結ぶ
足が止まる。
後ろから来た人と肩がぶつかった。いそいで謝ったけど、声は行き交う人の多さにかき消された。邪魔にならないように柱の陰を背にしたら、息がこぼれた。
改札へ吸い込まていく人の波。いろんな格好いろんな顔。こんなにたくさん人はいるけど、会いたいと願うのはたったひとり。
さっき別れたばかりなのに。もう顔が見たくてたまらない。
困らせたくないって思いながら、おんなじ心でわがままなことを思ってしまう。考えれば考えるほど言葉はどんどん遠くへ行く。
バックから包みを取り出す。包装紙をていねいに外してからそれを両手で包んだ。
花柄のシュシュ。
そばにあった鏡を見ながら今つけてるものと取り替えた。 ――花が咲いたみたい。
手に取って見ていたらぱっと持っていかれて。返ってきたときには綺麗にラッピングされてた。
「やっぱ送る」
振り返ったら息をきらした彼が立っていた。プレゼントをくれたときみたいに、照れくさそうに、ぶっきらぼうに。
なにを言ったらいいかわからない。代わりにうなずいた。
嬉しい。
まだ一緒にいたい。
シュシュ、ありがとう。
帰り遅くなるよ、大丈夫?
今日すっごく楽しかった。
水族館また行こうね。
いつもありがとう。
ありがとう。
勇気を出して手を伸ばす。たどり着いたのは彼のシャツの裾だけど、離れないようにぎりしめた。なんどもうなずきながら。
――大好きです。
了




