蜜
「オモイんすけど」
「ひどいんですけど」
「どっちが」
「そっちが」
「マジつぶれる」
「つぶれてしまえ」
「ひっでぇ」
「女子に重いなんて言うほうがひどいですぅ」
「女子なんかいたっけ? ……うげっ。さっきの焼きそば出てくんだろうがっ」
「やだサイアクあっち行って」
「泣くぞ。男のマジ泣き見せるぞこら」
「ねぇそれ面白い?」
「完スルーかっ。ああ、そろそろ犯人わかるとこ」
「さっきからページ進んでないみたいだけど?」
「髪ジャマ。ふわふわさせすぎ、口に入る」
「あ。ごまかした」
「ごまかしてません」
「なぁんで読めないのぉ?」
「言わせたがるよね、女子って」
「聞きたいんだよね、女子は」
「めんどくさ」
「あ!」
「揺らすなっ。酔う、酔う」
「ホンネが出たぁ」
「かわいいカノジョに抱きつかれたらそっちばっか気になんの」
「お」
「これでどうだ」
「かわいいのとこ、好きなとか愛しのくらい言っとこうよ。ざんねんだわぁ」
「ざんねんゆーな。なに様なのキミ」
「カノジョ様。 ……ちょっとそんな笑う?」
「オモイんすけど」
「うん。思いはね、重いのですよ。思いしりなさい」
「くだんねぇ。 ……おーい? あの、ここで笑ってくんないと俺ひどいヤツじゃん……またスルーか」
「ねぇ」
「んー」
「ふたり分のドクドク」
「んー」
「オモイ?」
「ちょうどいいよ。俺の胸には、ちょうどいい」
了