね。
中に居る人達の視線が私達に集中して、注目の的だ。
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私の名前はエルレーネ。
この冒険者ギルドの受付嬢をしているエルフだ。
今日も馬鹿共の案内をしている。
ギルドの受付をしていると毎年十人に一人の割り合いで頭のネジがな外れてしまった可哀想な新人が現れるので、誰がそいつの担当になるのかで揉める。
そういう目立つ馬鹿は例外なく先輩冒険者の洗礼を受ける事になるのだが、ギルドは基本的に不干渉の立場だ。
決して世界は甘くない。モンスターとの戦いでは理不尽なイレギュラーが発生し、ベテラン冒険者ですら帰ってこない事もある。
新人冒険者の死亡率は更に高い。
だが、その変人奇人と呼ばれる冒険者になった者達は大抵がしぶとく生き残る。
各地のギルドでも統計結果が、それを証明している。
その奇行ゆえか生への執念か神の悪戯なのかは一介のギルド職員である私には知りようもない。
只、一言だけ言える事があるのならば、高ランクの冒険者は8割の変人と1割の聖人と残りの常識人で成り立っている。
そして、今日もとびっきり頭のオカシナ奴等がこのドアを開けてきた。
猫族の着ぐるみに冬でもないのにマフラーをしている女の子だ。
宗教上の理由か趣味なのかは知れないが、可愛い目立つ。
その後ろにも見慣れぬ異国の服装をした女の子が鳥のヒナのように付いてくる。
こちらも可愛い。年甲斐もなく保護欲が唆られる。
先輩冒険者共のせいで近年、女性冒険者が減少傾向にあるのだ。
ここは奴等の魔の手から私が救ってやらねばならんだろうと考えていると、さっそくアホ壱~参がチョッカイを出している。彼女らの進路を塞いで、あれは勧誘のつもりか?
やってる事はチンピラと変わらないが、誰も止める者はいない。
それは彼らが、高ランクの冒険者であるからでもある。
「ぶっ飛ばされん内に失せろ、ボケ!」と子猫ちゃん。
後ろの女の子は涙目になって震えている。
「やれるモンならやってみろよ」とニヤニヤ挑発するアホ壱。
弐と参は知らん。指笛で周囲を盛り上げてるつもりだろうか?
これは私が行った方がいいかなと思って席を立った瞬間、アホ壱が壁のオブジェと化していた。
コノゴミガ(*゜д゜) 、ペッ
「「「「「「「「え?えぇぇぇぇぇ~???」」」」」」」」
この私が攻撃の瞬間が見えなかったのだ、周りの者もザワザワしだす。
確かあのアホ壱ってCランクの・・アなんとか・・・・・・アランだっけ?
それがギルドの壁に突き刺さって、ピクピクしてる。
アホ弐と参は呆然として、後ろの壁と壱が合体しているのを確認して目の前の子猫の少女に視線を移す。
二人は腰のダガーを抜き、猫少女に構える。
「コノヤロー」とか「よくもやりやがったな」とか陳腐な台詞。
腰が引けてますよ、御二人とも。
彼らは同時に攻撃を仕掛けたはずだったが、今は床に汚く咲く花のようになっている。
静まり返る店内。
な、なんなのこの子達は!?
何事もなかったかのように猫の少女は語り出す。
「迷宮に入りたいんですけど、そのまま入っていいんですか?」
超大型新人2名様ご案内-ッ。
これは私が案内せねばと手招きする。
彼女らは十年。いやきっと百年に一人の逸材よ。
ギルドの利益のために保護しとかなきゃでしょ。
モチツケ、落ち着くのよ、私。 フンスーッ!!
やっと冒険者ギルドを出すことが出来ました。
長いよ、長すぎる。




