9 先輩と料理の腕前
旅の恥はナマステ
異世界の料理には絶望を禁じ得ない。
不味くは無いのだよ。
不味くはないが、美味しくもない。
これが味覚のギャップなのか?
料理は美味さは世界共通とかいうけどさ、現代日本の切磋琢磨してきた味への飽くなき探求心。
その進化は、留まる所を知らない。
毎日知らず知らずのうちに最高の食材を当たり前に摂取してきた私達には、異世界の料理はもはや料理と呼ぶには稚拙なものに感じられてしまうようだ。
その結果、慣れない異世界のメシを無理して食べる事になった。
既に、この宿3日も予約してしまっている事に不満はない。
だって他の宿は更にグレードが落ちるのだ。
私のナビである【タナトス】の最適解に間違いがなければだが、それはあるまい。
《イエス。マスターの味覚とリンクした結果、料理に関してぼったくり亭以上の店は97.8%有り得ません。料金、料理、治安、快適さ等の総合評価はA+となります》
後輩は自分では隠してるつもりだろうが、お腹は空いてるけど美味しくないと顔に出ている。
このオヤジも腕は悪くないのだろう。
寧ろ、この食材で良くこの味を引き出せたものだと感心する。
調味料なんかも殆ど使っていないようだし、尊敬もしよう。
だが、3日もこんな食事ではノイローゼになってしまう気がする。
だから厨房を使っても良いか聞いたのだ。
厨房は女子供の入る場所じゃねぇ!とか言われたら私も引き下がったけど、意外と話の分かるオヤジで助かったよ。
挑発がてらお前より美味いものが作れると言ったら、気前よく貸してくれた。
お礼に私の料理をコイツにも食べさせてやろうと思っている。
厨房内も道具も良く手入れされており、腕の良い料理人なんだと思われる。
「道具の使い方なんかは大丈夫か?」
「問題ないよ。道具は料理人の鏡。どれも良い道具達だと思う」
「どれも安物だ。好きに使ってくれ」
「遠慮なく使わせてもらう。材料は自前のがあるから安心しろ。そこまで店に迷惑は掛けない」
魔導コンロに水を張った鍋を置く。
初めて使用するが、使用方法は知りたいと思った時には既に覚えている。
優秀な相棒【タナトス・ナビ】のお陰で、異世界で不自由知らずである。
さて、何を作ろうか?
簡単、お手軽な・・・ナポリタンにしよう。
なんか今はナポリタンが作りたい気分だ。
鍋のお湯が沸騰してきたので、パスタを投下。
その間に、ピーマンと玉ねぎ、マッシュルーム、粗びきソーセージを切り刻む。
プチトマトを真っ二つ。
うむ、良い包丁だ。スパスパ切れる。
フライパンを熱してからバターを投下。
ふわっと鼻腔にバターの焦げた匂いがしてくると嬉しくなる。
事前に切っておいた材料を全部フライパンの中に入れる。
パスタを熱々の鍋から救い出す。
フライパンの具材たちに塩、胡椒、コンソメをパラパラとかけて馴染ませる。
パスタをポイッとしてプチトマトも序でに入れる。
トマケチャをブチューと入れたら、よく混ぜ混ぜする。
皿に盛りつけパルメザンチーズとドライパセリをパラパラで完成。
「オヤジさん、出来たから後輩の所に持って行ってやってくれ。こっちはオヤジさんの分」
「おう、俺もあっちで食べさせてもらうぜ。嬢ちゃん」
さて、お湯を沸かしてお茶でも入れるかな。
まだポイントには余裕があるからデザートも追加するか。
でも、あれは今から作っても間に合わないから裏技で出しちゃおう。
「錬成」
手の平が淡く光り出す。
食材少女☆ナポリたん
なんか、これはこれでアリかもしれんな・・・




