表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【短編集】あることを、あるがままに。

年甲斐もなく、ポエムを読んでみたら、年甲斐もなく、心ときめいた。そんな3月から5月の物語。

作者: パン大好き

パン大好きです。

読んでいただき、心から感謝いたします。

写真はスマホ撮影がメインなのですが、表示サイズが大きすぎたようです。申し訳ありません。

3月17日


 道端に咲く沈丁花。

 春を運んでくれました。

 その優しい香りに、

 寒さに震えていたあの人を

 ふと思い出しました。


挿絵(By みてみん)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


3月21日


 道端の草むらに、

 アルフォートの抜け殻。

 三歩先に、

 午後の紅茶の抜け殻。


 肌寒い風が線路沿い。

 打ち捨てられた心の抜け殻に、

 身体の中心を少し外れたところがきゅっと傷んだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


3月26日


 月を従え南天に浮かぶ、

 火星、土星、そして蝎の心臓アンタレス。

 赤く瞬く三角形が早春の深き夜を彩る。

 手元には、サッポロの金の星…

 月の路をふらり、ふらりと。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


4月3日


 満開の桜花の歓声も届かない

 工場のゲートのコンクリートの隅

 名を知らぬ君に見つめられ

 胸の奥で、春がやわらかに鼓動した


挿絵(By みてみん)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


4月18日


 パンやさんで昼食。

 トレーに丸ごとフランスパン。

 「お持ち帰りですか?」

 「いえ、食べます」


 一瞬の沈黙。


 「……では、お切りいたしましょう!」

 レジ女史の親切な逆襲。

 「えっ? でっでは適当に」

 「と言われましても」

 「じゃっ、じゃあ5つに!」


 レジはいつも緊張。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


4月21日


 きょうの涙は、

 あしたの笑顔へとつながる。

 きっと……


挿絵(By みてみん)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


4月28日


 アツアツうどんの上に、

 山盛りのシラガネギ。

 「おいしいっすよ!」

 大将のご好意、てんこもり。


 ずずっ。

 峻烈な香りが広がる。

 でも刺激が強すぎるよ、大将…


 うどんの後、ラーメンが食べたくなった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


5月2日


 「このパン、小さいけど350キロカロリーもあるよ」

 「強いパンやね」

 「えっ!?」

 ……カロリー高めだと、なんだか強そうじゃないですか。

 パンはバトルだ!?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


5月2日


 ふわり夜空に浮かぶ月は、

 黄金のクロワッサンだね。


挿絵(By みてみん)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


5月9日


 濡れないように、

 寄り添う二人。

 大きい傘は、

 今日もおやすみ。

 アスファルトをしっとり進む、

 赤の一輪。


挿絵(By みてみん)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


5月15日


 輝きを増す雲。

 鮮烈な香りに足を止める。

 柔肌の季節を越え、

 艶やかな葉脈。

 指先の残り香が、

 背中を、そっと、押した。


挿絵(By みてみん)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


5月17日


 抱擁と拳骨。

 真夏の熱量を孕んだ、

 五月が降りそそぐ。


 照り返す川辺に二羽の烏。

 全ての光と思いを乗せ、

 力強く飛び立った。


挿絵(By みてみん)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


5月18日


 水槽の後は、

 お風呂の掃除。


 湯船はまるで大きな水槽。


 いつもみんなをみているよ


 6Lの水の庭、

 朱い尾鰭が揺れる。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


5月19日


 毎月後半は忙しすぎて、

 人も、季節も、

 車窓を流れすぎていく。


 手に滲んだ汗を、

 取り戻した情熱の欠片を、

 ぎゅっと握りしめる。


挿絵(By みてみん)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


5月21日


 暮れゆく、今日。

 不真面目な時を刻んでしまい、

 沈みゆく、心。

 せめて、

 寄り添う人への想いを

 取り戻そう。

 夜の闇が、迫るまでに。


挿絵(By みてみん)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


5月25日


 二度焼きがいけなかったのか、

 香り乏しく、

 パサつきも。


 ああ、今度こそは!


 心に誓い、

 力強くラーマを盛る。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


5月26日


 陽炎のホーム、

 掲示板に灯る赤い文字。

 赤いスカートの女を見守る、

 赤い車の紳士。

 二十五年前の陽炎。

 男は、空を見上げた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


5月27日


 あなたが見るのは、

 昼の顔。

 仄かな想い花開く。


 わたしに見せる、

 昼の顔。

 瞳の奥が、微かに揺れた。


挿絵(By みてみん)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


5月28日


 しとしと重い、こんな日は、

 三月の水を静かに聞こう。

 鼠色さん、さようなら。

 きらきら想い、こんなにも。


挿絵(By みてみん)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


5月30日


 五月が過ぎ去ってゆく。


 湿度増すアスファルト。

 ヒナゲシは、

 最期の祈りの姿のままに、

 土色の身体を風に揺らせる。

 その足下に、

 ワルナスビの紫が三輪、俯く。


  いったい、何が失われ、

  そして、何が生まれたのだろう。


 私の五月が過ぎ去ってゆく。

 

 パン大好き




六月以降もつぶやいております。

夏ごろにまとめたいと思っています。

感想などいただけると、嬉しいです……


貴重なお時間を割いていただき、ありがとうございます。


パン大好き



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 3月21日の詩。 道端に打ち捨てられた人の悪意を抜け殻というロマンチックな表現……ステキ! 4月18日 フランスパンを昼食……ちょっと笑いました。余計な一言なんですけど、この日、僕の誕生日…
2016/06/04 22:49 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ