失踪が疾走
失踪が疾走
エピローグは基本、つまらない。なので、短めにしたいと思います。
本編への布石だから仕方ないじゃない。
だから、エピローグの事は嫌いになっても、ジャイの付く人の事は嫌いにならないで下さい。
本当は良い奴なんだよ。
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最近、テレビを賑わせているニュース。毎日報道されるそれは、失踪事件だ。一人二人なら一過性のもので直ぐに風化されたであろうが、今年の春から行方不明者は優に100名を超えている。
只の行方不明だったのなら、こんなに騒がれていなかったと思う。
不気味で奇妙だからこそ不安が、この町を覆っているのだ。何が人々を不安に陥らせているのかというのは非常に、非情に分かり易い答えがある。
防ぎようが無い。警戒しようが無いからだ。
今の今まで、そこにいた家族が忽然と姿を消す。
何の脈略も予兆もなく、一瞬 それこそ瞬きをする程の僅かな時間で人が消えるのだそうだ。そんな冗談のような出来事を口にする狂言者の戯言を警察は相手にしなかったのは言うまでもない。それこそ何を馬鹿なである。キチガイの如く電話口で声を荒立て泣きじゃくる被害者の家族「どうにかしろ」「娘、息子を探してくれ」「夫が妻が目の前で消えた」との声が多くなるに連れ、いよいよ警察もこれがイタズラではないと認識を改めて重い腰を上げるも、上げた腰で何が出来るでもなく、現場の状況を確認し捜査を続けるも収獲どころか手掛かりの一つも掴めず、マスコミを通じて被害者の公開捜査に踏み切るも有力な手掛かりは文字通り何一つ得られなかった。
完全にお手上げ状態である。
その状況は現在進行形で続いており、とある著名なコメンテーターがポロっと現代の神隠しではないかと口にした事から、この異常な失踪事件は神隠しと呼ばれているようだ。
誰が?
誰ってみんな言ってるよー 隣の家の噂好きな幼馴染とかクラスの奴らとか
それだけ?
近所のオバちゃん達も「言う事聞かない悪い子は神隠しに遠くへ連れてかれるんだからね!」とお菓子を強請る為に駄々を捏ねる我が子にナマハゲよろしく脅かす口実になっている。
・・・ネットやメディアでも頻繁に「神隠し」の単語を目にする。耳にする。
ある意味、失踪事件というのは殺人事件よりも厄介だ。この平和呆けしてる国でも、殺人の罪は比較的に軽いのだと思う。いや、決して軽い訳じゃないんだけど比較するものによってって話である。
例えば、車で人を轢いちゃいました。車はそのままスピードを落とす事なくそのまま真っ直ぐどこかへ消えていきましたとさって話に聞くと個人的に引いてしまう。ドン引きだ。
じゃあ、実際に自分がその加害者の立場になっちゃった場合、逃げずにいられるかって?
そりゃあ、勿論・・・アレだ。
大丈夫な方向だ。
いや、だからお前は助けるんだよな?
ふっ、俺を見縊んなよ。俺に不可能という文字は無い。
分かった。お前は証拠隠ぺい派だ。逃げる奴より質が悪い犯罪予備軍め!
あー・・・だが、問題はそこではない。少々、話が脱線しかけたのを反省する。
問題は被害者が生きているか死んでいるか だ。
昔の人は言いました。死人に口無し・・・尿瓶にクチナシ。クチナシの花って意外と綺麗なんだけど、死体の傍で咲くとかなんとかで人気がないみたいだ。
つまり何が言いたいかというと被害者が死んでいた方が加害者の方も都合が良いのだ。胸糞の悪い話ではあるが、被害者が生きていると何かと保障がどうたら損害賠償、慰謝料なんちゃら鬱陶しい事この上ないという話だ。
神隠しに関しては、生死不明。消えたものが被害者であるのか不明。加害者がいるのかも不明。何も分からないから当然だ。それは加害者と被害者がはっきりとした事件よりも質が悪い。何の進展も解決の目途も立たず、只ズルズルとその日を引き摺るかのようなストレスを抱える日々。
残された者達は、悲しみと不安を抱え続けながら生きていく。怒りの矛先もない世界で解決するまで、居なくなった家族を心配し続けるのだろうか?