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染まりゆく染まりゆく



 寝顔は幼い。あれってホントだ。規則的な振動に前髪をゆられながら、うつらうつらしてる彼がその証拠。

 お土産物屋さんであれもこれもって見たり食べたりしてるときは元気だったけど、ギリギリセーフで電車に乗って席に座ったとたん欠伸が出だした。

 あ、あ、首カクンってなりそうっ。ひざに抱えたおまんじゅうの箱に当たるよ。んー、箱の入った袋ごと動かしたら起きるだろうし、あっ、おち……ちゃった。額に痕つくかもなぁ。

 一日はしゃいだから疲れたよね。昨日、残業だったって言ってたのにね。

 流れてゆく山のむこうの夕日。つい最近まで暑かったような気がするけど、今は西日の暖かさがちょうどいい。

『歩きやすいカッコウとクツ、上着も用意して』

 いつになく、ちょっとうわずった声でかかった彼からの電話。

『紅葉狩り行こう』

 ガタンゴトン。電車にゆられ。歴史ある神社にまずはお詣り。近くで念入りに毛づくろいしあうネコ家族にもご挨拶。

 敷地をぐるりとまわれる遊歩道にはもみじやイチョウ。赤。黄。橙。いく通りもの組み合わせでまざりあう色たち。にぎやかな装いは見ていてたのしく。踏みしめるたびに鳴るのも耳に心地いい。

 寒いほど、色に鮮やかさが増すんだって。

 そう話してくれる彼の横顔がいつもより近い。なんだかはずかしくてうつむいたら、背中から彼のコートにすっぽり包まれた。

 あったかい、けど。ドキドキしすぎて心臓が痛いです。そう抗議したいのに口からは情けない息しかこぼれてくれない。

 わたしも。

 寒さを理由に赤くなる。

 頬と頬がふれて。彼が笑うのが肌ごしにわかった。

 ……ううう。

 彼が寝てくれてて良かった。顔赤くしてどうした、って聞かれてもぜったい答えらんない。

 赤面モノの思考ごとムリやり窓の向こうへ切り替える。

 ちょうど電車は川を渡ろうとしていた。川面に夕日がきらきら。きれい。すうすう眠る彼を起こそうか悩むくらい、とってもきれい。

 また、来ようね。

 欠伸と眠気は伝染する。あれもホントだ。うん。今のわたしがいい証拠。ちょっとだけ。だいじょうぶちょっとだけ。だってほら。降りそこねないようにしなき……ゃね。



 

 

 


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