006
○同・大盤解説場・夕
佐藤雨彦(26)七段と野田沢綾乃(29)女流一級による、大盤解説が行われている。
雨彦「これは――」
雨彦、驚く。
綾乃「面白い局面ですね」
雨彦「LANCEは、美濃囲いから矢倉に組み換えました。ここの6三の駒が金になっている矢倉を金矢倉と言います。これに対して、SYG将棋は、6七銀と引きつけた銀矢倉の相矢倉ですね」
綾乃「しかも、飛車が向かい合った対抗形で互いに矢倉を組むことは、プロの対局でもなかなか見られないですね」
雨彦「相矢倉では、縦の攻め合いがよく見られるんですが、この対局ではどのようになるのか、その辺りに注目して見ていきましょう」
○同・対局場・夕
対局は終盤を迎える。
成香「ちょっと、まずいですね」
彰 「形勢評価グラフは、優勢だろ」
敏行「いや、持ち時間の方だ」
彰は、持ち時間に目をやる。
× × ×
対局終了。
LANCEは、持ち時間切れでの負けを喫する。
成香「ありがとうございました」
少々、落胆する一同。
一与「残念だったけど、課題も見えたわね」
成香の肩をぽんと叩く、一与。
一つ頷き、笑みを見せる成香。
成香「はい、帰って直ぐに修正しましょう」
× × ×
結果発表。
プロジェクターで、二次予選の結果が映し出される。
二次予選一位通過SYG将棋に次いで、
二位にLANCEの文字。
その文字を見つめ、気を引き締め直す四人。
○ コンピューター将棋選手権会場・全景・朝
雨はあがり、快晴となっていた。
○同・対局場・朝
決勝戦。
成香たちは、順調に勝ち進む。
勝ちを重ねるごとに、顔を見合わせ、小さく頷く。
優勝が夢では無く、現実にすることを互いに意識する。
× × ×
第六局終了時点で六戦六勝。
最終局の相手は、奇しくも昨日負けを喫したSYG将棋。
勝ったら優勝の状況に会場は、拍手で大盛り上がり。
○同・大盤解説場・夕
大盤解説場も同様に、歓声を上げ、盛り上がりを見せる。
雨彦「まさか、昨日の最終局と同じ組み合わせになるとは、予想しませんでしたね」
綾乃「そうですね。昨日の対局は、LANCEが優勢に進めたにも拘らず、持ち時間切れでの負けだったので、悔しかったでしょうね」
雨彦「そうですね、昨日は面白い局面だっただけに、残念でした。両者の立ち上がりに注目していきたいと思います」




