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一与「二十五分の持ち時間ね」
成香「そうです。コンピューター選手権大会では、累積消費時間が二十五分を超えてしまうと、詰みの状態でも負けになってしまいます」
敏行「つまり、検索から指すまでの実効速度を速くするロジックやアルゴリズムを実装する必要があるってことか」
一与「なるほど。だったら、ここから先は私達の本来の専門分野ね」
彰 「そうだな、並列処理ならお手の物だな」
敏行「将棋じゃ勝てなくとも、パソコンじゃ加藤に負けられないからな」
三人は、笑みを溢す。
その様子に、思わず成香も笑みを溢す。
○大学院・全景・朝
雪は解け、桜の木に咲いていた花が散り始める。
付近では、陽気な温かさの中、子供連れの親が一緒に散歩している。
○大学院・研究室・朝
成香のパソコン机の前に一同集まる。
成香は、黙々とコンピューター将棋の最終チェックを進める。
そして、手を止め、背もたれにもたれ掛り、目を瞑り天を仰ぐ。
成香「出来たああああ!」
大きく両腕を伸ばしながら、大きな声で言う。
喜びを分かち合う四人。
○大学院・研究室前廊下・朝
研究室の廊下から、窓越しにその様子を温かく見守る武志。
小さく笑みを溢し、その場を離れて行く。
○大学院・研究室・朝
彰 「長かったようで、あっと言う間だったな」
敏行「確かに」
一与「でも、まだまだこれからよ。ここはあくまでスタート地点なんだから」
成香「そうですよ、皆さん。コンピューター将棋選手権で優勝して、プロへの挑戦権を獲得するんですから。この、LANCEで」
成香は、ガッツポーズをする。