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ヌコの勇者とギルドオペレーション!!  作者: 笹草 熊猫
1章 ブレーメンの精霊使いと動物恐怖症の青年
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4話「幸運を運ぶ白いヌコ」

「水上に君臨せし絢爛豪華な宮殿の暴君よ。ヴェルデの名において命ずる! 出でよ、ヴォルター!」


 ヴォルターが現れると、川で泳いでいる魚を討ち取る様に水鉄砲で打ち上げた。


「おぉっ! ヴェルはん凄いでやんすな!? 只のヌコじゃないとは思ってやしたが、まさかここまでとわ……」

「まぁ、魚くらいなら朝飯前だわ」


 ヴォルターは役目を終えると、黙ってそそくさと消えて行った。

 相変わらず愛想の無い奴である……。


「長年ヌコをやってきやしたが、ヴェルはん程凄い、オヌコは見た事がありやせん! 是非、私めを家来にして欲しいでやんす!」

「大げさね……別に魚くらいなら何時でも取って来てあげるわよ」

「本当でやんすか!? わっち、ヴェルはんに一生付いて行きやす!」


 何故か妙に気に入られちゃったけど、ポロンの情報網は使えそうだし結果オーライかしら?

 私達は打ち上げた魚を平らげると、早速人形のシェリーを探す為に街中のヌコやカラスから情報を聞いて回ったわ。


「あぁ、それなら見たよん。落とした人形を持っていった奴もね」


 手掛かりを持っている二毛ヌコに接触すると、早速情報を聞き出す事にしたわ。


「持って行った奴が居るでやんす?」

「うん。でもあの人形は諦めた方が良いと思うよ? 何せ持って行ったのが最近ここいらで顔を聞かせているボスのベアウフフの野郎なんですから」

「ベアウフフ? 随分、可愛らしい名前なのね」

「ちょ! そんな事言っちゃ駄目ですよ! もし奴等にでも聞かれたりしたら……」


 二毛ヌコは慌てふためいて周囲をきょろきょろと確認した。


「で、ベアウフフって誰なの?」

「へい、それはあっしから説明致しやしょう。ベアウフフとはこの街で犬達を仕切っている犬のボスでありやす。見た目の獰猛さとは裏腹に奴は可愛い物好きでして……」

「なるほどね、そのベアウフフに話を付けてくれば良いのね?」

「ちょっと、あんた見ない顔だけど止めておいた方が良いよ! 殺されちゃうよ!?」

「大丈夫でやんす。情報屋のポロンが保証するでやんす」

「それじゃ、行きましょう。情報ありがとね」


 そして私達はベアウフフが居ると言う縄張りに行く事にしたわ。


「ポロンさん達、大丈夫なのだろうか……」


 二毛ヌコの心配を余所に私達は縄張りの入口に辿り着くと、門番らしきシベリアンハスキーが立ち塞がって問い質した。


「ヌコが何用だ? ここはベアウフフ様の縄張りであるぞ!」


 さすが、門番だけあって強そうな犬公だわ。出来れば穏便に済ませたい所ね。


「私はヴェル。ベアウフフの愛人なのだけれど、聞いてないのかしら?」

「なにっ?!」

「え? ヴェルはん、そうやったんでやんすか!?」

「うっさい! あんたは黙ってなさい!」

「誇り高きベアウフフ様がヌコなどを愛人に……? これが奥様に知れれば大変な事に……!」

「私は出来るだけ穏便に済ませたいの。賢明な貴方なら分かるでしょ?」

「うむむ……分かった。こちらに来たまえ」


 シベリアンハスキーはそう言うと、私達をベアウフフの所まで案内した。


「さすがでやんすね、ヴェルはん。まさか、こうも簡単に潜り込めるとは」


 前世で室内飼いだった私は、よく男の子の母親が見ていた泥沼な昼ドラを一緒に見ていた。

 妻の居る男は浮気事の話には弱い。私に掛かれば弱みを握るなんて訳無いのよ!


「む、そちらのヌコ共は何だ?」


 ベアウフフと呼ばれる犬は壇の上に座っていた。

 しかしベアウフフは……あれだ、確か土佐犬と呼ばれる種類の犬だ。名前に似合わずとても顔が怖かった。


「はっ! こちらはベアウフフ様の愛人と名乗る者です!」

「馬鹿な!? 我が浮気をしていると申すのか!?」

「あら? 忘れたとは言わせないわよ? この腐れ外道め!」

「腐れ外道!? ベアウフフ様に向かって何という無礼な!」

「ほう、何用か知らぬが、如何やら殺されたいらしいな? ならば望み通り殺してやろう!」


 ベアウフフは壇から飛び降りると、鋭い牙をむき出しにして唸った。


「あら、ちょっと怒らせすぎちゃったかしら? まぁこうなったら仕方がないわね……」

「何をゴチャゴチャと言っている! しねぇぇえい!」


 怖い顔を更に増長させたベアウフフは私に向かって飛び込んできた。


「怒りに狂いし大樹の根を貪る蛇蝎だかつよ。ヴェルデの名において命ずる! 出でよ、ニッグヘイラ!」

「なに!?」


 私の詠唱に応じて現れたのは、尻尾にリボンを付けた可愛らしいヘビであった。

 相変わらず詠唱文が実態よりも誇張し過ぎている気がするが、これも翠緑の竜が考えたのだろうか?


「あらら~? ヘイラを呼び出すなんて、あんた分かってるじゃないの~? というか浮気する男なんてヘイラ、許せないっていうか?」


 かつてこんなギャルみたいな口調で話す精霊が居ただろうか? 

 何でこうも私の精霊は個性の強いのが多いんだろうか……。


「……ニッグヘイラ、動きを止めるだけで良いわ」

「縛るのね? あんたもなかなか良い趣味してんじゃないのよ~」

 

 ニッグヘイラは地面から大木を出現させると、ベアウフフとシベリアンハスキーを木の縄で拘束した。


「お、お前は只のヌコじゃないな!? 悪魔憑きか!」

「……私は只のヌコよ。それ以上でもそれ以下でもないわ。それよりも、あんたの戦利品に用事があるわけよ?」

「戦利品だと……?」

「あんた今日、人形を持って帰ったでしょ?」

「何故、それを知っている!? 部下達にも内緒にしている事なのだぞ!」

「ベアウフフ様……実は私も知っていました……」

「なにっ!?」

「というか、みんなで知ってるでやんすよ」

「えぇ!? そうなの!?」

「……で、それが必要なのよ。大人しく返してくれれば、このまま私も帰るわ」

「くっ……人形に背は代えられぬか……」

「どんだけ、人形大事にしてんのよ」


 こうして人形を手に入れた私達は、人形を咥えたままギルドホームに戻る事にした。


「ニャー」

「おや? 先程の白いヌコではないか。何を咥えておるのじゃ……?」


 ギルドホームで店番をしていたゼノンは私を見つけると、口に咥えている人形に視線が行った。

 私はそれを確認すると人形を床に落としてギルドホームを出て行った。


「この人形は……?」


 ゼノンがその人形を持ち上げると、胸の名札の所にシェリーと書かれていた。


「まさかあのヌコが……?」


 ライオットは1日かけて街中を探し回っていた。


「はぁ……やっぱ見つからないよなぁ……」


 日が暮れてしまい、探すのが困難になったライオットは仕方がなくギルドホームへと帰える事にした。


「ただいま……」

「お、ライオット帰ったか」

「……結局人形は見つからなかったよ」


 ライオットは落胆してギシギシと鳴る椅子に腰を下ろした。


「あぁ、その事なのじゃがな……」


 ゼノンは昼間の事情を話すとライオットは驚いて立ち上がった。


「えぇっ!? あのヌコが?」

「わしも最初は驚いたものじゃよ、もしかしたらあのヌコは人語を理解できるのやもしれぬ」

「馬鹿な……。もしそんな事が出来るとしたら悪魔憑き――」

「いや、あのヌコから邪悪な気配は感じなかったのう。それに何かに加護されている様な力を感じた……。何かは分からぬがのう」

(ゼノンがそう言うのなら、そうなのかもしれないけど……一体何の為にそんな事をしたんだろうか?)


 ライオットは白いヌコの行動に疑問を感じていた。

 しかし、次の日もその次の日も、白いヌコは依頼人を引っ張ってきては一緒に依頼を解決する為に動いてくれた。

 街中でも白いヌコが迅速に依頼を解決してくれると噂になり、何時しか白いヌコはペルペトゥオの看板ヌコとなってそれを目当てにやってくる依頼人も増えた。


「何だか急に忙しくなってきたね」

「これもあの白いヌコのお陰じゃな。もしかしたらあの白いヌコは幸運を運んでくるヌコなのかもしれないのう」

「幸運を運ぶ白いヌコか……」


 動物恐怖症のライオットも白いヌコの行動には目を見張る者があった。

 舞い込んでくる依頼の内容は大した事無かったが、この調子で行けばこのギルドを建て直せるかもしれない。


「これは一体どうなっておるんだ……?」


 商人ギルドのスモロフはペルペトゥオの盛況っぷりに目を疑っていた。


「スモロフ様、実は……」


 スモロフの部下で情報を収集している諜報員はスモロフに耳打ちをした。 

「なに? それは真か? なかなか興味深い話しだな……」


 スモロフは邪悪な笑みを浮かべるとその場を去って行った。

 そしてこれを機にヴェルとライオットの運命は劇的に加速して行く事になる。

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