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おはよう    *



 滑るようにホームへ電車が入りこむ。停車して扉が開くと、解放を待ち詫びていた人々がどっと流れ出てくる。

 暴れん坊の梅雨を追い出した太陽は今日も朝早くから元気で。効き過ぎたクーラーの次は容赦のない日差しが襲い掛かる。

 目的地である学校へ着く前にヘトヘトになりそうだけど、へばってなんかいられない。

 ツンツン立たせた短めの髪。右肩には学校指定のバック。左手はポッケのなか。首の後ろを揉むのは右手。

 見慣れた背中。いつもの仕草。

 ぶつからないように人波を避けながら、手櫛で後ろ髪のハネをチェック。出来ればこのまま後ろを歩いて背中を見続けていたいけど、最近、やっとかけられるようになったから。

 ハンカチで額の汗を押さえてから、深呼吸――。


「おはようっ」


「おはよう」


 追い抜きざま、彼に朝の挨拶。

 返してくれる柔らかな声と、チラっと寄せてくれる目が振り絞った勇気へのご褒美。

 おさまりそうにない胸の音に囃し立てられながら、改札口をくぐった。


 大好きなあの人に。

 それだけで特別な言葉。







*****



  おはよう  (お直し版)


 

 ホームへ電車がすべりこむ。停車して扉がひらくと、解放をまちわびていた人びとがどっとながれ出ていく。

 あばれんぼうの梅雨を追い出した太陽は今日も朝はやくから元気で。ききすぎたクーラーのつぎはようしゃない日ざしがおそいかかってくる。

 目的地の学校へつくまえにヘトヘトになりそうだけど、へばってなんかいられない。

 たくさんのなかでも。ほら、見つけてしまう。

 ツンツン立たせた短めの髪。右肩には学校指定のバッグ。左手はポッケのなか。首のうしろをもむのは右手。

 見なれた姿。いつものしぐさ。

 ぶつからないように人なみをよけながら手グシでうしろ髪のハネをチェック。できればこのまま背中を見ていたいけど。最近、やっとかけられるようになったから。

 ハンカチでひたいの汗をおさえて。深呼吸──。

「おはようっ」

「おはよう」

 う、わ。

 追いぬきざま、彼に朝のあいさつ。

 返してくれるやわらかな声と。

 チラっとよせてくれる目が。

 ふりしぼった勇気へのごほうび。

 め、め、あった。あっちゃった。

 おさまりそうにない胸の音にはやし立てられながら改札口をくぐった。



 大好きなあの人に。


 それだけでトクベツな言葉。







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