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ありがと



 飲みかけのカップを持ち上げたとき、メール受信の知らせが届いた。

 ――えきてた

 送られた四文字に笑いがこみ上げて、カフェオレがなかなか飲めない。

 えきてた……駅出た、と伝えたかったのだろう。焦りながら操作してる姿が思い浮かぶ。声まで出そうになってごまかすフリで口をつけた。

 もうすぐランチタイムを迎えるカフェは半分以上はうまっているだろうか。店員さんの張りのある小気味いい声が、今日の陽気に良く合ってる。

 開花宣言を後押しするような日差しを、彼はどんな気持ちで見上げているかな。遅れてること、あまり気にやんでなければいいけど。

 あ。隣のひとと目が合った。だらしなくニヤついてたからだ、きっと。自重、自重。

 もうすぐ会える。そう思うだけで胸があったかくなることを、わたしは彼から教わった。

 思いついた、返信の言葉。四文字を打ちこんで……送信。気づかないだろうな。今日一日、どのタイミングで気づくか楽しみにしよう。

 人ごみのなかに見慣れた姿が映る。こわいくらい必死そうなのは、あなたも今日を待ちわびてくれていたからだと思っていいですか。

 あの様子はメールどころじゃなさそう。

 読んでも内容の意味がわからない彼はきっとこう聞く。なにが? って。でもナイショ。

 こちらを捉らえた彼は歩を緩め、申し訳なさそうに苦笑いしながら近づいてくる。だから、迎えるわたしはめいっぱいの笑顔を。


 あなたを待っている間、またひとつあなたを好きになる。





 

 

 


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