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首ったけ



 指が結び目にかかる。一日を共に戦いきった相棒がやわらかい手によってあっさりとほどかれていく。

 のど元は人の急所。触れることを許した相手への信頼と、弱点をさらしたことによって命取りになりかねない危機。ああ、もう取られてたっけな。

 自分は彼女に弱いところを握られている。こんなふうに、もう、ずっと。

 ゆるめられて楽になるはずが時折かすめる冷たさのせいでくすぐったい。帰りを迎えられ労られてネクタイをはずしてもらっているこのシチュエーションは。盛大に、くすぐったい。彼女から寄せられる好意もふくめて。

「忙しかった?」

「だいぶ落ち着いた」

「なら、嫌なことでもあった?」

 あ?

「コワイ顔してる」

 そう言って見上げてくる目に吹き出してしまいそうになる。逆だよ。でもわざと眉間を寄せてみせれば彼女は笑いだした。

 シュっとネクタイが抜かれる。くすくすと楽しそうなご様子に、なあんとなくまざりたいと思ってみたり。

 腕を伸ばしてみようか。なにも難しくない。あなたがこんな近くでおとなしくしている好機を逃す理由はどこにもない。

 シャツのボタンと格闘中の彼女の目を盗んで。ぱちんと髪どめを外したら、香りも一緒にほどけた。

 今度は彼女の眉間が寄った。

「なに考えてんの」

 まとめにくい髪質だとかに加えて量も多くて大変だってグチってたような。どおりで、にらみに凄味が増してるわけだ。 ――と、襟をひっぱられて、ぐっと顔が近づいた。お。好都合。

「なに考えてんのって聞いてんの」

 なんか。迫力も増してますけど。てかさ。考えてることぜんぶ口にしたらひく。確実にひかれる。

 あなたのことばかり。

 そう耳元でささやいたら――首ねっこ、ひっつかまれそう。




 

 

 

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