邂逅
闇に染まり、街灯の明かりすら届かない路地裏。弥嗣は黒ずくめの格好でそれを見下ろしていた。微かに照らす月明かりで見えたそれは苦痛な表情を浮かべた、血に染まる男の死体。
弥嗣の持つ刀を伝い、落ちるのは深紅の血。
弥嗣によって死に導かれた男は連続放火魔。放火をしようとしていたところに弥嗣が現れ、その手で葬ったのだ。
弥嗣は刀を振るい、その血を落とすと鞘にしまう。そして、もう一度男の死体を一瞥し、背を向けて歩き出した。
路地裏を抜け、大通りに出た弥嗣の耳に慣れ親しんだ声が届く。
「――――弥嗣」
裏の顔を脱ぎ捨て、振り返った先にいたのは義哉と一条美琴。一ヶ月前に見たコンビだ。
「また会うなんて、奇遇だな。また、食べ物がなくなったのか?」
「あぁ、買っておくのを忘れたんだ」
何でもないように振る舞う弥嗣。それは先程まで殺しをしていたとは思えないほど、普段と変わらないものだった。
「そうなんだ」
義哉が納得した様子を見せた所で、美琴が口を開く。
「久し振りだな。五月雨弥嗣くん」
「えぇ、そうですね。一ヶ月ほど前ですか」
他愛ない言葉を返す。
美琴はそこで、弥嗣の出てきた路地裏の道に視線を移した。
「ところで、どうして路地裏から出てきたんだ?何か、用事でもあったのか」
どうやら、勘が鋭いようで不審点を示唆する。
「まぁ、所用があったので。それでは、そろそろ失礼させていただきます」
ありきたりな嘘を述べ、弥嗣は二人と別れた。




