ひとくち綴 ×6
『笑って』
おサル。
歩くおサル。
逆立ちするおサル。あ、落ちた。
肩をやっちゃったらしいおサル。
八重歯のおサル。
もうダメ。おなかいたい。
あーあ。なみだ、どっかいっちゃったよ。
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『体温』
「おなかすいた」
キミはいう。
「ブーブー」
レシピはチェックずみ。材料も買ってある。あとはつくるだけ。でもできない。
「おなかすいたってばぁ」
背中にもたれてくるキミが惜しくて。
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『おさんぽへいきましょう』
あ。よーし、のびー。ん。じゅんびかんりょう。ねぇねぇママさん。きょうはかわらまでいってみようよ。タンポポのにおいがここまでするから、きっとすごくキレイだとおもうんだ。それでねそれでね。
「タロー」
「わんっ」
「あとでね」
ちぇーっ。
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『祈願』
「どうよ」
「あった」
「すげぇじゃん」
「ちょっ、髪、くしゃくしゃ、なる、から」
「やったな。おめでとう。後輩」
「うん。ありがと。先輩」
だいちゃんとおなじ高校。すっごくがんばった。だからうれしい。だけどわたしね。やっぱり。
「なんか食うか。おごってやる」
だいちゃんといっしょに通いたかった、よ。
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『おさんぽへいきましょう そのに』
ママさん。ママさん。たのしいね。キモチいいね。そらがおっきいね。あ、おまえは、えーと、カマキリ! またきたな、しょうぶだ! あれ、ちょうちょだっ! まって、ズルいぞ、そんなたかくに。くんくん。これなんのにおいだろ。
「タロー」
ママさん。ママさん。
「かえるよ」
うん。あしたもこようね。
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『大本命』
滑稽。ぷらす、なんだか哀れ。
七味唐辛子をぎゅっとにぎりこんでスヤスねむりこむ、わがカノジョさま。
さっきまでは俺のゆびがつかまっていた。しびれてきたから手近にあったそれを身代わりとした。ちなみに夕飯はうどんだった。旨かった。
「むにゃむにゃあ」
ムカムカ。
いつにもましてしまりのない顔に?
うどんにあたった? まさか。
七味よ。おまえの役目はここまでだ。
俺の手にほほがすりよってくる。
「だいしゅきぃ」
そうだろうそうだろう。
「おうどぉん」
そっちかい。




