007
○同・対局場・夕
決勝戦第七局。
成香「宜しくお願いします」
挨拶と共に、先手LANCEの7六歩で対局が始まる。
後手SYG将棋、8四歩。
× × ×
後手SYG将棋、7七角成。
先手LANCE、7七同じく銀。
後手SYG将棋、2二銀。
先手LANCE、7八金。
○同・大盤解説場・夕
雨彦「先手7八金ですね」
雨彦、駒を動かす。
綾乃「これは、角換わり腰掛け銀ですかね」
雨彦「近いようで、少し違う形ではありますね」
綾乃「ここで、後手3三銀ですね。昨日の相矢倉とは違った、面白い局面になって来ましたね」
雨彦「そうですね。ここからどう攻めていくんでしょうかね、楽しみですね」
○同・対局場・夕
四人は、パソコンのモニターを見守る。
彰「際どそうだな」
敏行「形勢評価グラフも微妙だな」
一与「それだけ良い対局ってことね」
成香「はい、展開次第ではまだまだ分かりません」
× × ×
手は進み、終盤へと入る。
後手SYG将棋、1八飛車。
先手LANCE、3二と金。
後手SYG将棋、3二同じく玉。
先手LANCE、5二銀。
成香は、5二銀に思わず目を大きく見開いた。
○同・大盤解説場・夕
観客「うおおおおおおおおおおおおおおおお」
一気に湧き上がる大盤解説会場。
この妙手に思わず、雨彦と綾乃も声を漏らす。
○同・対局場・夕
彰「うおっ、なんだ?」
敏行「どうした」
対局場に居た者たち全員が、別室のその
歓声に思わず身を震わせる。
一与「最善の一手だわ」
○同・大盤解説場・夕
雨彦「これは、コンピューターとは思えない凄い手を指してきましたね。こんな手、私では気付きもしませんでした」
綾乃「私もです」
雨彦、綾乃共に驚きを隠せない。
綾乃「ここで、後手4二玉。銀に付けてきましたね。ここは、銀を成って金を取りにいくんですかね」
雨彦「先手6一銀成らずですね。いや、しかしこれはもう詰みますね。あの5二銀が誰の目に見ても素晴らし過ぎて、解説の必要すら無いですね」
綾乃「そうですね。私、まだ鳥肌立ってますからね」
笑いながら話す雨彦と綾乃。
○同・対局場・夕
先手LANCE、3二金。
詰みで勝利とモニターに表示される。
成香「……やった」
小さな声で呟く。
彰「……やった」
敏行「……やった」
一与「……やったわ」
成香に続く様にして、呟く様に言う。
そして、爆発するかの様に喜ぶ。
一同「やったああああああああああ!」
思わず、涙を溢す四人。
会場からは、激闘を讃える温かい拍手が鳴り止まない。