年甲斐もなく、ポエムを読んでみたら、年甲斐もなく、心ときめいた。そんな3月から5月の物語。
パン大好きです。
読んでいただき、心から感謝いたします。
写真はスマホ撮影がメインなのですが、表示サイズが大きすぎたようです。申し訳ありません。
3月17日
道端に咲く沈丁花。
春を運んでくれました。
その優しい香りに、
寒さに震えていたあの人を
ふと思い出しました。
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3月21日
道端の草むらに、
アルフォートの抜け殻。
三歩先に、
午後の紅茶の抜け殻。
肌寒い風が線路沿い。
打ち捨てられた心の抜け殻に、
身体の中心を少し外れたところがきゅっと傷んだ。
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3月26日
月を従え南天に浮かぶ、
火星、土星、そして蝎の心臓アンタレス。
赤く瞬く三角形が早春の深き夜を彩る。
手元には、サッポロの金の星…
月の路をふらり、ふらりと。
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4月3日
満開の桜花の歓声も届かない
工場のゲートのコンクリートの隅
名を知らぬ君に見つめられ
胸の奥で、春がやわらかに鼓動した
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4月18日
パンやさんで昼食。
トレーに丸ごとフランスパン。
「お持ち帰りですか?」
「いえ、食べます」
一瞬の沈黙。
「……では、お切りいたしましょう!」
レジ女史の親切な逆襲。
「えっ? でっでは適当に」
「と言われましても」
「じゃっ、じゃあ5つに!」
レジはいつも緊張。
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4月21日
きょうの涙は、
あしたの笑顔へとつながる。
きっと……
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4月28日
アツアツうどんの上に、
山盛りのシラガネギ。
「おいしいっすよ!」
大将のご好意、てんこもり。
ずずっ。
峻烈な香りが広がる。
でも刺激が強すぎるよ、大将…
うどんの後、ラーメンが食べたくなった。
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5月2日
「このパン、小さいけど350キロカロリーもあるよ」
「強いパンやね」
「えっ!?」
……カロリー高めだと、なんだか強そうじゃないですか。
パンはバトルだ!?
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5月2日
ふわり夜空に浮かぶ月は、
黄金のクロワッサンだね。
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5月9日
濡れないように、
寄り添う二人。
大きい傘は、
今日もおやすみ。
アスファルトをしっとり進む、
赤の一輪。
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5月15日
輝きを増す雲。
鮮烈な香りに足を止める。
柔肌の季節を越え、
艶やかな葉脈。
指先の残り香が、
背中を、そっと、押した。
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5月17日
抱擁と拳骨。
真夏の熱量を孕んだ、
五月が降りそそぐ。
照り返す川辺に二羽の烏。
全ての光と思いを乗せ、
力強く飛び立った。
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5月18日
水槽の後は、
お風呂の掃除。
湯船はまるで大きな水槽。
いつもみんなをみているよ
6Lの水の庭、
朱い尾鰭が揺れる。
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5月19日
毎月後半は忙しすぎて、
人も、季節も、
車窓を流れすぎていく。
手に滲んだ汗を、
取り戻した情熱の欠片を、
ぎゅっと握りしめる。
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5月21日
暮れゆく、今日。
不真面目な時を刻んでしまい、
沈みゆく、心。
せめて、
寄り添う人への想いを
取り戻そう。
夜の闇が、迫るまでに。
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5月25日
二度焼きがいけなかったのか、
香り乏しく、
パサつきも。
ああ、今度こそは!
心に誓い、
力強くラーマを盛る。
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5月26日
陽炎のホーム、
掲示板に灯る赤い文字。
赤いスカートの女を見守る、
赤い車の紳士。
二十五年前の陽炎。
男は、空を見上げた。
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5月27日
あなたが見るのは、
昼の顔。
仄かな想い花開く。
わたしに見せる、
昼の顔。
瞳の奥が、微かに揺れた。
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5月28日
しとしと重い、こんな日は、
三月の水を静かに聞こう。
鼠色さん、さようなら。
きらきら想い、こんなにも。
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5月30日
五月が過ぎ去ってゆく。
湿度増すアスファルト。
ヒナゲシは、
最期の祈りの姿のままに、
土色の身体を風に揺らせる。
その足下に、
ワルナスビの紫が三輪、俯く。
いったい、何が失われ、
そして、何が生まれたのだろう。
私の五月が過ぎ去ってゆく。
パン大好き
六月以降もつぶやいております。
夏ごろにまとめたいと思っています。
感想などいただけると、嬉しいです……
貴重なお時間を割いていただき、ありがとうございます。
パン大好き